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詩「再放送」


テレビに向けて
リモコンのスイッチを押すと
ふいに
ドラマの再放送
タイムマシンなんかなくても
いきなり
あの頃の自分にタイムスリップ
心は宙に浮いたまま

再放送を観る度に
何度も
甘酸っぱくて
あの形容しがたい感情が
バイオリズムの様に
上がったり
下がったりした

テレビの画面から
青春の香りがする
セーラー服のスカーフの三角の部分を
最後まで出せなかった
口を横に結ぶのが癖だった
ドラマの主人公と同じ様に
大袈裟に泣いたり
悩んだりした
カラーが弾けた日々
あの台詞も
聴き慣れた主題歌も
タイムカプセルを掘り起こした時の様に
胸がワクワクした
ついでに
封印したい過去はパンドラの箱に詰め込んで
記憶の奥底に再び沈めた
自分勝手なカタルシス

せわしない過去の産物の幻影も
一度ひとたび、再放送が終わると
静かなる現実の日々へと
帰って行った

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