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志村洋子「色という奇跡 母・ふくみから受け継いだもの」新潮社

筆者の母、ふくみは「藍建て」の匠、重要無形文化財保持者志村ふくみである。30歳で母親の世界に入った染色作家。色に対する見方が違う。

「藍色の深い精神性と知性・・宇宙の摂理が言葉と同じように色彩で語られるのを待っている」

「濃紺から薄い水色までの濃淡を微妙な移り変わりで揃えると、神聖な世界が藍の色だけで立ち上がってくる。色彩のグラデーションによる聖別(境界)は他の色ではありえなく、藍にだけおこる奇跡のようだ」

こんな色の表現は自分にはできない。色彩は気にはなるが、学んでみたい気持ちはある。今回新しい発見があった。

「自然の代表色は緑であるにもかかわらず、緑色は普通、植物から出てこない。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の虹の7色中、緑だけが出てこない。緑は基本的に混合色である」

なんと、緑は植物から出てこないというのが常識・・そして、筆者が驚きをもって見つけた自然の緑が「中東のオリーブ」だったらしい。

「戦火に苦しむ中東にほど近い土地で育ったオリーブは、緑という「平和の色」と呼ぶのにふさわしい色をしていた」

染色を生業とする人の色に対する眼は深く鋭い。改めて色というものを認識させられた。 

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