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同期のあの子は今も『2024.1.28』

去年の4月。
私はある企業に就職した。
当時の同期は、私を除いて35人だった。
その中で同じ部署で働くことになったのは4人だった。

9月末。
私は会社を辞めた。
当時の同期は、私を除いて30人になっていた。

現在。
私は会社を辞めて、同じ部署で働いていた同期2人と、別部署の同期1人としか連絡を取らなくなった。
同じ部署だった同期が2人辞めた。別部署の同期1人が辞めた。
まだ働いている同期は、26人になった。


今日は元同期の2人と新年会だった。
辞めた身である私が、彼女達と一緒にいるのは烏滸がましいかと思っていたが、LINEグループもそのまま、新年会の計画を立ててくれた。

元同期の1人が辞めることを知ったのは、新年会の計画を立て始めて1週間が経った頃だった。

「会社辞めて、2月から違う職種になるんだ」

私は嬉しかった。

人一倍真面目な彼女は、一緒に働いていた時、どれだけ大変でも、私のようにサボったりずる賢いうごきをしたりしなかったからだ。
彼女がいると、自分も頑張らなければいけないと思わせてくれる人だった。だからこそ心配だった。

久しぶりに会った彼女は、髪を切って明るいオーラを放っていた。
あそこで働いていた時とは違う、清々しい表情をしていた。

彼女は早くも来月から、新しい世界に飛び立つのだ。

「辞めるって言った時、肩の荷がおりたんだ」

そう語る彼女は笑顔だった。素敵だと思った。


そんな中私の心配はもう1人の元同期に変わった。

彼女は仕事を難無くこなし、体調も気分も表に出さないような人だった。
辛い苦しいを見せない人だと言うことに気付いてあげることが出来ていなかった。

彼女はそこにいる誰よりも疲れた顔をして、私達と話をしていた。


今までは3人で同じ顔をしていた。

3人で、あの上司がさ、これどうしたら良かったんだろ、今日のあれ疲れたね、早く辞めようね、って話し合った。

私が辞めて2人になって、私が違う顔になった。

2人の疲れた顔が、今まで私がいた世界を映し出していた。彼女達の頑張りが、身体中から溢れ出ていて。
こんな事があったの、こういう人がいたの、大変だったね、あの人ああいう所あるよね、早く辞めなよ、早く辞めたいね、って話を聞いたり応えたりした。

元同期を1人残して、私と1人が辞めた。

会社に残った彼女だけが、3人で同じ顔だったあの時のままだった。
こういう事があった、休みが取れない、辛い、辞めたい、って話を聞いた。

気付かなかった。
私達がこんな顔をしていたこと。
自分がそこを離れて客観視した時にようやく知った。
ここからいなくなって正解だったんだ、と。

自分では分からなかったけど、彼女ともう1人の彼女と過ごした半年間にも辛いが含まれていた。でも彼女はまだ、その中で蠢いている。


一緒に転職アプリを入れた。
彼女は居酒屋で、ハイボールを片手にスマホを動かした。私も、アンインストールしたアプリを戻した。

「次会う時は就職決まってる時ね」

仕事を辞めて4ヶ月。
転職活動なんて一切やっていなかった私が、前いた世界に今も住む彼女に言われた。言い合った。

彼女のためにも、一緒に新しい世界に飛び立たないといけない。
もう飛び立つ準備を終わらせている彼女に、追いつかなければいけない。


同期のあの子には、幸せになって欲しい。

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