目の前にあるスピードが魅せるもの
陸上競技の魅力を伝えるにはどうしたらいいんだろう? ということを常々考えている私ですが(注:陸上関係者ではありません)、余計な言葉などいらない瞬間もあるよな、ということを実感する出来事がありました。
「陸上選手の本気の走りは、ただそれだけで人を惹きつける。」
その瞬間を教えてくれたのは、小学3年生の長男でした。
特にスポーツはしていないけど、友達と走り回って遊ぶのは好き。
かけっこは早いほうだけど、クラスで1番とかまではなれなくて、運動会のリレーは補欠。足が速いってかっこいいから、もっと速くなれたら嬉しいな、とは思ってる。
そんなごくごくふつうの小学3年生である、わが家の長男。
ふつうとちょっと違うところがあるとすれば、陸上競技の観戦が大好きで、やたら陸上選手や大会に詳しい母親がいることくらい。(その母親というのは、つまり私のことですが。)
「走るのが速い=かっこいい」 という小学生らしい感覚は、「目立つ」とか「わかりやすい」とか、そういう理由も多分にあるでしょう。
だから、足が速いってかっこいい!と思っている小学生が陸上選手に注目をしているかというとそんなことはない、という残念な現実があります。むしろ、サッカーとか野球とか、頻繁にテレビ中継やスポーツニュースで目にする選手に注目されがちなことは、息子の友人の言動からも伝わってくるのです。
我が家の息子も、陸上選手といえば「箱根駅伝に出る大学生ランナー」くらいしか注目をしていなかったのですが、そしてそのために「速さ」という点ではそこまでのすごみを感じていなかったのですが、偶然近所でひらかれた「かけっこ教室」で見た景色が、彼を変えました。
その時、かけっこ教室のコーチとしてきてくれたには、元800m日本記録保持者であり、ロンドンオリンピック代表の横田真人さん。陸上系ラジオ、track town shibuya のメインパーソナリティーとしてのご活躍の方がnote読者が目にしやすいかもしれません。
さて、そのかけっこ教室。定員を大幅に超える参加希望者の列をまるっと引き受けてくれたっぽい、大人数での開催。その教え方のプロセスもわかりやすく、「子どもが体感して腹落ちすること」を考えてくれているなぁというもので、息子も楽しんで受けていました。
でも、終わったあとも彼の心にずっと残る瞬間は、最後の最後にあったのです。
すべての教室が無事終わり、ありがとうございました!の後。
シナリオにあったのか、その場の思いつきなのかはわかりませんが、「横田コーチの本気の走りが見たい!」という流れになり、短い距離ですが、目の前を走ってくれたのです。さらに、「早すぎて見えなかった」というアンコールリクエストに答えてもう1回。(こちらは少しだけ速度を落としてくださったように見えました。)
横田さんが走ったほんの1〜2秒。その姿を見ていた息子の目が、ぐっと見開かれて、キラッキラに輝き、口元が自然にゆるんで感嘆の声がもれるのを、私は見逃しませんでした!
それはもう、自然に引き出された、こころからの感動の瞬間だったのです。
「ものすごい速い!」
「見えないくらい速い!」
「すごくきれいに走ってた!」
立て続けにそんな感想を口にするくらい、走る速さ、そして走る姿の美しさがぐっと息子のこころに刻まれたことがよくわかります。
早く走ることをとことん極めた人が走る姿のかっこよさ。
それを見たことで、「足が速いって目立つしかっこいいよね」という一般論的見方から、「自分もこうなれたら、どんなにかっこいいだろう!」という、自分の中から湧き上がってくる憧れに変わったのでした。
そして、かっこいい人たちをもっともっと見たい!という気持ちが生まれた結果、陸上のトラック種目を観戦することへの興味が一気に湧き上がった長男が、5月中旬に横浜で開催された世界リレーを「生で見たい!」と行って出かけたことは、また別のお話で。
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