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プロジェクトマネジメント入門 ②   -リスクマネジメント-

弊社執行役員の細澤新太郎が、公開経営指導協会さまの会報誌にて連載させて頂いているプロジェクトマネジメント入門に関して、第2弾リスクマネジメントについて掲載させて頂きます

第1弾をまだお読みで無い方はぜひ、こちらをご覧ください!

はじめに
コロナ対策、SDGs、DX、カーボンニュートラル、など、ビジネスにおいて時世に沿った課題/検討観点は、絶えず発生しており、これらへの対応/解決を目指す取り組み(プロジェクト)も多く発足しています。「プロジェクト」とは「特定の目的を達成するための、臨時組織による、有期性の活動」と定義されています。企業活動においては、中長期的な観点にて、「課題の解決」や「目指すべき状態の達成」のための取り組みと言い換えられます。
タイトルとなっている「プロジェクトマネジメント」は、いかにプロジェクトを正常着地させるか(Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を計画内におさめるか)を主眼とした、プロジェクトの管理技法です。第2回の今回は「リスクマネジメント」に関して掘り下げていきます。
 
リスクマネジメント
リスクマネジメントでは、プロジェクト進行上発生する可能性のある不確定要素の管理を担います。特にマイナスの影響が考えられる不確定要素を洗い出し、対応検討、状況把握などを行います。大きく、リスクの洗い出し、対応検討を行う「計画」のフェーズと、リスクの状況確認、状況に応じた対応方法の更新を検討する「実行」のフェーズがあります。
 
〇計画
リスクマネジメントの「計画」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・プロジェクトにおけるリスク(不確定要素)を洗い出す
・リスクに対して対応優先度をつける(影響の大きさ×発生確率):予防措置を行う優先順を検討する。顕在化した際の影響度と、発生する可能性の組み合わせで検討するのが一般的(影響が大きく、発生する可能性が高いリスクから対応する)。

・リスクを顕在化させないための対応方針を決める:どのようにして防ぐか、を検討する。
・リスクが顕在化した場合の対応方針を決める:マイナスリスクの対応方法としては、リスクを排除する「回避」、影響を第三者などに移転する「転嫁」(保険など)、発生確率や影響度を減らす「軽減」、積極的な対応を行わない「受容」の4つがある。対応コスト(工数や費用)が最もかかるのが「回避」、最もかからないのが「受容」。
・リスクチェックプロセスを確立する:リスクの状況確認を、いつ、だれが、どのように実施するのかを検討する。
 
特に、リスクの洗い出しにおいては、「きっと発生しないだろう」という楽観的な発想ではなく、「少なからず発生する可能性はある」という悲観的発想で、広く洗い出す必要があります。また、より多角的/網羅的な観点からの洗い出しのため、複数メンバーで検討することをおすすめします。
 
〇実行
リスクマネジメントの実行プロセスでは、次のような作業を実施します。
・計画に基づいて適切なタイミングでリスクに対応する
・リスクの状況(影響の大きさ、発生確率)に変化が無いか確認する
・新たなリスクが発生していないか確認する ※新規リスクについては対応を検討する
 
プロジェクトは生ものなので、影響度及び発生確率は、日々変動します。全社方針が変わって、売上UPよりもコスト削減が第一優先になった、取引先の担当者が変わって、今まで通りに交渉がうまくできなくなったなど。定期的に影響度及び発生確率を見直し、今最も対応すべきリスクは何か、新たなリスクが発生していないか、に目を光らせる必要があります
 
【column:リスクマネジメント小話「そんなの今考えてもしょうがない?」】
夏、オリンピックが開催されるから、その期間は都心部でネットワーク配線工事はできなくなるらしい……あるプロジェクトの計画で、リスクポイントとして実際に挙がったことです。
作業ができなければ、当然プロジェクトに大きな影響が出ます。これが現実になったとき、いち早く的確な対応ができるよう、そのリスクについて毎月チェックも行われています。オリンピックのような大イベント、災害、政変や法律改正などが、プロジェクトを初めさまざまな分野に影響を及ぼすことは想像に難くありませんが、ほかにも調達先からの納品遅れ、人員補充不足……リスクとなり得ることは多くあります。
にもかかわらず計画段階でリスクの洗い出しの必要性を説いても、“今、目の前にないリスク”は軽くあしらわれがち。「そんなこと、今考えてもしょうがないでしょ」と相手にされないことも少なくありません。
それでも、リスクを洗い出しておくことは大切です。発生したら、どんな影響があるか。どう対応するか。発生させないためにはどうするか…等々考えておくことです。また、洗い出したリスクを定期的に見直すことも必要です。
中には、想定していてもどうにもならないリスク、例えば、手を打つにはコストがかかりすぎるなど腹を括るしかないケースもあります。発生したら大変なことに変わりはないものの、意識しておくだけでも、課題に直面したときの気持ちは違います。洗い出しておいたうえで腹を括る、つまり受容を決めたのだ、というプロセスが大事なのです。