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[Cultivate the future maniwa 2023]地域との共創ビジネスアイデアピッチ・イベントレポート

岡山県真庭市内の企業と地域外の企業・デザイナーが共にサステナブルな未来を生み出すビジネス創出を目指すプログラム「Cultivate the future maniwa 2023」。

実施3年目となった今回は、真庭市内企業・都市部企業含む計27社の応募からマッチングした5チームが、真庭市内の高校生インターンも交え、市内でのワークショップ(2回/計4日間)とオンラインハンズオン期間を含む4ヶ月にわたって、アイデアを創出しブラッシュアップしてきました。

今年のピッチイベントの舞台は昨年の真庭・蒜山(ひるぜん)から、東京・渋谷のSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)へ。そしてゲストには、NewsPicks Re:gion 編集長 呉琢磨 氏、株式会社スマイルズ クリエイティブ本部 PR 蓑毛萌奈美 氏、本プログラムのメンターでもあり、瀬戸内にゆかりのある創業期のスタートアップへの投資を行うVCファンドSetouchi Startups GP 共同代表 山田邦明 氏を招きました。

真庭市内企業、都市部企業、そしてインターンの高校生を含むプログラム参加者がSHIBUYA QWSに集い、それぞれが違う視点や背景を持ちながら、同じ目標に向かって取り組んだアイデアピッチの様子をお伝えします。


ビジネスアイデアピッチ

【株式会社今本屋×株式会社ミーティング】

地域一体で取り組むメンタルヘルスケアの新しい仕組み・ブランド「HOCCA」

今本屋の法華さん(中央)
ミーティングの三村さん(左)

<参加の背景>
株式会社今本屋は、就労継続支援A型事業所を運営。障がい者に対する社会のネガティブイメージを払拭し、障がい者と健常者の区別のない社会の実現、仕事の選択肢拡大、そして精神障害を持つ人々が一般就労に成功する体験を提供したいという願いから本事業に参加しました。
「物事に物語を」をテーマに本質的な価値と向き合って戦略立案からサービス開発までをプロデュースするミーティングがその想いに賛同。
障がいのある方が多様な働き方を選択できる・稼ぐことができる仕組み化を見据えたプロダクトを提案します。

<アイデア>
地域一体で取り組むメンタルヘルスケアの新しい仕組み・ブランド「HOCCA」

<アイデアの説明>
 今本屋の代表・法華(ほっか)さんの名前にちなんだ商品「HOCCA(ほっか)」は、体とこころにおいしくやさしいブランドシリーズです。現代社会で働く方々のデスクワークの合間に、「ほっ」を提供していきます。こころに必要な栄養分も摂取できるよう、管理栄養士と共同開発しています。

このおやつで実現できること

  • 販売はECサイトをメインに想定。人となるべく接触しない仕事が生まれ、障がい者の方にとって働きやすい環境を生むことができます。

  • 製造に関わる障がい者の方のストーリーや体験をきちんと届けることで、精神障がい予備軍の方に予防啓蒙のアプローチを正しくおこなえます。

  • デスクワークで忙しい人にとって、新たなメンタルヘルスケア習慣をつくります。

プレゼン資料の一部より引用

<どういう掛け合わせによって生まれたか>
今本屋
障害のある方の生産活動として企業むけのお弁当製造配達事業を行う。
ミーティング
福祉領域も含め幅広いブランディング実績をもつ。

精神障がいの方にインタビューを実施、その結果から、精神障がいのある方を「落ち込みから回復するプロ」とリフレーミング。落ち込みから回復するプロとつくるメンタルヘルスケアおやつとして、コンセプトや仕組みの構想を行いました。

<今後の展望>
プロジェクトは、クラウドファンディングによるテストマーケティングを4月に開始し、8月にはECサイトでの販売を予定しています。障がい者の働きやすい環境の創出、障害者のストーリーを社会に伝えることで予防啓蒙を図り、新たなメンタルヘルスケア習慣の確立を。さらに、地方自治体や企業との連携も視野に入れています。

<ゲストからのフィードバック>
呉)
「落ち込みから復帰するプロ」とのリフレーミングが、スカッと抜けたアイデアなのかなと思いました。メンタルヘルス危機の現場にどのようなシチュエーションで届けていくかを考えていけると良さそうです。

