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これからの「働き方」を考えるための ハンナ・アレント『人間の条件』Zoom読書会 6/21後記, 6/28告知

執筆:ぬま(ビジネスパーソン)

6/21に第8回を開催しました。
今回はいつもとは少し違った読書会(?)にしました。
前回は「第13節 労働と生命」を読み、また次回からは「第14節 労働の繁殖力」を読むことになっていますが、
これらの主題を考えていく上で、まずは生や誕生、死に関するアレントの思索について理解を深めておく必要があると感じたからです。
参加者のみなさん、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

死と誕生の哲学

今回は、特別編として講義形式でお話させていただきました。

以下の図は、古代ギリシアに由来するビオス(人間的な生)/ゾーエー(単に生きていること)という"生"の理解、およびそれらと行為・言論との関わりについてのものです("bio"logy[生物学]や"zoo"[動物園]の語源です )。また、この場合ビオスというのは基本的に"bios politikos"(ポリス的-政治的な生)を意味します。ご関心のある方は、『人間の条件』「第3節 永遠と不死性」および「第13節 労働と生命」に関連する議論が登場しますので、比較して読んでみてください。
(もちろん読書会にご参加いただければご説明いたします笑)

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     (この図およびこの図に含まれる内容の転用・流用は禁止です)

これまで『人間の条件』を読んできた限りでは、「行為と言論」を為す人々だけがビオス(人間的な生)を送ることができるという議論は何ともハードルが高い話だなぁと感じていました。
その一方で、アレントにおいて、ビオスとは複数の人々と共に生きるという生のことを意味し、そういう共同性のあり方(の一つ)がお互いについて互いに語り合い、語り継がれうる生として論じられているという点については、どこか胸に刺さるところがありました。

魂の不死や来世について何らかの信仰をもつのでない限り、私たちは「死んだら全て終わり」と素朴に(あるいは真剣に)考えることもあるのではないでしょうか。極端な場合、「旅の恥は掻き捨て」と言わんばかりに、"生"という、死んで終わりの旅を享受しようとしてしまうかもしれません。

しかし、本当に「死んだら全て終わり」なのでしょうか。
様々な仕方で他者たちに語ってもらえるというのは、「生きること」にとって決定的に重要な要素であるように思えますし、
また「死ぬこと」に関しても、私たちは単に身体機能の停止という仕方だけでなく、「"あの人"が亡くなった」「"あの人"の"あの人生"がまっとうされた」といったように他者たちに語られるという仕方で"死ぬ"のではないでしょうか。お葬式の場面を想像してみてもいいかもしれません。

そういう、語られるという仕方で死んだ生は、死後も他者たちの間で語られ続けるでしょう(先の図で「不死」と表現されているのは、死後も人々に語り継がれるという意味での不死です)。

日々の生活を維持すること、仕事に追われること、もっとたくさんのお金を稼ぐことなどに気をとられてしまいがちですが、
「死んだ後も時々でいいから友人たちに語ってもらえるような仕事をして生きていけたら」、「時にはそういう視点から「働くこと」を見直せたら」と思いました(まあ、私の場合、そんなにたくさんの人に語り継がれるような生や死はちょっと難しそうですが)笑。

また、covid-19の拡大で"死"というものの迫力がますます大きくなっていますが、"死"を医療や技術によって避けようとするばかりでなく、"死"の意味について考えていくことも必要なのではないでしょうか。
そのためにも以上のような発想は大切だなと感じました。

余談ですが、筆者がいるシステム開発業界では、「属人化はよくない」と言われます。もっと言うと「いつ死んでも後の人が困らないようにソースコメントやドキュメントを残そう」という一定の共通了解があるように思います。他の業界でも似たようなことはあるのかもしれませんが、システム開発業界では、プロジェクトごとに大人数を集めて適宜入れ替えたりするため、特にこうしたことが意識されているのだと思います。もしかしたらSEは普段から死を見据え死後も語られるような仕事をしているのかもしれません笑。

オープンソースコミッターなんかは、特定の企業に依存せず、長く使われるようなプログラムを開発していて、半永久的にリポジトリに自分の名前が刻まれるわけで、より作家的な働き方をしているな、なんてことを考えました。

次回予告

次回は6/28(日) 14:00~17:00に開催します。
第三章「労働」の第14節「労働と繁殖力」〜第15節「財産の私的性格と富」を読む予定です。
第二章 第8節「私的領域ーー財産」でも財産の話が出てきますが、労働に絡めてより深掘りしていく内容になります。
今回の生や誕生、死についての議論を踏まえて、労働についての思考を深めていきたいと思います。

なお、途中入会者を募集中です!
毎回冒頭で前回までのおさらいをしますので、おいてけぼりもありません!
ご興味ある方は、是非、下記noteの入会フォームよりご応募ください!

以上

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