千葉望「ワダエミ 世界で仕事をするということ」新潮社
黒澤明監督「乱」の衣装デザインでアカデミー賞に輝き、北京オリンピックでは開会式パフォーマンスの衣装デザインを中国の若手演出監督、陸川監督の情熱的なオファーで引き受け、中国のアーチスト達の尊敬を集めた。京都の実業家の家に生まれ、気鋭の演出家和田勉と結婚し、自分の哲学を貫き通してきた。ワダエミの哲学とは「自分の言葉で、自分の意見を語ること」「組織に頼らず、一人で立ち向かうこと」「一度信頼した人は徹底的に信頼する」「会社組織を作らず、自分の自由を保つこと」「信頼できる人と、信頼される仕事をすること」だ。こんなに崇高で、困難なことはない。しかし、その哲学を見事なまでに実践している。正直圧倒された。日本では今ひとつ知られていない感じがするが、氏の仕事は世界が舞台だ。ワダは算盤勘定では動かない。真の情熱だけが判断材料なのだそうだ。ワダを感動させるようなオファーは日本でなく、韓国や中国の若手から来ている。それだけ日本の演出監督は世界という舞台にまだまだ疎いという現状があるらしい。母と同い年のクールな女性の存在をまた新しく知った。こういう方を知らずにいたことはある意味新鮮な驚きだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?