蓑毛)
最初のアプローチを「個人」よりも「企業」へ持っていくと、企業が従業員のためにこの商品を選んでくれてるということ自体が会社として従業員へのメッセージになり、従業員としても受け取りやすいのかなと思いました。「誰からどのように届けるか」という視点でも考えられると、ものすごく展開の可能性が広がりそうです。

山田)
「落ち込むところから回復するプロ」が、このお菓子を食べて本当に回復した事例やエピソードがあればそれらを知りたいと思いました。企業の方、精神疾患の予備軍の人、まさに今の精神疾患のど真ん中の人が、エピソードを見て「これ食べたい」となると良さそうです。

チームにコメントを送る蓑毛氏(中央)

【有限会社金田商店×サーモメーター株式会社】

地域の素材で地域の人とつくる、オリジナルブランドと
新商品「真庭やき」の開発

金田商店のチラシで作ったお揃いのハットを被っての発表でした
左からサーモメーターの山本さん・長原さん、金田商店の金田さん、高校生インターンの井上さん・香井さん

<参加の背景>
地域に根付くスーパーを営む金田商店と、デザイン・ブランディングの知見を活かした自社事業や事業開発に取り組むサーモメーターが、デザイン経営の考え方をもとにアイデア企画に取り組み、真庭の高校生と一緒にオリジナル商品を開発しました。

<アイデア>

地域の素材で地域の人とつくる、オリジナルブランドと
新商品「真庭やき」の開発

<アイデアの説明>
真庭の人や資源とコラボレーションした、三金やだからこそできるアイデアとして、インターンとしてチームに参加した真庭高校生が育てた野菜や果物から作る新感覚おやき「真庭やき」を開発しました。真庭やきは、地元で収穫された旬の野菜や果物を活用したおやきで、栄養バランスと地域の食材を重視しています。おやきは甘いものと塩辛いものの2種類を開発し、手軽に野菜の栄養を摂取できるようにしました。地域の人々の体と心の健康を支援し、高校生とシニアの交流を促進します。

プレゼン資料の一部より引用

<どういう掛け合わせによって生まれたか>
●金田商店
岡山県北部に3店舗のスーパーマーケットを展開。独自のルートで仕入れる鮮魚・精肉・青果と、店内で手作りをしている惣菜が強み。少子高齢化・激安チェーンストアの台頭・賃金や光熱費等の上昇など経営環境が脅かされるなかで、これからの地域密着型スーパーのあり方を考えたい。
●サーモメーター
温度が伝わる食卓「Think ‘hot’ table」をテーマに中目黒でのうつわや「SML」、オンラインショップ「kiguu」を営む。「美味しい」を軸に人がつながるスキームづくりに日々力を入れている。

「スーパー食いしん坊・アクティブマインド・人と人の繋がりを大切に・SDGs視点」というキーワードで結びついた両者が、デザイン経営の実践によるオリジナル商品(ブランド・サービス)を生み出します。

<今後の展望>
春には真庭高校で収穫された野菜を使用したおやきの販売を開始し、金田商店での交流イベントやECサイトの開設を計画。さらに、地域のキーパーソンや異なる世代間の協働を通じて、耕作放棄地の活用や新商品開発を進めることで、地域の経済と社会インフラの活性化を目指します。また、このプロジェクトを日本全国に展開し、地域の人々が自らの未来を創造するプラットフォームを構築する計画です。
直近では3月30日(土)に中目黒のサーモメーターの店舗で真庭やきを販売する予定で、今後も「真庭の美味しいアレコレ」プロジェクトとして継続的な商品やサービスを開発予定です。

<ゲストからのフィードバック>
山田)
食べ物の話の時の熱量が違うなと、気のせいですかね(笑)それがしっかり商品として僕らが手に取れるような形になっていてすごいと思いました。しかも中目黒のお花見の時期に販売できるというのは、なかなかないようなアクションだと思います。

蓑毛)
我々も「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」で、もったいない食材を使うことがありますが、場合によってはコストが高くなるケースがあります。通常であれば一次加工して納品していただく食材が、規格外であるがゆえに店舗スタッフによる手作業での検品、調理が発生するなどです。そのあたりも解消しながら作っていけると良さそうだなと思いました。

