リリース(アップデート)には必ず意味がある
アプリを自分でつくったことがある人(開発者)は当たり前であることが、アプリ開発を委託する人(非開発者)には当たり前でないことがたくさんあります。その逆も然りです。
この現実を前向きに受け止められる人だけがグロースするアプリを創造できます。この話は、決して開発者と非開発者のコンフリクトを書きたいわけではありません、そのどちらも必要であることを知ってもらいたいから書きます。
アプリのリリースやアップデートとは、開発者目線では、ソースコードの完パケ(ビルド)をappstoreやgoogleplayなどの陳列棚に出荷する事となります。自分たちの生み出した大切な子供をたくさんの人に愛されますようにと願いを込めて、ドキドキしながらダウンロードを待つわけです。
ところが、クライアント(アプリ開発を委託する人)からすると、想像していたアプリと違う、イメージと違う、バグだらけ、など様々な理由で、意味のないリリースやアップデートをする羽目になることがあります。なぜ、このような不幸が起きるのでしょうか?その理由を説明する前に、アップデートの基本4パターンをおさらいします。
新機能追加
小規模改善
デバック
非機能追加
アプリとはアセット(資産価値)であります、アップデートを繰り返し巨額の開発費を投じて資産を形成し価値を高めていきます。
新規機能追加はアプリのグロースやサービスに貢献、寄与するために行われるのが原則です。インスタは新機能のストーリーズを追加開発したことで大きくユーザー数を伸ばしました、つまりこの機能開発で資産評価は驚くほど跳ね上がり、資産性評価は◎ということになります。一方でfacebookはアンドロイド版で一瞬ECボタンを機能追加しましたが、すぐになくなりました、サービスもしくは開発に問題があったのか詳細はわからないのですが、上層部が資産価値が下がると意思決定したのだと推測できます。
小規模改善とはサービスの細かいチューニングです、ボタンの位置やサイズ、またはラベリングなどをABテストしたり、分かりにくい、誤解されやすいUIなどを改修します。こちらは、主にコンバージョンや離脱防止で評価をします。
デバックは、何よりも最優先されるアップデートで、通常は4段階ぐらいに仕分けをします、S:サービスの存続に関わる最も緊急性の高いバグ、A:実害が発生するバグ、B:実害が発生しないが緊急性の高いバグ、C:実害が発生せず緊急性が低いバグといった具合です。災害時の医者のトリアージをイメージするとわかりやすいと思います。手当が必要な患者に対して医者が不足している状況では、一人でも多くの命を救うために、現場で冷静に合理的な判断を下さなければならないのです。アプリのリリース時には、このような状況が発生する確率が上がります、特に大規模、複雑なリリースやアップデートは特に注意が必要です、通常はUAT(User Acceptance Test)と言われる受入テストを十分に行い、ベータ版で様子を伺いながら、小さく細かくリリースすることで回避します。
最後に非機能追加ですが、クライアントはこれが最も理解しにくいアップデートだと思います、具体的には表示速度やセキュリティ強化、データ容量追加などです。facebookはグロースの過程で負荷分散やキャッシュシステムの投資をどの機能追加よりも最優先で行ってきています、アプリのユーザーは1秒も待ってくれないことを知っていたし、それを実現することでユーザーの獲得と定着を明確に狙っていたのです。そのコストは莫大にかかるのですが、通常のクライアント(非開発者)はここにコストを使うことに意識が向きませんし、費用対効果が計算できないので、手が出せないのです。
さて、意味のないアップデートはありえないはずなのに、どうしてそうなるのか?に話を戻します。
シンプルに考えてください。
次のアップデートで
「誰が幸せになるの」
「どんな良い事が起きるの」
これだけを考えてください。
開発者も非開発者もこのことだけに集中してください、開発現場では、鉄の三角形と呼ばれる天使と悪魔のトライアングルがあります。「納期」「予算」「仕様」です。グロースに成功しているアプリは天使のトライアングル、失敗に終わるアプリは悪魔のトライアングルです。決してこのトライアングルに負けないでください。もう一度言います、シンプルに考えてください。
次のアップデートで
「誰が幸せになるの」
「どんな良い事が起きるの」
これだけを考えてください。納期や予算や仕様が優先されるなんて事はありえないんです。このことさえ皆が理解できれば、意味のないアップデートがなくなり、皆がハッピーになるリリースとアップデートが行われるはずです。
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