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プロジェクトマネジメント入門 ①   -スケジュールマネジメント-

弊社執行役員の細澤新太郎が、公開経営指導協会さまの会報誌にてプロジェクトマネジメント入門に関する連載を開始しました。
以下はその第1弾、スケジュールマネジメントについて掲載させて頂きます

はじめに

コロナ対策、SDGs、DX、カーボンニュートラルなど、ビジネスにおいて時世に沿った課題/検討観点は、絶えず発生しており、これらへの対応/解決を目指す取り組み(プロジェクト)も多く発足しています。
「プロジェクト」とは「特定の目的を達成するための、臨時組織による、有期性の活動」と定義されています。企業活動においては、中長期的な観点にて、「課題の解決」や「目指すべき状態の達成」のための取り組みと言い換えられます。
タイトルとなっている「プロジェクトマネジメント」は、いかにプロジェクトを正常着地させるか〔Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を計画内に収めるか〕を主眼とした、プロジェクトの管理技法です。複数回にわたり、プロジェクトマネジメント協会(PMI)が発行する『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド』(PMBOK)をベースとし、重要な箇所を抜粋してお伝えしていきます。

※ PMBOK は、時代に合わせて更新がなされており、2022 年3 月時点では「第7 版」が最新版となります。本連載では、検討領域としてイメージが
しやすく構造化されている「第6 版」をベースに、抜粋して構成致しました。第6 版におけるプロジェクトマネジメントの全体像、各領域の解説
やポイント、活用に際してのドキュメントサンプルに関しては、拙著『初めてのプロジェクトマネジメント』をご参照いただけますと幸いです。

スケジュールマネジメント

PMBOKにおけるスケジュールマネジメントとは、プロジェクトの進捗管理を担うエリアで、スケジュールの作成や管理を行います。
大きくスケジュールを立てる「計画」のフェーズと、立てたスケジュールを
もとに進捗管理をする「実行」のフェーズがあります。

〇計画
スケジュールマネジメントの計画プロセスでは、次のような作業を実施します。

・ 範囲を明確にし、詳細なアクティビティ(タスク)を洗い出す。
・各アクティビティの順序性を整理する。
・ 各アクティビティに必要な所要期間を見積もる。
・ 上記をもとに各アクティビティの開始日終了日を設定し、スケジュールを作成する。

計画通りにいかなかった際に振り替えると、タスクの洗い出しが甘い、先行すべきタスク(関係各所への依頼など)が後回しになっていた、タスクの所要時間/ 期間の見立てが甘い、バッファを積んでいなかった、
などの理由が浮かび上がってきます。
何がまずかったのか、を明確にすることで、次回以降より妥当なスケジュール作成が可能です。
また、スケジュールは進捗を社内で共有するツールともなります。よって、「マイルストーン(重要判断ポイントや報告タイミング)」が設定されてるか、は重要ですし、目的に応じてスケジュールの粒度〔日次/ 週
次/ 月次〕を使い分ける必要があります(全体を俯瞰するための月次スケジュール、作業を管理するための日次スケジュールなど)。

〇実行
どんな作業にも、遅延はつきものです。
さまざまな原因から、スケジュールの変更を余儀なくされることは決して珍しくありません。だからこそスケジュールマネジメントにおいては、プロジェクトの実行を通じて、監視・コントロールのプロセスが重要になります。
計画と実績の管理としては「成果が計画通りか」と共に、「投入工数(人数やコスト)が計画通りか」の観点も必要です。期限に間に合わせるために人を投入する、という判断は「計画期間内での遂行」という結果と共に「想定以上のコスト」という結果を伴います。管理手法としてはEVM などが用いられます。
スケジュールの進捗をチェックする際には、目的に応じて進捗率と達成率を使い分けることが効果的です。
・ 進捗率:ある活動の完了状態に対して、どこまで進んでいるかを示す指標(0 〜100%)
・ 達成率:計画で設定された現時点の目標数値に対して、どこまで達成できたかを示す指標(0%〜無限大)
例) 全体で10 個ある作業において、本日時点で4 個終わっている予定が、実績としては3 個まで完了の場合

⇒ 進捗率:30%(3 個/10個)、達成率:75%(3 個/4個)

つまり、全体としてどの程度の作業量があり、今日どこまで終わる予定で、実際どうだったのか、という見方です。
基本的には達成率が100%以上であれば問題ありません。達成率100%未満でも、進捗率がまだ低い場合は、「まだリカバリーの余地があるか」など、アラート温度感の判断などに活用できます。

column:スケジュールマネジメント失敗談

プロジェクト外スケジュールにご用心 !
倉庫の入出庫を管理するシステムの入替えをしたある企業の話。年末商戦が始まる前に入替えをしてしまおうということで、ほぼ予定通りに入替えは終わったのですが……。
従業員が新しいシステムに慣れない上に、システムにもいくつかの問題が発生、というタイミングで年末商戦に突入。入出庫のピーク時に出荷が大幅に停滞し、モノが運びきれずに現場は大混乱。損害賠償の話も出る大惨事に。
スケジュール作成においては、必要なアクティビティを洗い出し、それぞれの所要時間を検討して……と、プロジェクト内のスケジュールは詳細に検討されます。しかし、全社スケジュールや他のプロジェクト、世間の流れなどプロジェクトの制約となることもいろいろで、それらを考慮に入れておかないと、後々トラブルとなることもあります。
特に、増員などの予算取りと決算時期との兼ね合い、冒頭の例のような業務繁忙期の対応など影響が大きいと思われる部分は注意が必要です。スケジュールを作成する際には、関係企業、関係部署、関係する人たちにしっかりと確認をとるなど、十分な注意が必要です。