呉)
地場資本のスーパーの存在は、その地域の人たちが生んだ富を、地域内に循環させる上で重要な機能を果たします。地域に3店舗ある三金やさんだからこそ、地域の人たちにとってインフラ的価値を見出してもらうことに意義があると思いました。

チームにコメントを送る山田氏(右)

【まにわ日本蜜蜂企業組合 × 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科】

真庭ジビエのブランディングと価値を広めるポップアップショップ

まにわ日本蜜蜂企業組合の池田さん(左)、KMDの鈴木さん(右)

<参加の背景>
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)とまにわ日本蜜蜂企業組合のチームでは、まにわ日本蜜蜂企業組合が運営する「下湯原温泉ひまわり館」がもつコンテンツを多様な視点から紐解きます。ジビエを起点に、下処理・加工や、食べること、つながることを通した、自然との共生を考える取り組みにしていきます。

<アイデア>
真庭ジビエのブランディングと価値を広めるポップアップショップ

<アイデアの説明>
「GBA」(ジービーエー:ジビエの愛称)を使った「稼ぐ」システムを構築します。そのために「ひまわり館」を地域振興の拠点とし、資金を外から獲得し、真庭市・真庭市民への貢献を目指します。また「GBA」を誰もが聞いたことのある言葉にしていきます。

<どういう掛け合わせによって生まれたか>
●ひまわり館
温泉施設の運営を通じた地域貢献と、ペット向けのサービス提供などのコンテンツを持つ「ひまわり館」のメニューとして販売しているジビエバーガー。ハンバーガーに限らずジビエそのものの販路開拓を考え「GBA」として売っていくことを模索していました。ジビエ肉の販売を通じて地域の新たな特産品の開発を目指し、過疎化に悩む地域の活性化を図ります。
●KMD
メディアデザインの視点と学生だからこそのフットワークを活かし、ジビエ肉の消費拡大と地域振興をサポート。デザイン思考を通じて、商品のブランディングや販路開拓に新しいアプローチを提供し、地域の特性を活かしたプロジェクトの実施を支援しました。

プレゼン資料の一部より引用

<今後の展望>
初年度はポップアップイベントを通じて市場のニーズを探り、関東地方をターゲットに販路を拡大します。5年の計画のもと、地域の特産品開発、アンテナショップの設立、レストランでのメニュー採用を目指し、内需拡大と地域振興を図る予定です。
まずは、「目的を持って食す」プチ贅沢を叶えるポップアップイベントの実施を行います。美と健康・健康増進・ペットとの共生などのテーマによってターゲット・場所を変え、実店舗を持たず、ジビエの情報基地を目指します。すでに1月26日(金)に東京・四谷でポップアップイベントを実施、5万円強の売上を記録しました。

<ゲストからのフィードバック>

チームにコメントを送る呉氏(左)

蓑毛)
目的を持って食すってすごく大事だな、すごくいいい視点だと思っています。スポーツ選手の方が鹿肉を食べる理由の一つには、牛や豚だと食肉の肥育目的で家畜に投与する物質がドーピングに引っかかる可能性があるからだと聞いたことがあります。食に気を使ってるスポーツ選手が肉を選ぶシチュエーションに寄り添うのも良さそうですね。

呉)
真庭の人は鹿の食べ方にすごく詳しいとか、鹿食の文化水準が高い地域としてブランディングして「鹿を食べに行く地域としての真庭」を打ち出していけると他の地域に売り出していく上で武器になりそうです。そのために真庭の高単価なレストランやオーベルジュと一緒に取り組むのもありだと思いました。

山田)
ジビエのポップアップストア展開にあたり、主な課題と、その収益目標は何ですか?

チームからの回答)
主な課題は、ジビエに対する認識と受容度をいかに高めるかです。特に、ジビエに馴染みのない人々に対するアプローチが重要と考えています。収益目標としては、初年度は日に5万円ほどの売上規模からスタートし、3年後にブランディングが確立されたら、10万〜15万円規模へと成長させることを狙いたいです。

山田)
ポップアップで1日5万円の売上はすごいと思いました。「山賊ダイヤリー」の話が出ましたが、せっかく原作者が岡山出身なので、コラボ商品などの検討も良さそうだなと思いました。

【樋口木材 × FROM NIPPON】

生産に伝統的な技術を要する「節のないヒノキ」の価値を生かした
プロダクト「百年木器」の開発

イベント会場に展示した、百年木器のプロトタイプ
プレゼンテーションの様子
(左から樋口木材の池田さん、FROM NIPPONの境さん、サポーターの大塚さん)

