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米国ビットコインETFを売却した場合の所得には分離課税が適用されるか?(ビットコインETFの税金/所得税関係)

この記事では、日本の居住者が、米国のビットコインETF(直物)を米国の市場で売却した場合の所得について、分離課税の適用があるか否かを検討する際に、解決すべきいくつかの問題点・疑問点があることを指摘します。

次の点にご留意ください。

  • 前提知識を書いていると膨大な量になるので、一般向けの内容にはなっていません

  • 筆者(泉)の知識不足や誤解により、内容に誤りがある可能性も否めません。

  • 問題点や疑問点のみを端的に取り上げているので、法律の細かい適用関係の説明や根拠条文の表記は省略している場合があります関係する法律の適用関係に関する情報は、斎藤創=水嶋優「米国の暗号資産ETFの日本での取り扱いについて(第1.2稿)」(2024.2.28)をご参照ください

  • 取りあげている内容、問題点や疑問点について、ご意見・ご助言等があればプロフィール欄の連絡先を通じて、是非お願いいたします

  • この記事の内容は、基本的に2024年7月に所属する大学から発行される紀要(東洋法学)に掲載される予定の拙稿をベースにしています。詳しい検討をご覧になりたい方は、この紀要に掲載される論文をご確認ください。


1 ビットコインETFと分離課税

2024年1月10日に、SECは、米国で初めて[1]、ビットコインの現物を運用対象とするETF(上場投資信託)を承認しました。同日において、ビットコインETF11銘柄が承認されています。

図表:米国ビットコインETF比較表(目論見書等に基づいて筆者作成)

ETFは、投資家にとって管理等が楽な分、手数料が発生します(しばらくは、スポンサーが手数料を放棄している場合もあります)。各銘柄の手数料の相違はこちら

ビットコインETFの詳細な仕組みを説明すると長くなるので省略しますが、図表の中のスポンサーがデラウェア州法定信託を設立する手配、信託の受益権である持分(Share)を上場する責任を負っています。

各銘柄について、基本的には、次のような共通点があります。

  • 運用対象は現物のビットコインのみ。ただし、Hashdex Bitcoin ETFはファンド資金の95%以上が現物のビットコイン、5%がビットコインの先物契約等

  • 受託者はデラウェア州法定信託法に従って設立されたDelaware Trust Company。ただし、Hashdex Bitcoin ETF はデラウェア州のWilmington Trust Company、iShares Bitcoin TrustはCalifornia corporationの BlackRock Fund Advisors

  • 信託は米国連邦所得税法上、グランタートラスト(ただし、Hashdex Bitcoin ETFはパートナーシップ)として取り扱われる可能性が高いという見解

  • SECに登録されたブローカーディーラーなどの指定参加者のみが、(例えば1万口の持分で構成されている)バスケットを購入・償還可能(発行市場)

  • 一般の投資家はブローカーを通じて、市場で持分を売買(流通市場)

自由民主党デジタル社会推進本部web3 プロジェクトチーム(座長:平将明衆院議員)の「web3 ホワイトペーパー2024―新たなテクノロジーが社会基盤となる時代へ―」(この後、政務調査会の審査を経て、自民党の政策になりる予定)は、「個人が保有する暗号資産に対する所得課税の見直し」の項目において、次のような問題が存在することを指摘しています。

・  日本の個人の暗号資産取引に関する課税上の取扱いでは、暗号資産取引から生じた所得は雑所得に該当するとして最高税率(所得税と住民税を合わせて)55%で課税されるなど、諸外国に比べて厳しい扱いとなっており、その結果、納税者の海外流出が増加しているとの指摘がある。
・ この点に関連して、現在、暗号資産の現物を原資産としたETFが海外で導入されており、仮に当該ETFが国内で流通したり、国内でも暗号資産を原資産としたETFが組成されたりした場合で、これらの取引から生じた所得が分離課税の対象とされるのであれば、暗号資産の現物取引が上記のとおり総合課税の対象にされることと税制上不均衡が生じることになる。その結果、国内における暗号資産の流動性が著しく低下し、web3ビジネスの発展を阻害するおそれがある。
・   そのような事態を回避するためにも、暗号資産を原資産としたETFについて分離課税の対象とするのであれば、暗号資産取引から生じた所得も同様に分離課税の対象とすべき必要性はなお高いものと考えられる。


