探究学習プログラム#09 -田園調布学園 「暮らすがえ」を通して、暮らしを豊かにするデザインプロジェクト-
プロジェクトの概要
昨年度1年間を通じて社会と接続しながらデザイン思考を活用していく経験を積んだ中学3年生の約200名(約40名×5クラス)が、身近な生活を見つめて「暮らすがえ」を可能にするモノを試行錯誤しながらつくり出すことを通して、探究プロセスの試行錯誤する力を鍛えることを目的として、プロジェクトを実施しました。
今回のプロジェクトは、ちょっとしたアイデアや工夫で暮らしを豊かにする商品を提案している「平安伸銅工業株式会社」の常務取締役 竹内一絋様にテーマオーナーとなっていただきました。
プロジェクトの流れ
⑴ 授業1-2回目「授業概要説明」「初回説明会」
授業の初回では、CURIO SCHOOLのスタッフからのプロジェクト概要説明を受けました。また第2回では、各教室をZOOMで接続して竹内さんからのテーマ出題と会社説明をお聞きしました。
⑵ 授業3-4回目「チームのワーク時間」
プロジェクト概要を確認した生徒たちは、それぞれのチームごとにプロジェクトを進めていきました。「くらすがえ」というこれまで当たり前に過ごしてきた生活空間から課題を探るテーマに、ほとんどのチームが戸惑いつつも、身近な人へのインタビューやシーン探しのために学校中を探索する、など行動を始めました。
探究は各クラスごとの時間割に埋め込まれた時程(い組は3時間目、ろ組は4時間目…という形)で進めますが、全クラス同じ内容で進めました。また、探究活動は教室に限らずどこで行ってもよいルールになり、教室でプレゼン資料作成を行うチーム、廊下でプロトタイプづくりを進めるチーム、同じ階にあるラウンジでユーザーインタビューをするチームなど、それぞれが活動を進めやすい場所を都度選択しながら進めていました。
⑶ 授業5回目「中間発表⑴」
これまでのチーム活動を一旦プロジェクトシートにまとめ、弊社ファシリテーターに共有する中間発表を行いました。プロジェクトシートにチームの進捗状況を書き込むことで、現状を可視化、言語化して自分たちチームの状況を客観的に判断できるようにしました。
⑷授業6-8回目「チームのワーク時間」
中間発表で受けたフィードバックをもとに、チームプロジェクトの方向性や検証方法を再確認しながらワークを進めていました。この段階になってくると各チームごとに進捗状況が異なってきて、プロトタイプ作成を進めるチーム、テスト結果から次の方針を考えるチーム、再びユーザーインタビューからやり直すチームなど、チームごとに自分たちのプロジェクトをより良くするため、時間を自由に使っていました。
⑸授業9-11回目「中間発表⑵&チーム作業の時間」
2回目の中間発表と並行して、チーム作業の時間をとりました。この段階では大きな路線変更というよりは、チームごとに最終発表に向けて内容を詰めたり、プレゼンテーション資料の作成を進めたりしていました。
⑹ 授業12回目「クラス発表会」
クラス内発表会では以下の3観点から審査を行い、各クラスの選抜チームが決定しました。審査は弊社スタッフ2名が行い、各クラス1チームを最終発表会担当の選抜チームに選出しました。
デザイン思考プロセス(ユーザー/シーン/インサイト/プロトタイプ/テスト結果)が語られているか?
審査員的に、インサイトとアイデアの納得度は高いか?
テーマに対する整合性はあるか?