<参加の背景>
真庭の美しいヒノキの価値をより伝えていくことで、節のないヒノキを育てる技術や人材を継承していきたいと考えている樋口木材と、日本がもつ伝統・技術・文化・生活を活かしたプロダクトデザインを行うFROM NIPPONのチームでは、ヒノキの価値・特性を表現した製品開発に取り組みました。

<アイデア>
生産に伝統的な技術を要する「節のないヒノキ」の価値を生かした
プロダクト「百年木器」の開発

<アイデアの説明>
基本方針として以下を考慮したプロダクトとして開発を行いました。
1.端材を使って、地域からの価値創造を目指す
2.真庭の顔(代表する)になる様な製品を作る
3.できればいろんな使い方ができるデザインだとうれしい!
4.私たちの癒しと森の再生の両方実現したい
5.100年後も続く産業化を目指す

プレゼン資料の一部より引用
FabCafeKyotoでのテストマーケティングの様子

<どういう掛け合わせによって生まれたか>
●樋口木材
真庭で製材業を営む樋口木材。ヒノキの建築用材の生産を専門とし、美しい材にするべく乾燥や原木の剪定にこだわっています。美しいヒノキの価値が薄れていることに危機感を感じ、新たな可能性を模索したいと考えています。製材業としての専門知識と、地域産業への深い理解を基に、新たな製品開発に着手しました。
●FROM NIPPON
岩手県釜石市と東京を拠点に活動するFROM NIPPONがデザインとプランニングを担当。天然のヒノキの「癒し効果」に着目し、森と人と地域が繋がる製品へと昇華させました。持続可能な森林管理とデザインの力を組み合わせ、日本の森林資源の有効活用と地域産業の振興を目指しました。デザインと地域資源の活用を融合させることで、新しい価値の創造を試みています。

<今後の展望>
テストマーケティングとして、1月24日〜27日の4日間、京都にあるFabCafe Kyotoでポップアップイベントを行い、製品に込めた思いを知ってもらう機会を設けました。今後も展示会を通じたマーケティングリサーチや、京都と真庭市での展示活動を経て、製品の市場適応性を探ります。
100年後も続くような地域産業の創出を目指し、木材に製材(商品加工)→商品販売(生活を豊かに)→森を育てる(継承する)というサイクルを実践し、『癒し』を軸にした、森と人と地域の新しい関わり方 = 『あなたが癒されれば、世界も癒される』の循環モデルの実現を目指します。
将来的には、地元真庭市をはじめとする各地で、これらの製品が地域の象徴となり、持続可能な産業へと発展していくことを目指します。

<ゲストからのフィードバック>
呉)
植木や盆栽とセットになった百年木器を見た時に「美しいなぁ」と思いました。インバウンドに限らず、海外向けの商品として練っていくところにスケールの可能性を感じます。木材の良さで一点勝負するより、使い方や中身とセットになった最終的なプロダクトが見えると、伝わる魅力がかなり違うと感じました。

山田)
(ヒノキの「トロ」の部分にあたる、という説明を受けて)「日本でしか買えない」という点を押してインバウンドで売るのがめっちゃいいんじゃないかと思いました。トロ部分を持ってること、家に置いてることがステータスになる世界は全然あるだろうなと思ったので、高価格帯でも売れる道があるんじゃないかなと思いました。

蓑毛)
『あなたが癒されれば、世界も癒される』というコンセプトがいいなと思っていて、すごく良い香りならば、サウナ施設とかの休憩所やリラックススペースとマッチするかなと思いました。
海外の方だからこそ、日本の民芸、工芸に関心があったり、日本の木材にも関心が高い可能性はあると思ったので、海外から逆輸入的なアプローチもありかなと思います。

【木工房もものたね×株式会社飛騨の森でクマは踊る】

豊かな森の姿から逆算した、人と森の関係性を考える活動の推進

もものたねの元井さん
左から真庭市平澤さん、もものたね元井さん、ヒダクマ松本さん、高校生インターンの中嶋さん・屋敷さん

<参加の背景>
真庭で木工房を営みながら未来の真庭の森を考えているもものたねと、岐阜県飛騨市で人と自然が交わりながら森の価値を捉え直す活動をしているヒダクマ(株式会社飛騨の森でクマは踊るの通称)がタッグを組み、100年後の理想の山を考えるためのパートナーシップや取り組みを考えました。