暗号資産に関わる分離課税の議論に関して、①外国の暗号資産現物ETFが国内で流通した場合と、②国内でも暗号資産を原資産としたETFが組成された場合という2つのルートを挙げて、これらの取引から生じた所得が分離課税の対象とされる可能性があることを前提に、議論を展開しています。

このうち、②のルートについて、「web3ホワイトペーパー2024」でも述べているとおり、現時点では、暗号資産は投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」といいます)において、投資信託の投資対象資産である特定資産に含まれておらず、金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(2024.4)において非特定資産等に対する投資信託の組成及び販売が制限されているため、暗号資産を投資対象とするETFを含む投資信託は存在していません。
①のルートについても、外国ですでに上場されている暗号資産現物ETFを国内で販売することは、現時点では、難しいようです。

(参考)
ETF:米SECがビットコイン現物ETFの承認!?

Bitcoin ETFってなんだ?

それでは、暗号資産現物ETFが分離課税の議論への影響を与える可能性として、第3のルートはどうなっているのでしょうか?

つまり、日本の居住者が、米国のビットコインETF(持分・Share)を米国の市場で購入し、譲渡した場合の所得について、日本において分離課税の適用があるかという問題です。この点については、既に、分離課税の適用の可能性を肯定する見解が示されています[2]。

そこでは、様々な留保は付されているものの、ビットコインETFの譲渡に係る所得が、法人課税信託に係る規定の適用を経て、租税特別措置法37条の11の上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例(以下「本件特例」といいます)の適用の可能性があるとされています。


2 分離課税への道に転がっている問題点・疑問点

(1)法人課税信託とは

上記のとおり、ビットコインETFには信託(デラウェア州法定信託)が利用されています。したがって、信託税制が適用されることは予想されますが、同税制の概要の説明は省略します。

日本の居住者が、ビットコインETFの持分を米国の市場で売却して得た所得に対して、分離課税が適用されるか否かは、上記信託が日本の法人税法上の法人課税信託に該当するかどうかに左右されます。

法人課税信託に該当すると、信託の受益権は株式とみなされます。それが上場されていれば、上場株式として、分離課税の適用があるということです(所法6の3四)。分離課税を適用を検討する際に必要な「上場株式等」、「外国金融商品取引所」の定義等については省略しますが、次の点だけ記しておきます。

NYSE Arcaは、金融商品取引法施行令2条の12の3第4号ロに規定する指定外国金融商品取引所に該当すると思われるので、外国金融商品取引所に該当すると考えております。

平成22年金融庁告示41号(最終改正:平成29年12月20日付金融庁告示第47号)

上記の告示の中に「ニューヨークストックエクスチェンジ」があるため、過去のパブコメへの回答を参考としても、ここには「NYSE Arca」も入るだろうと推測しています。過去のパブコメでも類似の質問があり、これに対して金融庁が回答していたため、念のために、金融庁企業開示課に問合わせをしましたが、「お示しできるものが何もないため、回答できない。」という回答でした。
参考:過去のパブコメにおける金融庁の回答は以下のとおり

参考:措置法通達37の11-1(外国金融商品市場)

ビットコインETFの信託は、取引所で売買可能な信託の未分割受益権を表章する持分(Share)を継続的に発行します。持分は、信託の受益権の均等かつ比例的に分割された単位を示しています。
よって、法人課税信託に該当すれば、持分の譲渡による所得に対して、分離課税の適用があるということです。

そうすると、法人課税信託の定義を確認する必要があります。そこで、検討すべき点だけを簡単にとりあげると、次の要件をすべて満たすと、法人課税信託に該当します(法人税法2条29号の2)。

①信託であること
②集団投資信託に該当しないこと
③次のいずれかに該当すること
 ア 受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託
 イ 投信法2条3項の投資信託

上記③については、上記ア及びイのほか、例えば、委託者が法人で、かつ、自己信託等で存続期間が20年を超えるものとされていたことという信託の類型に該当するかを検討する余地もあります。

