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1_3代表的なハラスメントの種類は?


社会的にハラスメントへの意識が高まってきており、ハラスメントの種類も増えてきています。「相手を傷つけること」という根本的な原因は同じであり、どのハラスメントであっても気を付けるべき点は変わりません。しかし、場面や相手によって人の言動の受け取られ方は異なります。「何気ない一言がハラスメントに該当してしまった」ということも十分に考えられます。

今回は、ハラスメントにはどんな種類があり、どのような場面で起こり得るのか、見ていきたいと思います。


1.パワーハラスメント(パワハラ)

 パワーハラスメント(パワハラ)は日本でも有名なハラスメントの一種です。パワハラは、言葉から「暴力によるハラスメント」と思われがちですが、それだけではありません。

パワハラは職場で行われる下記の3つの要件を全て満たすものをいいます。


①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

③労働者の就業環境が害されるもの


 簡単に言えば、「上席者からのハラスメント」と捉えても良いかと思います。

 従来では暴力によるパワハラが多い印象ですが、最近は言葉による精神的なパワハラが多くなってきているように感じます。

 パワハラを行ってしまった方にヒアリングをすると

「部下の成長を願っていたから」

「仕事において必要だったから」

「自身も同じように育てられてきたから」

「大事な点なのでつい熱が入ってしまった」

「相手が聞き取りやすいように大声で伝えた」

など、「相手のことを考えた行動であった」といった発言が多い傾向が見られます。

 しかし、自身にとっては相手のことを想っての行動であったとしても、受け取る側はそうとも限りません。どれだけ素晴らしい内容であっても言動を間違えれば、受け入れられるどころか拒絶されることもあり得ます。

 今一度、自身の言動が相手にどのように捉えられているか、振り返ってみてください。


2.モラルハラスメント(モラハラ)

 モラルハラスメント(モラハラ)は道徳徳的な嫌がらせや精神的な虐待を指す言葉です。モラハラは、「モラル(道徳)」と「ハラスメント(嫌がらせ)」を組み合わせた言葉で、主に人間関係や職場などでの心理的な嫌がらせや精神的な虐待を指します。

モラハラは、相手を意図的に傷つけ、精神的な苦痛を与えることを目的とする行動を指します。これには、無視、侮辱、嘲笑、嫌悪感の表明などが含まれます。

パワハラとの違いは、パワハラが優越的な関係(上司と部下、集団と個人など)を背景に行われるものに対して、優越的な関係を背景とはしていないもの(従業員間同士など)で行われる嫌がらせのことをモラハラと呼びます。例えば同僚間で、人格を否定されるような侮辱・無視・悪口・プライベートの過度な詮索や監視などが行われた場合は、モラハラに該当します。

モラハラは、従業員同士で口裏を合わせ集団でのハラスメントに発展する場合もあります。また複数人同士での対立も起こり得るため、モラハラが行われる企業では、部署間でのコミュニケーションに問題を抱える場合もあります。

モラハラは特に、小さな事柄から始まることが多いです。そのため、周囲でハラスメントに近い言動を見聞きしたら、すぐに対策をとることをお勧めします。


3.セクシャルハラスメント(セクハラ)

セクシャルハラスメント(セクハラ)という言葉は、1980年代に使われてから広く日本で知られているハラスメントの一種です。痴漢やストーカーなどの性犯罪の延長として考えられることもあります。

職場においては、労働者の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益となったり、就業環境が害されることをセクハラといいます。


セクハラにおける代表的な行為は

➀視線(性的な個所を凝視する、など)

②言動(性的な個所を揶揄する発言をする、など)

③接触(肩にわざと触れるなど不用意な接触を行う、など

です。


 これらの行動は異性同士だけでなく同性同士でも起こります。セクハラの有効な対策は、冗談であっても職場においては性的な言動を取らない様に心がけることです。

 しかしながら、コミュニケーションを取るためにボディーランゲージや接触など、身体表現でのやり取りで相手に物事を伝えることを大切にしている方もいます。

 その場合であっても、過度な接触になっていないか、不用意な文言をつけていないか、自身を律する必要があります。

  

4.マタニティハラスメント(マタハラ)

 マタニティハラスメント(マタハラ)は、セクハラの一種として見られることもありますが、昨今は働き方の多様化により、別種として考えられることも多くなっています。

マタハラとは妊娠・出産したこと、育児休業・介護休業等の利用に対する嫌がらせの言動や制度利用を阻害、もしくは就労環境を害する嫌がらせのことです。類義語としてパタニティハラスメント、ケアハラスメントがあります。

 育児休業・介護休業に対する意識は従来と比べて、制度の整備が徐々に進んできています。しかしながら、制度に対する理解が不十分な方達も依然として多くいらっしゃいます。

 マタハラを行ってしまった方にヒアリングをすると以下のような答えを良くいただきます。

「時短勤務は分かるが、その他の待遇が通常勤務の人達と変わらないのは不公平に思っていた」

「上席者が常に職場にいない状況では、業務を進めることができない」

「育児は、パートナーに任せれば良いのでは?自分が子育てをしていた時はそうしていた」

「ひとりめはまだしもふたりめ・3人めの子どもとなると、負荷のかかるこちらの身にもなってくれと思う」

これらは、制度の必要性は理解しているが制度利用することを納得できない方、自身の経験から制度利用は必要ないと考える方など、人によって様々な感情を持たれていることが多いです。

 ヒアリングからそれぞれが抱える問題点を解きほぐしていくと、そもそも制度を取得することではなく、別の要因で認めることができなかった、など違うことでハラスメント行為を行ってしまっていたケースもあります。

 全てのハラスメントに言えることではありますが、マタハラについては特に何が要因となってしまっているのか、見極めていき適切な対策を取ることが重要です。



まとめ

 いかがでしょうか。今回紹介したハラスメントは代表的なものであり、他にも様々な種類が存在します。IT技術や社会的制度の変化によって、今後も種類は増え続けていくと思われます。知らなかった、では済まないのがハラスメントです。研修で定期的な知識のアップデート、最新情報を取得していただくことをお勧めします。

文責:善福大(ぜんぷく・ひろし) 中小企業診断士、奈良コンサルティング代表

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