<アイデア>
豊かな森の姿から逆算した、人と森の関係性を考える活動の推進

<アイデアの説明>
人の暮らしと森林の生態系が同調する「スロウウッド」を通じて、森林資源の持続可能な利用と地元木材の価値向上を目指します。地元木材を活用した商品開発や、森林と人との関係を深める教育プログラムなどを提案。コンセプトは、人の暮らしのリズムと、森林の成長するリズムを整える活動「SLOW WOOD」(スロウウッド)。地元の森で取れた木を「地木」(じぼく)と定義し、人の暮らしと森林の生態系が豊かな関係となる仕組みを実践していきます。

プレゼン資料の一部より引用
森ツアーの様子

<どういう掛け合わせによって生まれたか>
●木工房もものたね/元井哲也「真庭の広葉樹を活用したい」
岡山県真庭市で地元産の樹々を使ったオーダーメイド家具の製造販売を行う。様々な職を経験したのち、家具屋を営む父親の背中を追い、家具屋へ。 林業が盛んな真庭だからこそ手に入る広葉樹の利活用と、広葉樹が生まれる森林の生態系の保全を考え、このプログラムに参加しました。
●ヒダクマ(株式会社飛騨の森でクマは踊る)/松本剛「元井さんの想いに応えたい」
ヒダクマは、飛騨の地域資源である広葉樹の森を活かすため、飛騨市と民間企業により生まれた官民共同事業体。おもに飛騨の広葉樹と匠の技を活かした新しい木製品の企画・開発・コー ディネートに取り組む。元井さんの熱意とロフトワークからの声掛けによりプログラムに参加しました。
●真庭市役所産業政策課/平澤洋輔「森林への社会的インパクトが重要」
地域資源を活かした「回る経済」の確立に向けて、「Cultivate the future maniwa」を企画。 自然資本の活用による地域経済の活性化に興味を持ち岡山県に移住し、気がついたら公務員に。チームのメンターとしてサポートする予定がいつの間にかメンバーの一員に。

<今後の展望>
これまで着手できなかった森林に対するアクションを考えるための組織としてNPO法人を設立します。それぞれ異なる立場、積み重ねた強みを最大限に活かしつつ、持続的に活動を続けるために、NPO法人を設立予定。それぞれの事業体(もものたね・ヒダクマ)とそれぞれの地域(真庭市・飛騨市)の営業、事業創出、関係人口の増加につながる新しい窓口としても機能させたいと考えています。

<ゲストからのフィードバック>
蓑毛)
最近読んだ書籍に「これからの時代を生き抜くための生物学入門」(五箇公一 著)というすごく面白い本があって、それを読んで私も感銘を受けたんですが、そこで書いてある生物多様性の保全に対して、私たちが今できることは「地産地消」だっていう話だったんですね。
大きなことを考えるよりも、自分たちが暮らしてる今のこの「まち」がどうあったらいいかということを、小さい子どもから大人までみんなが考えることで、そこで「地産地消」していくことが、私たちが未来に対してできることだっていう、1つの示唆がその書籍には書いてあって、今のプレゼンテーションとすごくリンクすると感じました。
本の中では「地域固有性」という言葉もあって、何が固有で他の地域と違う魅力なのかを一緒に考えていくことが、本当に100年200年続くこの真庭の里山や森に繋がっていくのかなと思いました。本当の意味で産学官が連携していって、その取り組みが他の地域に真似されるようなことを期待できるんじゃないかなと思って個人的にはワクワクしました。

呉)
全国で森や林業について課題意識を持ってる方々は多く、アプローチも多様です。例えば、木を切らない林業をしている会社があったり、微生物を増やすことで森の生物多様性の回復に取り組む方々がいたりします。行政の取り組みとしては、自治体の所有する山林のカーボンクレジットをNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)化して売るというビジネスにつなげている事例もあり、これまで管理コストを払っていた森が利益を生むようになれば、関わり方も変わるはずです。真庭の活動も全国の他の活動とも連携していけたらより面白そうだと感じました。

