国税庁が回答!米国のビットコインETFを譲渡した場合は分離課税
暗号資産の所得に対する分離課税の議論
2024年11月末現在、今後、国内で暗号資産ETFを組成することが認められるのか、暗号資産ETFの税金が分離課税に該当するのであれば現物の暗号資産の税金も分離課税にすべきではないかという点について、議論の先行きが見えない状態です。
そんな中、筆者(泉)が、日本の居住者の方から委任を受けて、国税庁に照会していた「米国ビットコインETFを譲渡した場合の所得は分離課税になるか」という案件について、2024年12月5日に、(国税局を経由して)国税庁から、「分離課税の対象となる」という口頭回答をいただきました(文書回答の要件を満たさないものの、口頭回答をしていただいたものです)。
日本に住んでいる個人の方が、米国のビットコインETFを購入し、売却した場合の所得が分離課税の対象として認められる場合には、国内でビットコインを購入する場合と比較して納税者に有利となりますし、現物の暗号資産に投資した場合との中立性や公平性も問題になります。日本における暗号資産の分離課税の議論にも影響があるかもしれません。
そこで、お話できる範囲で国税庁の口頭回答の要旨をご紹介いたます。
ただし、本記事は照会に当たって採用した細かい前提事実、具体的事実関係、検討すべき法律構成等をすべて記載するものではありませんし、米国の暗号資産ETF銘柄は色々ありますので、個々の課税関係を判断する際には税の専門家等にご相談ください。
細かい議論や論点は、以下の記事をご覧ください。
(12.7追記)SNS等において、分離課税の税制改正の文脈で国税庁を名指しして批判するコメント等を見かけますが、そもそも国税庁は立法機関ではなく、国会が作った法律を執行する機関ですので、国税庁に批判を向けることが適切なのかをよく検討していただいた方がよいと思います。もちろん、法律の執行、税制改正要望や国会答弁に関連して、国税庁が立法に関係する発言や行動をすることもあるでしょう。
また、本件の照会内容は、税法的には、一般の方々が考えているよりもはるかに難しい論点が含まれています。そのため、想定より早く回答を出していただいた国税庁に対しては、個人的には感謝しています。
米国ビットコインETFの分離課税該当性に関する国税庁の回答要旨
国税庁の結論:適用がある。
国税庁の回答要旨:
本件持分は信託の持分であることを前提
法人課税信託に該当するのであればその受益権である本件持分は株式又は出資とみなされて、分離課税の対象となる
法人課税信託該当性については、①法人税法2条29号の2で定める信託のいずれか1つにでも該当し、かつ、②退職年金等信託・公益信託等・集団投資信託に該当しないかどうかを判断することになる
上記①について、関係法令の内容や規定の趣旨を考慮しつつ、本信託に係る事実関係を検討すると、本信託は「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当する
上記②について、本信託が退職年金等信託・公益信託等に該当しないことは明らかであるし、「信託会社」の意義等に照らしてみると、本信託は合同運用信託のいずれにも該当しない
以上から、本件持分は、法人課税信託に該当し、本件持分は株式又は出資とみなされることになり、米国の証券取引所に上場しているため、その譲渡による所得は分離課税の対象となる
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