⑺授業13回目「最終発表会」
平安伸銅工業株式会社から、常務取締役 竹内一絋様と広報担当 島田真衣様にご来校いただき、選抜された5チームのプレゼン聞いていただき、各チームへのフィードバックをいただきました。
選抜されたチームからは、「椅子の下に靴を収納するBOX」や「折りたたんでベランダで使用できるデスクチェアセット」といったユニークなアイデアが提案されました。
テーマオーナー竹内様からのコメント
どういう提案が出るかワクワクしていました。「くらすがえ」というテーマを考えることを通して、自分たちが日々当たり前と思っていることが変化する瞬間が得られたのではないかと思います。私たちの仕事も含めて、世の中の課題は、ほとんど答えがないものだと思っています。私も1人の探究者として、プロダクトチームとコンセプトや形の部分を、普段からいろいろと話し合っています。明確な答えがない中で考え続けることが、よいものづくりにつながると思っています。みなさんにとっては、答えがないことを考え、そこから自分自身の答えを出していくことが、すべて自分のためになってくると思っています。とても素晴らしい発表をありがとうございました。
代表1チームのプロジェクトとインタビュー
最終発表をした5チームから代表して、1チーム(Aさん・Bさん・Cさん・Dさん)のインタビューを紹介します。
プロジェクト概要
代表チームは、学校でくつろげる場が無い生徒をユーザーに設定し、「休み時間に横になれるフリースペース」というアイデアを提案しました。
Q.プロジェクトをどういう流れで進めていったのか、教えてください。
A 元々はみんながリフレッシュできるカラオケボックスをプラザ(学校の1階にあるオープンスペース)に置こうとしてて。だけど、すごくお金がかかるので。
B カラオケボックスだと、やっぱ人数に限りがあるから、誰でも気軽に使えるものにしたかったんです。予約制にしたくなかった。
C そこから、カラオケじゃなくても、いろんなことができる場所作ろうという方向性になりました。
A ドーム型のグランピングテントが発想のヒントになり、アイデアが決まりました。
Q.アイデアが決まった後は、どのように形にしていきましたか。
A 最初はラップや粘土で模型を作っていて、その後は、とりあえず大きいビニールを貼り合わせてきました。
B プラザの半分くらいの大きさのものを作ってたんですけど、授業や部活動で邪魔になってしまうから、場所が限られてしまって大きさも決まってしまいました。本当はもっと大きいものを作りたかった…!
A プラザの半分はマットをひいてヨギボーでリラックスできるようになっていて、もう半分が眠れるドームというイメージでした。
C ユーザーを「全生徒」にしているのも、みんながワイワイ入れるような大きさのものを想定していたからなんです。
Q.プロトタイプ制作で大変だったことはありますか。
C ずっと大変でした!汗をかきながら作っていました!
A ドームを支える針金が、最初は細すぎて立たなくて、2回目は太すぎて曲げられなくて…。ずっと針金との戦いでした(笑)
D それでも、やっぱり可愛さ的に絶対ドームにしたくて。
B 雰囲気を壊さない感じで広く使えるという点でもドームは良かったんです。だから最後まで、ドームのアイデアをどう形にするか試行錯誤していました。
Q.テストはどうやって進めていきましたか。
A 他の班を巻き込んでドームにに入ってもらって。結構みんな自由に過ごしてくれました。
B あまりネガティブなフィードバックはなかったです。自分たちは本当はもっと大きいの作りたかったから、試してもらえなかったのが悔しかったですけど(笑)
A 私たちは元々、プロジェクトを完璧にやろうとするタイプではないんですよ。
C こんなに大きいプロトタイプ作ったのは、初めてだよね。
D そもそも、他のプロジェクトだとプロトタイプを完成させるまでいかなかったときもあったくらいで…。
Q.どうして今回は、ここまで熱量をもてたんでしょうか。
A 大門さん(CURIO SCHOOL社員)から、「やったらいいじゃん」っていうアドバイスがあって。
B 大規模なプロトタイプを作るのは大変だったのですが、ここで後戻りしちゃったら そもそも何も作れないで終わっちゃうから。
D 途中からは、「ここまできたら」という感じでした。
Q.プロジェクトを通して、気づいたことはありますか。
B とにかくワイヤーが大変だったんですよ。個人的には、ドームにかぶせるビニールを作る方が時間がかかると思っていたので、「やってみないとわからない」と思いました。
A 平安伸銅工業さんへのプレゼンの中で、ドーム型にした理由やメリットについて質問があって。自分たちでも考えてやっていたつもりだけど、企業の方の考えの深さを学びました。
C プレゼンはすごく緊張していて…手が震えていましたが、いい経験になりました
Q.今回のプロジェクトでの学びで、今後に生かせることはありますか。
B 諦めなかったら何事でもできることかな。
C 確かに。なんとか形にはなったし!結構、ギリギリだったけど(笑)
D プロジェクトを進めていくうちに、思ってたイメージと違うものができたから、 「やってみないとわかんないな」って思いました。それは今後に活かせそうです。
A 今日、休み時間に2人でドームでゴロゴロしてたんですけど、居心地良かったよね。
D 私たちだけじゃなくて、みんなが使ってくれるの、めっちゃ嬉しくない?
C 楽しんで作って、それを使ってくれている人が笑ってるの見たら、結構いいよね。褒められると嬉しし。そういうことを感じられたのも良かったです。
(インタビュー・文章:角田)
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