山田)
今回のプレゼンでみなさんの記憶に残るようなワード「スロウウッド」や「地木」など、NPOに直接関わらなくてもそのワードを使って活動される方が今後出てくるだろうなと思いました。
高校生のおふたりが森林にあまり興味がない状態でチームにジョインして、一緒に活動している中で、興味がある状態に変化していっていることが、まさに人の営みが森林に向く矢印のひとつなのかなと感じました。この活動をやっていけばもう勝手に人から森林に向けた矢印ができるんだろうなと感じてすごいワクワクしました。

メンター・ゲストからのコメント

高校生インターンメンター:Moon Japan 藤田岳氏
Moon Japanの藤田です。我々はアントレプレナーシップ精神を育成するプログラムを全国で高校生や企業向けに実施しています。
普段は学生としての生活を送る高校生たちが、このプロジェクトを通じて新しい視点を持ち、社会人としても意見を交わせるようになったと感じています。
最初はコミュニケーションに苦労しましたが、5ヶ月間の交流を経て、彼らが自信を持って意見を表現できるように変化しました。この経験は、彼らの将来に大きな自信となるでしょう。私たちも、「あの時このプロジェクトに参加して良かった」と思えるようなプログラム作りを目指しています。メンターとして、彼らの成長をサポートできたことを光栄に思い、感謝しています。

Moon Japan 藤田氏(中央)

イベントゲスト:呉 琢磨氏
全てがおもしろい、意味のあるプレゼンテーションをたくさん聞けました。
特に今回僕が呼ばれた時に最初に一番興味を持ったのは、「地域 × 地域」という共創です。「地域 × 都会」の共創や「地域 × 大企業」の共創はわりと語られるテーマですが、地域と地域がフラットに、対等に組んでいくという今回の座組みは他の地域にとっても希望になるようなチャレンジじゃないかと思いました。
その成果が今回見られたのは、個人的にも本当に良かったなと思ってます。
また、真庭の高校生がこのプロジェクトに参加することは、彼らの未来の進路と地域への貢献に対する長期投資として、今回のプログラムでの関係性が生きてくると思います。彼らがいずれ真庭に戻り、地元で働くかもしれないし、東京や他の地域で働きながらも、将来真庭との連携を考えるかもしれません。高校生の皆さんは、「いつか真庭で事業ができるチャンスを得たぞ」と思ってもらえるといいかなと思いました。

イベントゲスト:蓑毛 萌奈美氏
自分の子供時代を振り返ると「自分が住んでいるまち」のことを考えること機会ってあまりなかったなと思うんです。
地元の企業の方と一緒に、これだけ地に足がついた取り組みを高校生も一緒に行うことで、こういう取り組みをやっている会社がそもそもあったんだということを知る機会になったり、先ほど「東京に行きたくて参加しました」という話もありましたが、そういうピュアな動機をきっかけにこのプロジェクトにジョインしたことで、得られたものは東京に来ること以上の価値だったと思います。
そして、そういったことを我々企業側もご一緒できる機会があるのはすごくありがたいなと思いました。今の時代を生きている高校生や、中学生、小学生が何を感じるか、どういう視点で世の中を見ているのかって、とてもかけがえのない情報で、私たちがその視点で今の世の中を見ることは難しので、非常に対等なパートナーとしてご一緒できる機会を作られているのは、すばらしいなと思いました。
私自身も今回のプロジェクトで真庭を知るきっかけにもなりましたし、岡山県に行ったら、今度は海の方だけじゃなくて真庭にも足を運びたいなと思いました。これをご縁にみなさんと繋がれたらいいなと思います。

イベントゲスト・メンター 山田 邦明氏・藤田 圭一郎氏
山田)
せっかくこの期間一緒に伴走していた藤田さんが会場にいるので、最後の締めの感想を藤田さんにしてもらえたらなと思います。
藤田)
え、めちゃめちゃスイッチオフにしてたんで、何も用意してなかったんですけど…(笑)去年は僕だけで伴走していて、そこからの違いで喋るとすると、今回、NPO法人が立ち上がるだとか、すでにプロダクトがある、プロトタイプがあるとか、売上も上がっている、など目に見える成果が生まれてきていて、すごいなと思いました。
去年も高校生がインターンとして一応関わっていたのですが、なかなかしっかりとチームの中に入っていけてなくて、今年はしっかりと高校生が東京まで来て発表して、大人と遜色ないような喋りをしている。すごいプロジェクトとして進化したなと思ってます。
大人が高校生と働くというか、コラボする意味をより真剣に考えていただく機会になったらいいなと、個人的に思っています。僕も大学1年生ぐらいの年代と一緒に事業をすることがあり、彼らも本当に大人と遜色ないどころか、大人よりも優秀なこともあります。
真庭市内には大学がないので高校を卒業すると市外に出ていってしまう場合も多いのですが、是非、社員同等に高校生を巻き込んで事業に生かすような関わり方が増えていくきっかけにもなると良いと思いました。

