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プロジェクトマネジメント入門⑥「コストマネジメント」

弊社執行役員の細澤新太郎が、公開経営指導協会さまの会報誌にて連載させて頂いているプロジェクトマネジメント入門に関して、第6弾コストマネジメントについて掲載させて頂きます。

はじめに
コロナ対策、SDGs、DX、カーボンニュートラル、など、ビジネスにおいて時世に沿った課題/検討観点は、絶えず発生しており、これらへの対応/解決を目指す取り組み(プロジェクト)も多く発足しています。「プロジェクト」とは「特定の目的を達成するための、臨時組織による、有期性の活動」と定義されています。企業活動においては、中長期的な観点にて、「課題の解決」や「目指すべき状態の達成」のための取り組みと言い換えられます。
タイトルとなっている「プロジェクトマネジメント」は、いかにプロジェクトを正常着地させるか(Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を計画内におさめるか)を主眼とした、プロジェクトの管理技法です。第6回の今回は「コストマネジメント」に関して掘り下げていきます。

 
コストマネジメント
決められた予算内でプロジェクトを完了させること、これがコストマネジメントの目的です。スケジュールマネジメントでは、進捗状況の把握や所要時間の見積もり、スケジュール調整など、「時間」の管理を行いましたが、コストマネジメントで管理するのは文字通り、「コスト」つまり、予算や見積もり、報酬、費用その他、プロジェクトに関わるお金が対象となります。
大きく、「計画」フェーズと「実行」フェーズに分割され、「計画」フェーズでは、コストの管理方法/観点の検討、見積りによる予算の確定を行い、「実行」フェーズでは、予実状況の確認/対応と必要に応じた予算の修正を行います。

 
〇計画
コストマネジメントの「計画」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・コストの管理方法/観点を決める
※精密さ・正確さのレベル/報告形式/報告対象/プロセス など
・コストを見積もって予算を確定させる
 
見積りにおいては、過去類似案件からの試算、タスクの積み上げなどいくつかアプローチがあります。コストドライバー(コストの増減につながる要因)を明確にしたうえで、妥当なコスト見積りとなるよう留意が必要です。
また、プロジェクトの進行に伴ってプロジェクトの予算も変更が発生する可能性があります。したがって、コストモニタリングをする際には、当初予算や変更後予算など、どの予算に対しての予実差異をチェックするか明確にする必要があります。

 
〇実行
コストマネジメントの「実行」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・コストの予実を確認する
・超過している(しそうな)場合は原因を究明し、リカバリに努める
・予算の変更が必要な場合には、変更調整を行う
 
コストマネジメントにおいては、単純に金額の予実を管理するだけではなく、金額の増減を引き起こした要因(主にコストドライバー)を分析・対処することで、未来のコストのブレを抑制することが重要です。
また、コストの予実把握には「EVM(Earned Value Management)」などの手法があります。EVMでは、作業工程や成果物などを全てコスト換算し、それらに対する 「予算(計画)」「実績(成果をコスト換算したもの)」 「実際に費消したコスト」 を比較します。これにより、進捗状況やコスト状況を把握し、本来投入すべきコストの検討や先々起こり得る課題を察知します。

※PV(Planned Value):予算、EV(Earned Value):成果のコスト換算(出来高)、AC(Actual Cost):実投入コスト

 
【column:コストの計画は立てて終わり、ではない!】
コスト計画の作成は、プロジェクトがうまくいかないことを想定して検討する必要があります。予算に余裕がないと、予定外のことが起きたとき、身動きがとれなくなってしまいます。必要な増員ができなくなったり、ツールが購入できなくなったりしたら、プロジェクトの目的達成はおぼつかなくなります。
仮に、1年間1億円の予算のプロジェクトを実施することになったとします。予算の使い道の計画をしっかり作ったとしても、実行段階で、現在の予算の消化状況をちゃんと把握していないことが意外に多いものです。
たとえ3,000万円のバッファがあったとしても、「この機能もつけよう」「あれもやろう」などと、つい無邪気にプラスしていって、いつのまにか、その3,000万円も消えていた……などということがなきにしもあらず。
こんなことのないように、例えば月に一度、予算の消化状況やコストのチェックを行う必要があります。これを確実に行うためには、計画に対する予実管理のしくみを計画時点でしっかり作っておくことがとても重要です。
また急な増員などでコストの承認は得たものの、経営陣から「〇月に1,000万円はわかったけれど、キャッシュフローはどうなってるの?」などと聞かれて、言葉に詰まるなんてこともないように。コスト管理とともに、実際の出入金もきちんと管理する必要があります。