仮に委託者=スポンサー(いずれもLLC)と考えるならば、日本の税法上の「法人」とされて、委託者が法人であるという要件を満たすことになりそうです。

後は、自己信託等で存続期間が20年を超えるものかという要件ですが、以下の点からすれば、存続期間が20年を超えるものとされていたとは必ずしもいえないため、この要件を満たさないのではないか(つまり、この要件を満たして、法人課税信託に該当するとはされない)と考えています。ただし、本信託は永久存続もありうるので、評価が分かれそうです。

・ビットコインETFでは、本信託の終了期間が定まっていないこと(なお、デラウェア州法定信託法3808条(a)では、準拠証書に別段の定めがあるものを除き、信託は永久に存続するとされており、信託契約においても、同契約又は法律で定められている場合を除き、本信託は永久に存続することとされている・・・このように法定信託は法人に類似する側面を有するので、税法上、法人として取り扱われることに合理的な面もあると思います)
・ビットコインETFでは、スポンサーは、その単独の裁量で、いかなる理由でも、いかなる時点においても、本信託を解散できること

(2)①「信託であること」

外国の信託又は信託に類似する制度が、日本の租税法上の信託、信託法上の信託に該当するといえるのかという問題です。最近の参考裁決として、吉村浩一郎「外国法に基づく法律関係について日本税法上の『信託』該当性を肯定し、外国子会社合算税制に基づく課税処分が取り消された事例」NO&T Client Aleret2024年4月9日号参照。

委託者、受益者、受託者、信託会社などの概念についても同様の問題が起きます。

ここでは、デラウェア州の法定信託が日本法上の信託に該当することを前提として考察していますが、さらに検討する余地は残っています。

なお、投信法上の外国投資信託との関係において、次の見解が参考になります。

米国デラウェア州の法定信託は、投資法人に類するガバナンス組織を有しているものの、信託として組成されていることなどから伝統的に外国投資信託として取り扱われている(本柳祐介「外国ETF・外国ETFJDRの上場に関する法的論点と実務」商事法務2034号39頁参照)

投資信託の実務では、準拠法に従えば、当該事業体の構成員が資産を共同所有し、受託者に相当する者や財産管理者が資産を所有していないと考えられるものであっても、「外国において外国の法令に基づいて設定された信託」に該当するものとして取り扱われており、投信法上は、外国の契約型の資産運用スキームは広く外国投資信託に該当しうるとして、解釈されている(伊藤剛志「外国投資信託に係る課税上の問題」中里実ほか編著『クロスボーダー取引課税のフロンティア』(有斐閣、2014)194~196頁)

なお、財務省のホームページでは、振替国債等の利子の課税の特例(措法5の2)の適用要件を満たす適格外国証券投資信託に、信託ではないFonds commun de placement が含まれることが明らかにされています。同特例の外国投資信託も投信法2条24項の外国投資信託です。

この点は、長島・大野・常松法律事務所 編『アドバンス金融商品取引法〔第3版〕』(商事法務、2019)19頁、平川雄士「借用概念論に関係する国際的企業租税実務上の諸問題」金子宏編『租税法の発展』(有斐閣、2010)361頁の脚注(24)参照。

(3)③イ「投信法2条3項の投資信託であること」

投信法2条3項の投資信託は同法に基づき設定されるものに限定されているので、デラウェア州法定信託法に基づいて設立されたビットコインETFの信託は、これには該当しません。

(4)②「集団投資信託に該当しないこと」

集団投資信託の定義は次のとおりです(法法2二十九、法令14の3)。

➀ 合同運用信託
② 投信法2条3項に規定する投資信託(次に掲げるものに限る)及び外国投資信託
・ 投信法2条4項に規定する証券投資信託
・ 国内公募投資信託
③ 特定受益証券発行信託

次に示す理由から、ビットコインETFの信託は、①合同運用信託に該当しません。

合同運用信託とは、「信託会社(兼営法1条1項に規定する信託業務を営む同項に規定する金融機関を含む)が引き受けた金銭信託で、共同しない多数の委託者の信託財産を合同して運用するもの」です。ただし、投信法2条2項の委託者非指図型投資信託及びこれに類する外国投資信託、委託者が実質的に多数でない信託は合同運用信託から除かれています(法法2二十六、法令14の2)。

