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日常にコンテンツデザインはある

こんにちは。デザイナーの青木由季です。
わたしは、企業サイトのコンテンツを制作したり、会社案内のエディトリアルデザインをしたり、時には高校講師としてデザインの授業を設計したりと、いろいろな場でコンテンツをデザインしています。
今回は、コンテンツのデザインという行為は仕事のプロセスの中だけでなく、ふだんの生活の中のさまざまなシーンで行っているのではないか? という気づきについて書いていきたいと思います。

そもそもコンテンツデザインとは?

コンテンツとは「顧客に向けて情報を編集し、価値ある状態に仕立てたもの」だと、わたしは考えています。アウトプットのかたちはWebサイトや冊子、動画やイベントなどさまざまです。
企業側としては顧客に伝えたいことはいろいろあるわけですが、企業側と顧客側、双方の思いをつなぐことでコンテンツはつくられます。
例えば企業側が「これを知ってほしい!」と思ったときに、顧客側にとっても「これ知りたかった〜」と思ってもらえるようにするために、コンテンツというものに仕立てる。
その際には、制作の方針として「誰に/何を/どのように」伝えるのかを明らかにしてから取り組みます。
……と書くとやや小難しいようですが、こうした相手を思ってコンテンツをデザインする行為は、実は多くの人が日常生活の中でやっている気がするんです。

母が家族のためにつくる料理

例えば、わたしの母が「家族においしく食べてほしい」と作ってくれた料理の数々。
家族の好みや、子の成長のための栄養といった相手(家族)にとってのポイント。 一方で調理のしやすさ、後片付けのしやすさといった自分(母)にとってのポイント。 このお互いのポイントを叶える献立は何かというのを、母は日々考えながら調理してくれていたのでしょう。

そして、わたしの高校時代に母が持たせてくれたお弁当。
前述したお互いの視点でのポイントに加え、お弁当箱という決まった容れ物にいかに効率よく具材を入れるか。作ってから食べるまで時間が空くことを考慮し、いかに保存性を保てるようにするか。 そうした諸条件をふまえた上で、食べ盛りだが体型も気になる10代の娘に最適な献立を考えてくれていたのだと思います。

さらに誕生日やクリスマスといったイベントの場面。
この日だけの特別な献立に加え、部屋の装飾やプレゼントといった気持ちを盛り上げるアイテムで、楽しくおめでたい雰囲気をつくりだしてくれました。

……これってコンテンツデザインじゃなかろうか。

喜ぶ顔を想像して選ぶ贈りもの

わたし自身のコンテンツデザインに関する原体験は、高校時代のことです。友人の誕生日に、彼女が好きだった漫画のキャラクターとロックバンドのモチーフをミックスし、一つのストーリーとして構成したイラストをプレゼント。 棚の上などに飾ることを想定して、イラストの色みに合わせて塗装したフォトフレームに入れて渡しました。
これがものすごく喜んでもらえ、社会人になってからの住まいでも飾ってくれたほどでした。

コンテンツを企画するときは、特定の相手を思い浮かべ、その人に届ける気持ちで行うとよいと聞くことがあります。 もちろん当時はそんなことは知りませんでしたが、友人の喜ぶ顔を想像しながらつくったプレゼントは、本当に「届いた」のです。
「相手に届く」ってこういうことなんだな、しかもそれって自分も相手もこんなにハッピーになるんだなと実感した体験でした。

……これってコンテンツデザインじゃなかろうか。

届ける場を想像して選ぶ贈りもの

最近では弟夫婦の引越し祝いに送ったブーケ。
お祝いのブーケといえば、明るい色彩でゴージャスなもの? 果たしてそうだろうか。
弟夫婦の醸し出す雰囲気を思い浮かべる。 新婚のふたりが最初に住むであろう住まいのスケールや色彩を想像する。 引越ししたときの嬉しい気持ちが続くよう、その季節を感じつつなるべく長く楽しめるブーケがいいのではないかな…。
いろいろと思いを巡らせた結果、ナチュラルな雰囲気の花に小ぶりな実がアクセントで入った、可憐な華やかさのあるブーケを選びました。

後日受け取った弟からは 「ブラウン系の内装なので、とても合っていると思います。妻も喜んでます」 というLINEが。
ブーケを抱えた奥さまの画像と、部屋にブーケを飾った画像も添えられており、ブーケと部屋、そしてブーケとこのふたりの感じは、なかなかいいマッチングでした。

……これってコンテンツデザインじゃなかろうか。


あの人にこれを伝えたい、届けたいと思うことがコンテンツデザインのはじまりだと思います。
それは決して仕事においての話だけではなく、ささやかな日常生活の中にも、たぶんたくさんあるのです。