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カレーを無料で配ることをやめた夜 #11

先週金曜日は、下北沢にある発酵デパートメントとのコラボ企画で「スパイス角打ち」を開催した。

世の中の大規模イベントが悉く中止になり、イベントを開催したとしても「今は参加しないでおこう…」という空気が蔓延しているコロナ禍真っ最中の角打ち企画。

こんな時期だし、今までの角打ち企画の来場人数を鑑みても、近所に住んでいる人と友達が少し来てくれれば御の字かな。
おつまみは1組でシェアするだろうから、いつもの仕込み量の1/5が妥当かも、、という事前の読みは完全に外れて、まさかの大・大・大盛況!!!!

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↑ ゴーヤと豚肉とポン酢カレー、ベトナム風ラム肉炒め、夏野菜のアチャール、CHANCE THE CURRYの発酵×スパイスプレート 

「もしかしたら」を想定し、おつまみが売り切れた場合はカレーだけでも出そう、とリスクヘッジで大量に作ったカレーも完売。(余っても冷凍できて廃棄ロスにならないカレーは素晴らしい)

最終的に食品原価と人件費をちゃんとまかなえる売上となった。
ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました!


…という ”粗利を確保する” という話は、商売としては当たり前のことだが、今まで夫は「カレーは無料で提供する」というポリシーでカレー活動を行っていたので、今回の価格を設定しましょう、というタイミングでピンと来ずに困ったのだった。

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夫はカレーを毎日食べ始めて、カレーイベント出店やグッズを作り始めた頃から活動呼称が必要になり「CHANCE THE CURRY」というブランド名が生まれた。

経堂の名店「ガラムマサラ」に、HIP HOPとカレーが好きな人達で集まっているときに決まったこの名前はアメリカのラッパー「Chance The Rapper」が由来になっている。

チャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)
レーベルと契約しない・音源を有料販売しないという従来の音楽ビジネスとは一線を画す活動形態ながらグラミー賞を受賞、音楽フェスティバルにヘッドライナーとして出演するなど大きな成功を収めている。|出典: Wikipedia

彼は、音源は全て無料でファンになってくれたら、グッズを購入して応援してくれよな!企業コラボもどんと来い!という、通常の音楽ビジネスとは一線を画した方法でスターになり収入を得ている。

夫も、カレー屋になって商売をしたいわけではなく、カレーのたのしさを広めたり、カレーを作る人を増やしたいという理念があり、それがChance The Rapperのそれと共感するところがあったので、カレーは無料で提供することに決めたらしい。


…いや、でもよ。

あっちは、制作費はかかるけど音源が出来上がってしまえば、原価はかからず時間や体力にだって影響せずに拡散することができて音のクオリティも変わらない。無料で音源が聴けるから、有料音源よりも聴いてくれる人が格段に増え、牧草ローラー式にファンが増える。

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ファンの母数が増えれば増えるほど、ライブ集客数も増え、グッズも売れる。

だが、カレーは違う。


1回のイベントで食べてもらえる人数なんて数十人だし、毎回材料費・仕込み・移動費・カトラリー費・当日の人件費・後片付けの時間など、地味に諸々経費がかかる。
そして、人は試食販売でわかるように、対面でカレーを無償提供されると、逆に訝しがって食べるのを躊躇する生き物なのだ。

カレーをイベントで無料提供してもChance The Rapperとは業界もスキームも違うので同じような波及効果はないように思えるのだが、損得勘定ではなく おもしろいからやる という夫の行動力は、見ていて清々しいものがある。

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何年か前に「かくかくしかじかで、CHANCE THE CURRYという屋号にして、カレーを無料で提供するんだ!」とキラキラした目で話す夫に、「やりたいならどうぞ〜」と快諾してしまったことを悔やむ瞬間もたまにある。

イベントは準備・後片付け含め、想像以上に疲れる。
自動的にお手伝い部隊である私の休日も潰れるし、何より無償奉仕活動なので、なんで私はカレーに興味がないのに休日まで終日働いているのか…と悶々とすることも多々ある。

だが、カレー活動家的なことをやりつつ、もう一方でWEB企画制作会社の事業主でもある夫が〔自分で稼いだお金でやりたいことをやる〕ことに、なぜ反対できるだろうか。

私自身も幼い頃から「やりたいことをやれ、でもやるなら自力で」というおおらかな両親の元で育ってきたので、損得勘定だけで夫のやりたい気持ちを突っぱねてはいけないのだ。

毎回「これはアクティビティ、アクティビティ…」と自分に催眠術をかけて協力してきた。

だが去年7月、Chance The Rapperが音源の有料販売を始めたことをうけ、CHANCE THE CURRYもカレーを販売してもいいのかも、という意識改革が起こっている。

とはいえ、カレー販売での売り上げがほしいわけではなく、カレーのたのしさを広めたり、カレーを作る人を増やしたいという理念は不変なので、今後の夫がどのようなアプローチで進化していくのかが楽しみである。


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