以下、検討と疑問点を整理します。

第1に、「信託会社」該当性について、ビットコインETFの信託の受託者は、信託会社なのか、という疑問があります。

まず、ここでいう信託会社という概念を日本の信託業法の概念と整合的に理解するならば、規制当局等から信託業(信託の引受けを行う営業)を営むことの免許又は登録を受けていることが必要となりそうです。

このような理解が正しいならば、次の点から、ビットコインETFの信託の受託者はこの意味での信託会社には該当しないのではないかと考えます。

・受託者は、デラウェア州に主たる事業所を有する受託者を少なくとも1人有するというデラウェア州法定信託法3807条(a)の要件を満たすことを唯一の目的として、デラウェア州における本信託の受託者として任命されている。カストディアンは別にいるので、受託者は積極的な役割を与えられていない。

・信託契約により、受託者の義務は、①デラウェア州で本信託に送達された法的手続きを受理すること、②デラウェア州法定信託法3811条に基づいてデラウェア州の受託者がデラウェア州の州務長官に提出することが義務付けられている証明書に署名すること、③信託契約において受託者に特に割り当てられているその他の義務に限定される受託者の責任についても相当程度軽減されている

・デラウェア州法5編9章901条は、銀行業務又は信託会社(trust company)の業務は、デラウェア州において当該業務を行うことを認可する証書(corporate charter)がない限り、デラウェア州において行ってはならないとしているところ、本信託の関係資料には受託者がそのような認可を受けているという記載は見当たらない。

ただし、法人法上の信託会社の概念、日本の信託会社による限定責任信託、デラウェア州の信託会社に対する規制について、さらに検討する余地はあるのかなと考えています。

デラウェア州の法定信託の受託者の責任は信託法上の限定責任信託と共通しているという指摘及び信託業法との関係等については、有吉尚哉「証券化のビークルとしてのデラウェア州のスタリュトリー・トラストの特性」クレジット研究39号(2007)86頁、94頁の脚注(4)・(12)が参考になります。

なお、法人税法上の信託会社には信託業法上の外国信託会社が含まれると解されますが(信託業法88)、外国信託会社とは総理大臣の免許又は登録を受けた外国信託業者のことですから(信託業2⑥)、ビットコインETFの信託の受託者はこれに該当しません。

第2に、多数の委託者」該当性について、ビットコインETFの信託の目論見書や信託契約書では「settlor」、「trustor」、「donor」、「creator」という語は使用されておらず、米国連邦所得税法上のグランタートラストの課税関係の文脈で「grantor」という語が使われているにすぎません。

そうすると、委託者のいない信託宣言なのか、ビジネストラストなので主たる登場人物は受託者と委託者兼受益者なのかとも思いましたが(銘柄によっては、信託宣言という語も使われている)、法人税法上の委託者=信託法上の委託者=信託の設定者と解するならば、ビットコインETFではスポンサー(1社)が委託者になる又は委託者に相当する当事者と考えてもよいのではないかと思います。

「委託者に相当する当事者」という考え方は、日本証券業協会「米国デラウェア州法に基づくビジネス・トラストについて―営業ルール照会制度に基づく照会及び回答―」証券業報582号34頁の記述を参考にしたものです(デラウェア州法定信託は昔はビジネス・トラストという名称でした)。

実際に信託に金銭を拠出する指定参加者や最初にバスケットを購入するシードキャピタル投資家を委託者(兼受益者)と解したとしても、多数の委託者とはいえません。持分を購入する一般の投資家は多数いますが、市場で持分を購入しただけですから委託者ではないでしょう。

よって、「多数の委託者」該当性は否定されます。

次に示す理由から、ビットコインETFの信託は、②外国投資信託に該当しません。

この場合の、外国投資信託とは、投信法2条24項に規定する外国投資信託です。投信法上の外国投資信託とは外国において外国の法令に基づいて設定された信託で、投信法上の投資信託(委託者指図型投資信託及び委託者非指図型投資信託)に類するものです(法法2二十六括弧書、二十九ロ、所法2①十二の二、措法2①五、投信法2①③㉔)。

この場合の「投資信託に類するもの」の要件については、必ずしも明確な指針はなく、投信法上の投資信託に類するものといえるかどうかが問われます。その判断要素に関する見解を調べてみたところ、種々の事情を総合勘案すべきという見解が多いように思いますが、運用対象が主として特定資産に対するものであるかという判断要素を重視する見解が有力なのではないかと考えます。

