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プロジェクトマネジメント入門⑤「スコープマネジメント」

弊社執行役員の細澤新太郎が、公開経営指導協会さまの会報誌にて連載させて頂いているプロジェクトマネジメント入門に関して、第5弾スコープマネジメントについて掲載させて頂きます

はじめに
コロナ対策、SDGs、DX、カーボンニュートラル、など、ビジネスにおいて時世に沿った課題/検討観点は、絶えず発生しており、これらへの対応/解決を目指す取り組み(プロジェクト)も多く発足しています。「プロジェクト」とは「特定の目的を達成するための、臨時組織による、有期性の活動」と定義されています。企業活動においては、中長期的な観点にて、「課題の解決」や「目指すべき状態の達成」のための取り組みと言い換えられます。
タイトルとなっている「プロジェクトマネジメント」は、いかにプロジェクトを正常着地させるか(Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を計画内におさめるか)を主眼とした、プロジェクトの管理技法です。第5回の今回は「スコープマネジメント」に関して掘り下げていきます。

スコープマネジメント
「スコープ」とは「範囲」という意味で、「スコープマネジメント」とは、簡単に言えばプロジェクトの作業範囲を管理することです。プロジェクトに対して、顧客からの要望は多岐にわたります。限られた期間や予算内ですべてを実現するのは不可能ですし、中には目的に合致していないものもあります。これらを整理し、必要な作業は漏らさず、不要な作業は行わないようにするのがスコープマネジメントを行う目的です。
大きく、「計画」フェーズと「実行」フェーズに分割され、「計画」フェーズでは、ニーズを明確にし、期間/予算などに応じて作業範囲を定義/合意し、「実行」フェーズでは、状況(顧客ニーズや制約条件)の変化やプロジェクト進行状況に応じて作業範囲の妥当性検証/調整を行います。

〇計画
スコープマネジメントの「計画」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・プロジェクトの「目的」を明確にする (Why)
・関係者のニーズ・要求事項をまとめた「達成したい状態」を明確にする(What:tobe)
・達成したい状態を実現するための方法/作るものを明確にする(How:tobe)
・予算/期間を鑑みて「できる範囲」を明確にし、合意する(How:canbe)
 
最も重要なポイントが「目的の明確化」です。プロジェクト開始のタイミングで定義されているものではありますが、今一度明確にすることで、「できる範囲」の取捨選択をする際の判断基準となります。「何のためにこのプロジェクトを始めたのか」を明確にし、そこに効く活動をスコープに含む必要があります。
また、スコープ検討においては、先々の作業ボリュームの大きさがちらつき、最初から「できる範囲」に基づいたスコープ設定を行いがちになります。まずは目的に応じた「達成したい状態」「それを実現する方法」を検討したうえで(tobe検討)、制約(予算/期間)に応じて範囲を限定する(canbe検討)、のステップを踏みましょう。これにより、目的に沿った網羅的な検討がなされ、スコープの取捨選択における代替案や、次ステップの洗い出しにもつながります。

〇実行
スコープマネジメントの「実行」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・状況に応じてスコープの変更が必要かを見定め、調整する
 - 前提条件 / 制約条件の変化 ※顧客ニーズの変化、マーケット/競合動向、法令対応など
 - プロジェクト進捗状況
 - リスク発生による影響 など
 
プロジェクトが実行段階に入ると、計画時点では見えなかったスコープの漏れやスコープの追加が発生するケースがあります。しかし闇雲に全ての要求に応えていくと、予算や納期へ影響が出てしまい、プロジェクトが頓挫する事態に発展しかねません。一方、計画時点のスコープに固執しすぎることも問題です。重要なのは「変える」「変えない」ではなく、スコープをコントロールしてプロジェクトの目的を達成することです。QCD の優先順位に従って適切にスコープ調整するようにしましょう。
 
【column:「ここまでやります」の「ここ」はどこ?】
「えーっ。それ、やってくれるんじゃなかったの? このままじゃ、業務が回んないよぉ。どうしてくれるの」
業務改善、システム開発などの現場にてこんな事態を招くのは、計画プロセスにおけるスコープマネジメントが十分でなかったことが原因です。計画段階で、「やること」と「やらないこと」の範囲を明確に定義しておかないと、後にトラブルに発展することが多くあります。
「ここまではやる」とちゃんと定義したつもりでも、抽象的な表現になっていることがあります。お互いに納得していたはずなのに、実は「ここ」の捉え方が、それぞれ違っていた、ということは珍しくありません。
例えば、システム入替えのプロジェクト。「ユーザーが使う画面は修正するが、管理者画面は対象外」「画面操作マニュアルは作るけれど、業務オペレーションマニュアルは作らない」「教育用の資料は作成するが、ユーザーへの教育は対応しない」「画面の修正はするが、出力される帳票の修正は対象外」等々。スコープの軸を明確にした上で、それぞれの目盛りをしっかり定義し認識を合わせておくことが、とても重要です。

【プロフィール】
◆名前:細澤新太郎
◆役職:執行役員
◆出身地:静岡県
◆趣味:ロードバイク、漫画、段ボール工作
◆座右の銘:「楽しむ」
◆社内部活動:ボードゲーム部
※ボードゲーム部は、ボードゲームが好きなメンバー 約 15 名が所属する社内部活動です。 社内のレクレーションルームに集まって、 ボードゲームを楽しんでします。 ボードゲームは論理力が試される場面があり、 その人の性格がよくわかります。
【略歴】 大学卒業後、倉庫管理システム(WMS)パッケージベンダーにて、海外事例も含め様々な案件に従事。2008 年、株式会社キューブアンドカンパニー入社。製造業、流通小売業、飲食、運輸業などの事業領域にて、組織戦略、現場改善、システム導入PM/PMOに従事。
【著書】『初めてのプロジェクトマネジメント 〜最短理解で最大成果!』

◆会社概要
企業名:株式会社キューブアンドカンパニー
本社所在地:東京都中央区東日本橋 2-7-1 FRONTIER 東日本橋 7F
代表者:代表取締役 荒内慎孝斗
創業:2007 年 3 月 12 日
事業内容:戦略コンサルティング/IT コンサルティング/業務コンサルティング/パブ リック・アフェアーズ支援/人材教育サービス/通信サービス/WEB サイト運営 等 ホームページ: https://cube-company.com/company/