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牧草地の小屋への愛

牧草地に建つ、このような小屋を僕が初めて意識したのは、いつだったのだろうか。

たぶん20年近く前、オーストリアを旅行した時だと思う。

電車に揺られながら、延々と広がる美しい牧草地を眺めていると、時おり、このように牧草地の中にポツンと建つ小屋が目に入ってきた。

「絵になるなあ」

山がちなオーストリアを走る列車の車窓から見える風景は、日本とはだいぶ異なる植生と、雰囲気の違う雲。見慣れない謎の小屋も、そんなオーストリアの景色の中に馴染んでいた。

「今度生まれ変わる時に、もしも自分で好きな人生を選べるんだったら・・、次の人生はオーストリアの羊飼いやな」

と列車の中で夢想しながら、ニヤリとしたことを思い出す。

そんな牧草地に建つ小屋に、ドイツで暮らし始めてから、再会した。

小屋

ドイツやオーストリアには広大な牧草地が広がっていて、そんな牧草地には必ずところどころに小さな小屋がポツンと建っている。

この小屋の佇まいがあまりにも愛らしく、すっかり惚れてしまった

ドイツ人の同僚に聞いてみたら、これはドイツ語で「ヒュッテ」と呼ばれるもの。まあ、牧草地だけでなく山小屋も総じてヒュッテと呼ばれているから、かなり範囲の広い言葉だけど。日本語だと「納屋」が一番近いのかな。

中には何が入っているかというと、干した草やわらを保管したり、農作業の道具やトラクターを入れておくためのもの。基本的には、人が住んだり休憩したりする場所ではない。

下の写真では、右側に干し草が見える。そして右手前の地面に置かれているのは、牧草を刈るための機械。これをトラクターで牽引して芝を刈る。この機械は日本で見たことないけど、ドイツの牧草地ではこんな感じの原始的な機械が活躍している姿をよくお見掛けする。

時にはこの何倍も巨大な芝刈り機がグルッグル回転しながら牧草地を爆走する

多くの小屋は、その場所に数十年は存在しているものでなければ決して纏うことができない、味のある風格を醸し出している。

人が住むわけではないので、傾いていたり、大きな隙間ができて中が丸見えになっている。

そんな渋い佇まいからは・・、ただ愛らしさのみ感じる。

山の中の牧草地にも、小屋 ↓

若葉の中に隠れるようにひっそり佇む、小屋 ↓

下の写真は、人の住居と一体になった大きめの小屋。これくらいの大きさになると、家畜小屋や人の住居も兼ねている。

おっと、その表現は失礼だった。「人の住む家に、小屋がくっついている」と言った方が適切だろう。つい、小屋を主人公にして語ってしまった。

家の左半分は家畜や農機具の小屋部分。右半分の白い漆喰の壁は人の居住する部分だと思う↓

と、書いていて思い出した。

この地方では、いつも西から東向きに向かって(地図で言えば左から右方向へ)、常に西風が吹いている。

そんな地元で育ったドイツ人が言っていた。

ドイツ人
「この地方の家は、必ず西側に家畜小屋や農機具を収納するスペースがあって、人が住むスペースは東側にあるんだよ。なぜって、冬は寒さが厳しいから、風が吹きつける西側なんかに人が住むスペースは置かない。西側は寒さに強い家畜や農機具のためのスペースって決まっているものさ」

写真をじっくり見てみると・・、陽の差す方向から考えて、左側が西側。おお、たしかに風が吹きつける西側(左側)に家畜小屋か農機具のスペースが配置されている。現地の人が言っていたとおりだ。

さて、話を戻して他の小屋へ。。。

防風林に囲われた中に隠れていらっしゃることも ↓

湖畔の牧草地にも、小屋 ↓

もはや自然の景色の一部。

さて、僕が記事の最後にいつもよく書いている「オチ」や「まとめ」。今回の記事では何だろうか?

それが、な〜んにもないんですわ。

ただ、小屋への愛をほとばしらせたかっただけの記事。

by 世界の人に聞いてみた

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