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これからの「働き方」を考えるための ハンナ・アレント『人間の条件』Zoom読書会 5/3後記, 5/10告知

執筆:ぬま(ビジネスパーソン)

去る5/3に第1回を開催しました。
2時間の予定でしたが、大幅に延長することになりましたorz
ビデオなしで、テクストとスライドとみなさんの発言内容だけであったこと、またとても楽しく進められたことで集中力が続いたのかなと思います。

ご参加いただいた方々には、初開催で拙い運営となってしまいご迷惑おかけしましたが、みなさん最後までお付き合いいただけました。
本当にありがとうございました。

『人間の条件』のプロローグと第一章

第1回ということで「プロローグ」から「第一章 人間の条件」の最後までを読みました。合わせて30ページくらいです。

普段、ビジネス書ばかりを読んでいるので、こんなに一言一句、注意深く読む経験は学生以来でした。
『人間の条件』全体を貫く概念や方法の導入部で、哲学史の背景知識が少しあったほうが読みやすいんだなと気づきましたが、参加者の皆さんの率直なご質問とそれに対する解説者(たし)の丁寧な回答のおかげで、読みが立体的になっていきました
参加者のみなさまにもそう言っていただいたように、一人では味わえない読書経験でした。

簡単に要約すると、アレントは「人間の条件」を論じるに当たって、
「活動的生(vita activa)」に注目します。

アレントは、「活動的生(vita activa)」にはさしあたり3つの活動(activity)が含まれているといいます。
・生命を維持するための「労働(labor)」
・道具や芸術作品など耐久性のある「物」を作る「仕事=制作(work)」
・物事の介入なしに直接人と人の間で行われる「活動=行為(action)」
これらは後の章でそれぞれ詳しく論じられています。

また、「人間の条件」としては、「生命それ自体、出生性(natality)、可死性(mortality)、世界性、複数性、地球」が挙げられていました。
可死性が人間を条件付けているという点は感覚的にわかりますが、出生性も人間の条件だという点については、聞き馴染みがなくとても新鮮でした。

個人的に印象に残ったところ

技術的知識という現代的意味での知識と思考とが、真実、永遠に分離してしまうなら、私たちは 機械の奴隷というよりはむしろ技術的知識の救いがたい奴隷となるだろう。そして、それがどれほど恐るべきものであるにしても、技術的に可能なあらゆるからくりに左右される思考なき被造物となるであろう。(『人間の条件』13頁)

私は普段、AI業界に身を置いているのですが、AI(とりわけディープラーニング)にはブラックボックスな部分があって、「説明できないけどなんかうまく動くんだよね」って、みんな嬉しさもありつつ、もやもや感も抱いているみたいな状況があります。
この状況ってまさに、説明を諦めることで私たちが「思考なき被造物」に近づいていることを意味しているのかなと思っちゃいました。
とはいえどうすればいいのという...

労働の枷から解放されようとしているのは労働者の社会なのであって、この社会は、そのためにこそこの労働からの自由を手にするのに値する労働以上に崇高で有意味な他の活動(activity)についてはもはやなにも知らないのである。(『人間の条件』15頁)

働き方改革で早く帰ることができるようになったサラリーマンが、「家に帰ってもやることがないから」と言って新橋辺りでふらふら過ごしている姿を以前テレビで観たことがありますが、まさに「労働以上に崇高で有意味な他の活動」を知らない状態だなと思い返していました。
(ぼーっとすることが悪いわけではないのですが...)
私自身も例外ではありませんが、「仕事しなくてよくなったけど、じゃあ何すればいいの?」って思っている人は少なくないのではないでしょうか。
コロナの影響で本当に大変な状況に置かれている方々がいらっしゃる一方で、暇で仕方なくて困っている人もいるんじゃないかと思います。
じゃあこの「労働以上に崇高で有意味な他の活動」って何なんだ?と。
わかりませんw
この読書会を通して問い続けられたらと思っています。
(「労働以上に崇高で有意味」かどうかはわかりませんが、これを機に当らぼのZoom読書会に参加してみるというのもありなのではないでしょうかw)

次回予告

5/10(日) 14:00~16:00に開催します。
第二章「公的領域と私的領域」を全部読む予定です。

今回の反省を生かして、次回はなんとか時間的にスマートにしていきたいと思います。主に取り上げるテーマをあらかじめある程度絞っておき、それらに関連する箇所の輪読と議論に時間を割けるようにする予定です。

ということで次回のテーマは下記になります。
・自由
・社会の画一主義
・プライバシー/プライベート

プライベートと聞くと、「プライベートを大事にしよう」みたいないい意味で捉えられると思うのですが、「プライベート(privative)=なにものかを奪われている(deprived)状態」というある種の「欠如」として論じられます。
ビジネスパーソンにとっては馴染みのある「company」という言葉も、その語源に遡ってネガティブなものとして取り上げられます。
この辺りについてみなさんとじっくり読んでいけたらと思います。

なお、途中入会者を絶賛募集中です
毎回冒頭で前回までのおさらいをしますので、おいてけぼりもありません!

ご興味ある方は、是非、下記noteの入会フォームよりご応募ください!

解説スライド

折角なので、読書会用のスライドを一部改変してご購入いただけるようにしました。その週に読んだ範囲の重要なポイントをスライドで解説してあります。理解の助けとしてご活用いただければと思います。
今回は、カルチュラルワークらぼの解説➕『人間の条件』プロローグと第一章に関するスライドなので、20枚ほどのスライドになっています。
次回からはもう少し減ります。

よろしくお願いいたします。
(以下、Google Slide を埋め込んでいます。)

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