そうすると、ビットコインETFは特定資産に該当しない暗号資産のみに投資するので、「投資信託に類するもの」に当たらず、よって、外国投資信託に該当しません(投信法令3)。

特定資産を定める投信法施行令3条の「商品」が掲げられていなかった時代のものですが、大阪国税局審理インフォメーション127号(課税第一情報第66号)(H20.9.29)(TAINSで入手可能)は「上場された金現物連動型ETF『SPDRゴールド・シェア』 の特定口座の対象となる株式の適否について」と題する照会に対する回答の中で、次のとおり述べています。

「金現物連動型ETFを発行する信託の信託財産は金であり、金は特定資産に掲げられていないことから、当該信託は『投資信託に類するもの』に該当しないこととなり、同法第2条第22項に規定する外国投資信託に該当しないこととなる。外国投資信託に該当しない照会の金現物連動型ETFを発行する信託は、外国の受益証券発行信託に該当することとなる(金商法2①十七)。」

以上より、国税当局もビットコインETFの信託は投信法上の投資信託に該当せず、投資信託に類するものとしての外国投資信託にも該当しないと判断することが予想されます。

ただし、次の留意を示しておきます。
投信法における外国投資信託に関する解釈や判断が、租税法上の外国投資信託に関する解釈や判断に大きな影響を与えます。これは、租税法上の外国投資信託の定義規定は、外国投資信託の定義を定めた投信法の条文を直接的に引用しているため、その意味内容について租税法固有の解釈論を展開する余地がないと考えられているからです。結局、投信法の解釈(場合によっては、金融庁の解釈)に依存せざるをえない状況になっています。
そして、「投資信託に類するもの」であるかを判断する際の決定的な考慮要素は何であるかという点について投信法領域で議論が固まっていないという不安定な状態が、租税法領域において(ともすれば)無限定に引き継がれるという構図になっています。
このような問題の存在は、以前から論者によって指摘されていました(Yuko Miyazaki, Classification Issues Regarding Foreign Trusts Under Japan’s Tax Law and Overhaul of the Trust Law, Vol. 61-9/10 Bulletin for International Taxation 418, 425 (2007)、増井良啓「信託と国際課税」日税研論集62号234頁など)。

次に示す理由から、ビットコインETFの信託は、③特定受益証券発行信託に該当しません。

特定受益証券発行信託の対象となるのは、信託法185条3項の受益証券発行信託に限定されています(法法2二十九ハ)(ただし、租税特別措置法8条の3は、特定受益証券発行信託が国外で発行されうることは認めているようです)。
よって、デラウェア州法定信託法により設定されるビットコインETFの信託はこれに該当しません。

(5)③ア「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」

「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」該当性について、どのようなものに定められているかまでは言及されていませんが、少なくとも目論見書又は信託契約書にその旨の定めがあればこの要件を満たすことになることを前提として考察します。


この場合の「証券」「財産法上の権利義務に関する記載のされた紙片」(大森政輔ほか編『法令用語辞典〔第11次改訂版〕』(学陽書房、2023)752頁)と解するならば、ビットコインETFは少なくとも通常は、受益権を表示する紙の証明書を発行するものではないので、これに該当しないという見解がありえます。

ビットコインETFの持分に関しては、基本的には、次のような仕組みであるといえます。

・持分は、記名式で(in registered form)発行
・名義書換代理人が、証書式(in certificated form)の持分の名義書換のために登録及び書換代理人として任命されている
・持分に係る受益権は、DTC(証券保管振替制度の中央預託機関であるDepository Trust Company)の参加者及び/又は口座保有者を通じて振替式で(in book-entry form)保有される
・持分に対して個々の証券は発行されない
・持分は1通以上の大券(global certificates)で表彰され、名義書換代理人により DTCに預託され、DTCの施設で保管され、DTC のノミニーとしてCede & Co.名義で登録される

色々定められていて、場合によっては紙の証書の発行もあるのかなと思わせる記述もあるのですが、結局、持分に係る受益権について振替式を採用し、それはデジタルで記録していると推察することが正しいのであれば、紙の証書の発行はないということになるでしょう。紙まで発行したら権利関係が複雑になってしまいますし、そもそも上場して転々流通する持分を今さら紙で発行することはしないのではないかとも思います。

