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これからの「物作り」を考えるための ハンナ・アーレント『人間の条件』Zoom読書会 ご案内

カルチュラルワークらぼの管理人たしです。
おかげさまで、『人間の条件』読書会のシーズン1全12回完了いたしました。
そこで8/29(土)からシーズン2を始めます!!
シーズン2は、ハンナ・アーレント『人間の条件』「第4章 仕事(work)」から読み進めていきます。
この章の主題は、端的に言えばいわゆる「物作り」です。
シーズン1から「これからの働き方」を考えてきましたが、シーズン2からは「働き方」の中でもとりわけ「物作り」について考察していきます。

職人や芸術家、デザイナーやエンジニア、クリエイターなど、「物作り」に携わる方、携わりたい方にオススメの読書会です。
アーレントの「物作り(制作)」論を読みつつも、みなさんの「物作り」に関する経験を持ち寄って「物作り」、ひいては「物」について広く深く考えていきたいと思います。

「物を大事にする」とは何か?

『人間の条件』「第4章 仕事」を読むにあたって、私から問いを投げ掛けておきたいと思います。「物を大事にする」ってどういうことでしょうか?
以下、少しだけ考えてみましょう。

おそらく多くの人が小さい頃から「物を大事にしなさい」と教えられて育ってきたのではないでしょうか。
実際に子供にそう教えている方もいらっしゃるでしょう。
そこで次のように想像してみましょう。

あるとき、あなたは小学校1年生のC君に「物を大事にしなさい」と言います。しかし、C君は少し捻くれた子供なので、あなたに質問をしてきます。「じゃあ〈物〉って何?〈大事にする〉って何?」

あなたは、一緒に考えてあげることもできますが、お茶を濁しておくことも、「屁理屈をこねるな」と叱ることもできます。
しかし、もしあなたがC君の立場だったらどう感じるでしょうか。
「ろくに説明もできないくせに偉そうなこと言うな」と思うのではないでしょうか(私はそういう子供でしたし、ある程度は今でもそうでしょう笑)。
そのとき「物を大事にする」というありふれた言葉の意味を改めて考える責任が生じるのだと思います。

まず、「物を大事にする」という表現は、「何かしらの道具を大事にする」という場合に使うことが多いと思います。
 例えば、捻くれた子供のC君が普通のハサミで紙以外のいろんなものを切ろうしているのを見かけたとします。もちろん、そんなことをしていたらハサミはすぐに切れなくなってしまいます。
 そこであなたはC君に「ハサミを大事にしなさい」と言います。この場合、「大事にしなさい」というのは、さしあたり「できるだけ長く使えるように使いなさい」という意味でしょう。「長く使えるように使いなさい」とちゃんと説明すれば、C君も納得してくれるかもしれません。

別の日、C君は長い間ずっと同じスルメを噛み続けていました。
そこであなたは言います。「汚らしいから早く飲み込みなさい」。
C君はスルメを噛み続けながら質問します。
「物は長く使ったほうがいいんじゃないの?スルメは物じゃないの?」
この質問には例えば次のように答えることができるでしょう。
「ハサミのような道具はできるだけ長く使えたほうがいいけど、スルメみたいな食べ物はできるだけ美味しく味わうのがいいんだよ」

こういう答え方には次のような発想が表れています。
・道具は耐久性のあるものだからできるだけ長く使ったほうがいい。
・食べ物は消費するものだからできるだけ美味しく味わったほうがいい
(というか、食べ物が耐久性を保持し続けたらそもそも飲み込めない)。
実は、使用されるものと消費されるもの区別は、アーレントが『人間の条件』で大きくテーマにしていることの一つです。
このように説明すれば、C君も理解してくれるかもしれません。

さらに別の日、裏山で遊んできたC君は、木の枝でひっかけたり、地面で擦ったりしたことで、服をりびりびりにして帰ってきました。
あなたは言います。「服は道具だから長く着れるように着ようね」。
しかし、天才児でもあるC君は次のように質問してきます。
「でも、もしみんなが服をできるだけ長く着ていたら、みんなぜんぜん新しい服を買わないから、服屋さん困っちゃうね。それでいいの?」。

