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【004】護身用論理学

最近は春と秋が無くなり四季を感じられなくなった、と聞くことがあるが、私は慌ただしいほど四季を感じる。
近所のショッピングセンターに先日訪れた際、一階の入り口付近ではバレンタインチョコ、四階子供服のフロアでは雛人形の特設コーナーが設けられていた。
エスカレーター脇で掃除用品特売も行っている。
新年の掃除のやり忘れを戒めているのか。

翌週訪れると、バレンタインデーコーナーにホワイトデーが侵食し始め、雛人形の横には五月人形が売られていた。
掃除用品はエリアを拡大していた。
新学期を迎えるにあたり掃除せよと訴えているのか。

恐らく来月には、チョコは花見アイテムに取って代わられ、五月人形のうち数体はランドセルを背負っているだろう。
掃除用品エリアでは実演販売が行われ、大型連休は掃除をしましょうと力説しているかもしれない。

バレンタインデーと言えば思い残していることがある。

高校時代、ブログが流行っており、私も書いていた時期があった。
当時もこのような、読み終わって五分も経てば綺麗さっぱり忘れてしまう低カロリーな内容を書き連ねていたので、何を書いていたかは基本的には覚えていない。
その中で一つ、バレンタインネタについて書いたことがある。
色恋沙汰ではなく、高校数学の数学Aに絡めてである。
ラジオを好んで聴いていたこともあり、ラジオDJがリスナーからのお便りを読む形式の内容で書き連ねた。

「『バレンタインは男性から女性へプレゼントを贈るのが海外では主流なので、日本で最近話題の逆チョコはそれ自体が逆なんじゃないでしょうか?』とお便りいただきました、逆の逆が真になるから・・・もうわかんねーよ!」

数学を勉強していた割に諦めが早すぎて呆れてしまう。
命題、その逆、裏、対偶を整理しようと思う。 

命題「AならばB」を設定した際、
逆は「BならばA」、
裏は「AでないならばBでない」、
対偶は「BでないならばAでない」。
命題の真偽は対偶の真偽と一致し、逆と裏は真偽が一致するとは限らない。 

以上を念頭に置き、命題を次のように設定する。

命題:女性ならばバレンタインデーに男性にプレゼントする。

この場合、Aは「女性」、Bは「バレンタインデーに男性にプレゼントする」となる。
そうすると、

逆:「バレンタインデーに男性にプレゼントする」ならば「女性」である。
裏:「女性でない」ならば「バレンタインデーに男性にプレゼントしない」。
対偶:「バレンタインデーに男性にプレゼントしない」ならば「女性ではない」。

今年のバレンタインデーは妻からは何ももらえなかった。
妻に「お前はバレンタインデーにプレゼントをくれないから女ではない」と言おうものならば、
「去年のホワイトデーにあなたは何もくれなかったじゃないか」と過去の私の忠誠心の無さを指摘してくるか、
「あなたは私に対する日々の感謝が足りない」と現在の私の忠誠心の無さを指摘してくるだろう。
私の身の安全を確保するためにも、この命題の対偶は偽であると言わざるを得ない。

 十五年来の思い残しが解消し、とても晴れやかな気分である。
晴れやかついでに、もう一つ、真偽を確かめたいことがある。
最近、妻からこう言われた。

「あなたは和食の基本がなっていない」

衝撃的な一言に動揺し、勢いで和食の本を四冊も買い込んでしまった。
背表紙がお洒落なので、本棚に飾って毎日拝んでいる。
さて、命題と対偶は次のようになる。

命題:「私の和食」は「基本がなっていない」
対偶:「基本がなっている」ならば「私の和食ではない」

重い腰を上げて本を読み込み、基礎を身に付けたとしても、「私の和食」はあくまでも「私の和食」である。
とするならば命題の対偶は偽になるため、命題も偽と考えて差し支えないだろう。

 先日煮物を作った際、大根を煮崩してしまったが、火加減を間違えたわけではないと思っている。

(今回の論証が論理学的に全くの的外れであったとしても、私の心の平穏を保つために、反論は皆さまの心の内に秘めておいていただきたい。)

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