ただし、銘柄によっては、スポンサーが独自の裁量で持分を証明するものを発行させることができるようなことも記載されている場合があります。ですから、事実認定や契約解釈等の領域で、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」該当性の議論を続ける余地はあるかもしれません

また、法令の解釈論の領域においても、個人的には、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」には、紙片を発行せずに振替式を利用する定めのある外国信託も含まれるとする解釈を検討する余地があると考えます。

長くなるので、理由は簡単?に示しておきます。

上記の法令用語辞典は、外国為替及び外国貿易法6条1項11号において「『証券』とは、券面が発行されていると否とを問わず、公債、社債、株式、出資の持分、公債又は株式に関する権利を与える証書、債券、国庫証券、抵当証券、利潤証券、利札、配当金受領証、利札引換券その他これらに類する証券又は証書として政令で定めるものをいう」とされていることも併記している。

「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」については、他の法人税法の条文と異なり、紙片が発行されているものを前提とした金融商品取引法2条1項や信託法185条3項を引用していない。(持分は金商法上の有価証券に表示されるべき権利に該当する余地があり(ただし、紙片を発行することが想定されていないので「表示されるべき」なのか?)、この場合に、税法上の有価証券の規定の適用があるのかという論点もあります。法人課税信託に該当すると、そもそも株式とみなされることとの関係も気になります)

「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」が法人課税信託信託に含められた趣旨として、
①信託法(ただし、外国信託を含めるために上記のとおり信託法185条3項を引用しなかった?)上の受益証券発行信託の受益者は割合的単位に細分化された受益権を有し、その受益権は転々流通することが想定されるため、受益者が信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなすこと(つまり、受益者等課税信託に該当すること・・・ビットコインETFが法人課税信託に該当しない場合、これに該当する可能性が高くなり、パススルーとなる=信託段階の収益・費用は受益者である持分所有者にそのまま帰属するとみなされます。所法13①)は、実態上適当でなく、実務上も計算が困難になる、
②受託者段階で利益が留保されるため受託者段階での課税の必要がある、
③法人に対する課税との公平を確保する必要があるが挙げられるところ(財務省「平成19年度税制改正の解説」296、308頁、佐藤英明『新版 信託と課税』(弘文堂、2020)468頁参照)、
ビットコインETFの信託は①で想定されているものにそのまま当てはまる
銘柄にもよるが、ビットコインETFの信託は費用の支払のためにビットコインを売却し余った現金を持分所有者に分配したり、ハードフォークやエアドロで得たデジタル資産を売却して現金化して持分所有者に分配することがある。信託から一定の報告書が持分所有者に送られてくる予定ではあるが、この場合の売却損益をころころ変わる持分所有者に帰属するものとして、帰属時期・帰属者の観点から厳密に計算するのは不可能ではないか。ただし、ビットコインETFの信託は、グランタートラスト等を前提としており、信託の収入・費用は持分所有者にパススルーされるものとして、計算・情報申告する予定。
もっとも、パススルーで計算されるとしても、市場で持分を購入した持分所有者の個人責任は、デラウェア州会社法に基づいて設立された営利目的の私企業の株主に適用されるのと同様の制限的なものとなる(株主有限責任のことかと)ため、②も肯定されるのではないか(なお、ビットコインETFはパッシブ運用なので、基本的には、ビットコインの評価損益、費用支払のためのビットコインの売却損益、各種費用しか発生しない)。
③について、持分所有者は、(限定されつつも)一定の議決権を有しているので、法人の株主に類似している(これからもう少し勉強しますが、デラウェア州法定信託法はもともとはビジネストラストと呼ばれていたものだから、株式会社に似ているところはもっとたくさんあるといえるのかも。ただ本信託は受益者からのcontributionという表現は採用していない。デラウェア州法定信託法3802条は受益者によるcontributionsの定め)。信託が終了する期間は定まっていないことも法人の永続性と重なる。

