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ヨーロッパ史上で最も幸せな世代

【ドイツ人から2019年春に聞いた話】

いま自分が働いているドイツで、お昼に仕事の会食でレストランへ行った時のこと。

悠々自適の年配ドイツ人たち

平日の昼間、郊外にある緑に囲まれた少し上品なレストランに入った。すると店内は、年齢70~80才くらいの明らかに「定年後に悠々自適の生活を送っている人たち」のグループによって、お店の半分以上の席が埋まっていた。みんなテニスウェアやサイクリングの服を着ていて、既に午前中にスポーツで汗をかいてから、昼食のために来店した様子。ビールやワインを飲みながら友達グループで談笑している。みな小ざっぱりと良い身だしなみをしていて、雰囲気からも上流階級な人たちばかりだった。

ドイツ人
「この年配の人たちは、現役時代にどこの会社で働いていたと思う?」


「・・・やっぱりX社?」

ドイツ人
「やっぱりそう思うよね、僕もそう思う」

このレストランは、ドイツの名門企業X社の城下町のような地域にあって、その会社を退職した人たちがたくさん住んでいる。そしてX社は従業員を特に大事にすることで有名な、いわゆる「古き良き会社」。給与も世間体も良く、退職後は悠々自適の生活が保障されている。

ドイツ人
「この人たちは、老後を豊かに過ごすための家も貯えも年金も充分に持っている。彼らの毎日のスケジュールは、午前中は友達や奥さんとスポーツをする。その流れでみんなでレストランへ行って、ビールやワインを飲みながらおいしい昼食を食べて談笑する。午後には家に帰って本でも読んでのんびりしたり、庭いじりをしたり。お昼に外でしっかり食べるから、もうキッチンを撤去してしまっている人も多いんだって。料理する必要がないからね」


「極楽な生活やね」

ヨーロッパ史上で最も幸せな世代

ドイツ人
「そしてこの人たちは、『ヨーロッパの人類史上で最も幸せな唯一の世代』って呼ばれている。なぜって、ヨーロッパの人々は近代まで、飢饉や感染症、戦争に次ぐ戦争に振り回されてきて、安定した繁栄を享受できなかった。でも、第二次世界大戦が終わってようやく平和な時代が訪れて、更に科学の発展で飢餓や病気の恐れも少なくなった。この戦後のベビーブーマーの人たちは、確かに若いころは仕事仕事で忙しかったけど、でも安定した良い生活を享受してきた。そして今こうやってほら、極楽の年金生活を楽しんでいる」

自分たちの世代

ドイツ人
「でもね、いまの時代には既に、X社みたいないわゆる『古き良き会社』は少なくなってしまって、充分な老後の貯えが残せるかどうか。そして年金にも期待はできない。政治も、移民だのポピュリズムだのって雲行きが怪しい。彼らのような極楽な老後は、もはや当然のものではなくなってしまった。だからこの戦後のベビーブーマーたちは『ヨーロッパの人類史上で最も幸せな唯一の世代』なんだ」

因みに日本の場合、史上最も幸せな世代は「江戸時代の人たち」と聞いたことがある。ヨーロッパが戦争に明け暮れていた時代に、日本は鎖国して平和な時代を満喫していた。

自分たちの世代の幸せ

で、これを書いていて思ったのが、ここでドイツ人が言っている「幸せ」って、この世代の人たちの幸福観に基づいたもの。例えば大きな家を建てて、大きな車に乗って、旅行して、別荘を持って、レストランで食事して、、、といった生活。

でも自分の世代(40才台)が老後を迎える頃には、現時点では想像できないような手段で、自分にとって価値ある経験をしたり満ち足りた時間を過ごせるようになっていて、また違う形で幸せを感じることができようになるのかも。

例えば僕の場合でいえば、技術や科学の発展によって今や世界中の人と自由にコミュニケーションが取れるようになったし、海外や異文化の情報もリアルタイムで膨大な量を得ることができる。もし日本で生活することになっても、ヨーロッパの友人と簡単に繋がっていられる。これは自分にとって、大きな車に乗ったり、別荘を持つことよりもずっと意味のあること。自分が老後になる頃には、更に現時点では想像できないような手段によって、なんだかんだと幸せな時間を過ごすことができるようになっているのでは・・・・と、せめて希望くらいは持っておこう。

by 世界の人に聞いてみた

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