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あいつは水鳥の女『日記:2024.9.20』

今日は母と二人で居酒屋に行った。久し振りの二人夜ご飯は、自宅の母のご飯とダイニングテーブルではなく酒と掘り炬燵を介することになった。私も、もちろん母もアルコールとはタイマンはれるので同じ速さで同じ量飲むことが出来る。

私は前職で働いている時、一度だけ社員飲みをしたことがある。調子に乗る同期、ナンパした次の日遅刻した話を自慢げに話す上司、同期がちやほやされると嫉妬する先輩、突然始まる無茶振り自己紹介、挙げ句の果てに全割り勘。何も良い事がなかった飲み会は、私が生きている中で一番無心になって過ごした日だった。

就職したとして、次の場所では飲み会があるだろうか。コロナ対策も大分緩くなっているし、場所によっては歓迎会をするタイプの組織だったり、退勤後は飲みに行くかの組織だったりするかもしれない。私は母とそんな話をしながら過ごした。

母は外食先で箸袋に入った箸が提供された時、箸袋で箸置きを作る。私が人生最初に外食をした大人は両親だったために、箸袋は箸置きを作るものなのだと思って社会に出た。だから私も母と同じ方法で箸置きを作っていた。

もしかしたらもっと工夫を凝らした手作り箸置きがあるのか。そう言い出したのは母だった。私はスマホで「箸置き 折り方 おしゃれ」と検索した。すると出て来たのが、孔雀の折り方だった。

私はシンプル箸置きを一度箸袋に戻して折り始めた。そもそも箸袋は、短箸袋と長箸袋があるっぽい。孔雀を作り終えた頃には、首が短いずんぐりむっくりな孔雀になってしまった。
母はそれを掌に乗せて「これは水鳥だな」と言った。

水鳥。調べると、私の孔雀は、水鳥だった。

私がもし就職して会社内の飲み会があった時、水鳥の箸置きを作ったどんな反応になるだろう。この日記を最後まで読んでくれた人がいたら「箸置き 孔雀」と検索して画像を見た後に「水鳥」と検索してみて欲しい。私は確実に水鳥の箸置きを作ったことになる。

数々の箸置きの折り方がある中で水鳥の箸置きを作るなんて、と恐れ慄かせるかもしれない。その後の暮らしの中で「あいつは水鳥の箸置きを作った女、水鳥の女だ」と噂が回ってしまうかもしれないし、「これ良かったら」と誕生日でも無いのに鳥のグッズや鳥モチーフの何かしら、鳩サブレなんかを頂いてしまうかもしれない。

困った。私がこの世で一番苦手なのは鳥、鳥全般だ。どうにか妄想が妄想で終わるように、他の箸置きを作れるようにしておかなければ。

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