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詩「りんご飴」


お祭りの縁日で
遠くに ぼんやりとあなたの姿を見つけた時
わたしは とっさに浴衣姿の母の後ろに隠れました
お風呂上がりの石鹸の香りが鼻をくすぐる

遠くで花火が上がる音がする
あなたは わたしの後ろにまわり
着ていた浴衣の柄を指差して
「ここに花火があるから平気。」
と言って笑いました
わたしは はじめて自分の目の前で火の粉が上がるのを見ました
(夜の中 ぱちぱちぱちぱちと火花が弾けた。)

あなたがくれた りんご飴
硝子の膜が夜の灯りに反射する
(お祭りの赤い宝石。)
砂糖の匂いが髪に絡まる
忘れられない景色とともに
一口かじると酸っぱかった

あれは…
幼い恋の味だった

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