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部分的なロックダウン?:マルタでの実際の生活

 マルタも部分的な「ロックダウン」の段階にあると思う。ロックダウンというと物々しく聞こえるのだけれども、実際のところ、どういう生活なのかはあまり日本では知られていない。今、マルタでは65歳以上と慢性疾患のある人などは原則として外出してはいけないが、例えばスーパーへの買い物は認められている。それ以外の人々は不要不急な外出は控えるよう勧告されている。

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 スーパーや食料品店は営業しているし、棚が空っぽというのも目撃はまだしていない。スーパーによっては入口で強制的に手を消毒、簡易的な検温を実施している。もしここで熱が高ければ、入れさせてもらえない(はず)。また、購入するつもりのない商品には触らないよう注意書きがある。レジでも距離をとるように注意書きがあり、床に線が引かれている。会計時もなるべくカードで支払うよう依頼しているところもある。ファストフード店でも、飛沫感染防止のために透明の衝立を設けているところもある。

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 飲食業に目を向けると、バーやカフェは営業禁止である。レストランはテイクアウェイとデリバリーのみ営業可能で、着席での飲食は禁止で、違反すると3,000ユーロの罰金。そのため、元々、テイクアウェイやデリバリーに対応していたレストランはすぐに切り替えることができたが、例えばいわゆるハイエンド向けの店はそうはいかない。

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 現在、営業しているのは、思いつくなかでは、薬局、スーパー、商店、パン屋、八百屋、書店、キオスク、スナックバー、銀行、眼鏡屋、電話通信業者くらいだろうか。オフィスもテレワークにしているところがかなり増えたのではないかと思う。これら営業している店舗でも、入場制限を設けているところがほとんどである。薬局ももちろん入場制限があり、場所によってはそもそも入場できないところもある。外で待つ場合ももちろん2メートル以上の距離をあけて列を作る。密集している場合は警察が介入する。

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 公共交通機関であるバスも一応、通常通りに運行しているが、必ず着席しないといけない。ヴァレッタといくつかのターミナルではバス車内の噴霧消毒を実施しているようだ。時刻表は乱れている(元々、乱れがちだが)。時間帯によっては通常は満員となるバスも今はガラガラである。

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 ロックダウンで起きていることというのは、いわゆる不要不急と指定された店は営業禁止で、必要不可欠なもののみ営業が許可されている。かなり不便ではあるし、経済にも大打撃だが、なんとか生活はしていけている。最低限、食事や食料品の確保、医薬品へのアクセス、生活インフラへのアクセスなどは維持されているといえるだろう。物流は止まっていないので、例えば保存食の買い占めに走る必要はない。どちらかというと、いかに室内での生活を充実させるかにかかっている。もちろん世の中にはいろんなひとがいるのだけれど、なるべく室内に留まろうと思っても精神的に難しい部分がある。ゆえに、もしロックダウンをするなら、経済的援助のみならず、長期戦になると精神面でのケア体制の確立はセットでないといけないと思う。(DV対策も必要)

 天気が良いとどこかへみんなでお出掛けしたくなるものだが、そんなことをしたら余計に規制がきつくなるのは目に見えている。実際、先週末は天気がよかったので、集団でピクニックに出掛けたひとたちもいたため、内務大臣と公衆衛生局長の怒りを買い、4人以上の集団には罰金が課されることとなった。

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 とまれ、とりあえず最低限の生活は維持できているが、かなり不便である。こうした事態を避けられるならそのほうがいいと思う。経済的にも大打撃なのは自明のこととして、何よりも今までの生活ができないことは頭ではわかっていても、実際に体験すると、なかなか不便に感じるのである。普段、不便さの醍醐味を楽しむみたいなことを私自身曰うことはあるが、そういうのとはまた違う。より手足を縛られているようなものとでも表現しようか。カフェやレストラン、バーなどでいつも顔をあわせるひとたち、いつも見かける怪しい美容用品を売りつけるお兄さん、どうやって生計を立てているかわからない露天商、井戸端会議に精を出すじじたち、店は開けているけど商売よりも雑談のほうが長そうなひとたち。今はみんないない。街の彩は色褪せた。



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