あなたは何と答えるでしょうか?
実は言うと、C君のこの質問は「物をできるだけ長く使うこと」と資本主義という社会システムの間の摩擦に関わっています。
資本主義というのは基本的に需要と供給のサイクルをどんどん加速、拡大させるシステムですが、このシステムは「物をできるだけ長く使うこと」と抵触します。なぜなら、服をできるだけ長く着ることは、その分、服の新たな需要を生まなくなってしまうからです。
アーレントも『人間の条件』で批判的に論じるように、資本主義というシステムは、道具などの使用物をあたかも消費物であるかのように扱うことによって、需要と供給のサイクルを必死で廻しています。

もしあなたが「資本主義だから仕方ないね」と答えたら、
天才児のC君はきっと理解するでしょうが、
その後のC君は「需要と供給を廻すためだから☆」と言って、
もう二度と物を大事にしなくなるかもしれません。

あなたが「資本主義だけど物は大事にしようね」と答えたとします。
C君は質問してくるでしょう。
「その場合の「だけど」ってどういう意味?物を大事にすることと資本主義のシステムを維持すること、どっちが大事なの?」

私たちは、資本主義の中で何をどのように作ったり使ったりしているのでしょうか?「物作り」とは何なのでしょうか?
アーレントは『人間の条件』「第4章 仕事」の中でこうした問いを掲げています。
この読書会では、アーレントとみなさん、そしてC君と一緒に、経験を持ち寄りつつ考えていきたいと思います。

*ちなみに、C君のCはコナン君のCです。
昔、大学院の先輩が「何かをしっかり理解しようとするときは、捻くれたコナン君に説明するつもりで考えるといい」と教えてくれたことに由来しています(笑)。考えるというか、実際に声を出したり紙に書いたりして説明してみるということです。
 「捻くれたコナン君」というのは、ちゃんと説明すればちゃんと理解してくれる程度に賢いが、こちらが少しでも誤魔化そうとすると無邪気に容赦なく問い質してくるキャラクターとして丁度いいからだと思います。教えてくれた先輩は冗談半分で言っていましたが、私は今でも「考えること」(流行りの言葉で言えば「クリティカル・シンキング」)は、自分の中に捻くれたコナン君を設定することだと考えています(笑)。

開催要項

テクスト:ハンナ・アーレント『人間の条件』(志水速雄訳、ちくま学系文庫)

テクストは各自でお求めください。
※当日までに入手できなかった方はその旨をお伝えください。

ドイツ語版からの翻訳『活動的生』(森一郎訳、みすず書房)もありますが、手に入りやすい『人間の条件』の文庫版を用います。

以下のURLよりお求めいただけます。

場所:Zoom
プライバシーの問題もあるため、基本的に音声のみで行います。
映像は、代表者のスライドやライヴメモに限ります。
お手元のテクスト、画面に映ったスライドやメモを見ながら、音声のみで議論するというかたちですので、安心してご参加いただけるかと思います。

進め方:
1. スライドを使って『人間の条件』について少し解説します。
 ※途中から入会される方のためにも、冒頭で簡単におさらいをします
2. 参加者のみなさまのご意見を伺いつつ、
 重要な箇所をピックアップして一段落ごとに丁寧に読んでいきます。
3. 読んだ箇所についてそれぞれ感想などをお話していただきます。
 (以降は2と3の繰り返しです)

日時:隔週土曜日 21時00分〜24時00分
初回は8/29(土)です。
ご都合が合わない日はお休みいただけます。

講読範囲:『人間の条件』「第4章 仕事」pp.223~284

参加費:1回1500円

募集人数:毎回10名程度
随時募集中です!

参加運営メンバー:

応募方法

Peatixよりご応募ください。
http://ptix.at/DIxmDr

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