メンター藤田氏(右)

ピッチイベントのアーカイブURL

ピッチイベントの詳しい様子については以下のYouTubeリンクからご確認ください。今後も、各チームは実装に向けて動いていく予定です。
事業内容に興味がある、協力したい、出資したいというお問い合わせや、本プログラムについてのお問い合わせはこちらよりお待ちしております。
cultivate.maniwa.pj@loftwork.com

3年目となるプログラムを振り返って

ピッチイベントの後、プログラムメンバーは会場となったSHIBUYA QWSを案内してもらう見学ツアー(https://shibuya-qws.com/event/kengakutour)にも参加しました。

SHIBUYA QWSのコミュニケーター(白衣)に案内してもらうプログラムメンバー
ピッチイベント後、ゲストから個別でフィードバックをもらうチームメンバーの様子
SHIBUYA QWS入居プロジェクトメンバーと話す、プログラムインターンの高校生

「渋谷スクランブルスクエア」15階に位置する共創施設からは、渋谷周辺の名だたる建築物を眺めることができ、とても刺激的な人やアイデアと出会える期待が感じられる場所でした。
実際にそこで働く方々も個性が強く、プロジェクト参加者(特に高校生たちが)も刺激をもらっており、ワクワクしながら話に耳を傾けていたのが印象的でした。
冒頭にも記した通り、ピッチイベントの場所が昨年の真庭から東京の渋谷という、刺激しかない場所で実施されたことに計り知れない効果があったのではないでしょうか。

ピッチイベント前日、ロフトワークオフィスにて

ピッチイベント前日には、本プログラムを運営をしているロフトワークのオフィスを訪問し、それぞれ準備に時間を充てました。
そして、参加者全員で(文字通り)同じ釜を食べた食事会でも、リラックスした表情で交流していたみなさんの姿が印象的でした。

プログラムメンバー全員で手巻き寿司を囲み、翌日イベントへの機運を高めました

ゲストのコメントからもわかるように(プロジェクト2年目から参加している筆者から見ても)、3年目の今年のプロジェクトは「完成度」が格段に上がっていると感じました。
それは、プロジェクトのひとつの到達点でもあったような気がしています。プロジェクトに関わるメンバー全てが挑戦することで見えた景色だったのではないでしょうか。まさに3年間の集大成を見た気がします。

真庭市 平澤さん

来年度もこのプロジェクトは続くと真庭市役所の平澤さんは言っています。
これまで以上のプログラムにするには相当な馬力が必要かと思いますが、このメンバーなら、また新しい景色を見せてくれるのではないでしょうか。
引き続き、共創そして挑戦の土壌が耕されていくことを期待しています。


「Cultivate the future maniwa 2023」
「GREENableな真庭の未来を創り出す。共創の土壌を耕す。」をコンセプトに、真庭市内の事業者と都心部の企業が共に、SDGsの視点から真庭の未来に繋がるイノベーション創出を目指すプログラム。

▼プログラム WEBページ
https://lab.org/consortium/cultivate-the-future-maniwa
主催:岡山県真庭市
運営:株式会社ロフトワーク

▼原稿執筆
真庭市地域おこし協力隊/ライター 酒井悠

岡山県真庭市在住のライター。東京生まれ東京育ち。プロモーションと地方創生の仕事をする中で、縁あって2022年5月より岡山県真庭市の地域おこし協力隊として働く。
前職で、地域の観光分野の課題解決となるサービスを提供しており、全国の様々な自治体の実態を知り、企画やライティングといった分野で案件に参加。
その中で、そこに住んでいる「人」や関係する「人」が大事であると気付かされ、真庭市では、外から来た人間だからこその視点を活かし、ライターとして真庭の人の個性を理解しマッチングさせていければと考えている。


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