外国信託への適用を考えると、「証券」=財産法上の権利義務に関する記載のされた「紙片」と限定的に解することは妥当か。

「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」について、実際にそのような証券を発行していることが要件となっているわけではなく、そのような証券を発行する旨の定めがあればこの要件を満たすことになる。
信託法上の受益証券発行信託について、紙片を発行せずに振替制度を利用した場合でも「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当すると解される。
社債等振替法では、上記の受益証券発行信託の受益権(ただし、上記の特定の内容の受益権について受益証券を発行しない旨の定めのある受益権を除く)で振替機関が取り扱うものを振替受益権と呼び、この振替受益権についての権利の帰属は、同法6章の2の規定による振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされている(社債等振替127の2)。
振替制度を利用する場合、発行された受益証券が振替受益権になるのではなくて、受益証券は発行されることがないまま、振替受益権が発生するという仕組みがとられる。それでも受益証券発行信託に該当する。
上記仕組みについて、➊受益証券発行信託というのは信託法185条1項の定めのある信託(信託185③)であって、受益証券を現に発行している信託を意味するものではない、➋振替制度を利用するためには、当該信託の信託行為には、「①受益証券を発行する、②受益権は振替機関において取り扱う」(社債等振替127の2②)という2点が書かれる、➌これによって、受益証券発行信託は「信託行為の定めに従い」遅滞なく受益証券を発行しなければならないものの(信託207)社債等振替法により受益証券を発行してはならない(発行しなくてよい、あるいは「信託行為の定めに従い」受益証券を発行することはできない)ことになる(社債等振替127の3①)(能見善久=道垣内弘人『信託法セミナー(4) 信託の変更・終了・特例等』(有斐閣、2016)205頁〔藤田友敬発言〕、弥永真生『条解 信託法』〔道垣内弘人編著〕(弘文堂、2017)851頁参照)。
振替受益権について、上記のとおり、実際には受益証券は発行しないものの、信託行為においては「受益証券を発行する」と記載されるのであれば、少なくとも形式上は、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当する(実際、実務上はどうなっていのでしょうか?)。他方で、ビットコインETFのように、紙片を発行しない(電磁的記録を利用した)振替制度を採用する外国信託の場合には、信託契約等に紙片を発行する旨の定めがないことにより(振替受益権のようにテクニカルな法令になっていれば別。投信法上の受益権については、法人税法は「受益権を表示する証券を発行する旨の定め」を要求していないので、振替制度を利用しても影響なし)、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当しないという結論になることは、バランスが悪い

3 まとめ

冒頭で述べたとおり、ビットコインETFの譲渡に係る所得が、法人課税信託に係る規定の適用を経て、本件特例が適用されて分離課税となる可能性はあるものの、その道程にはいろいろな問題点や疑問点があることを指摘しました。

特に、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」及び「証券」の意義については更に検討が必要でしょう。また、ビットコインETFの仕組み、デラウェア州法定信託を含む外国法上の信託制度又は関連する概念を、日本の租税法の規定を適用しようとすると、わからない点が多く出てきました。もちろん、個別の銘柄によっても仕組み等が異なることに注意が必要です。

上記の「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」への該当性という点について、外国信託を法人課税信託と受益者等課税信託のいずれとして扱うかについて、信託証書に受益権を表示する証券を発行されうる旨の定めが含まれているか否かが決定的な判断要素となる場合には問題が生じることは既に論者から指摘されています。そこでは、おそらく世界のほとんどの地域で信託の条項をどのように定めるかは当事者の裁量に委ねられているから、この点が決定的な判断要素である場合には、外国信託の当事者は、その裁量によって、容易にいずれか一方を選択できるという問題意識が示されています(Yuko Miyazaki, Classification Issues Regarding Foreign Trusts Under Japan’s Tax Law and Overhaul of the Trust Law, Vol. 61-9/10 Bulletin for International Taxation 418, 425 (2007))。

もっとも、デラウェア州法定信託法は次のとおり、法定信託が「 a separate legal entity」であると定めています(3801条(i)によれば"Statutory trust” means an unincorporated associationではありますが)。・・・すると、法人課税信託に該当しなくても、日本の税法上の「法人」又は人格のない社団等に該当する可能性もあるように思いますが、「trust」=「信託」という観念が当局や裁判所の判断に影響を与える可能性も否定できず、まだまだ検討が必要そうです(木内清章『商事信託の組織と法理』(信山社、2014)112頁は、法定信託は、訴訟や取引の主体性など対外的な側面では株式会社に類似するものの、内部的な面では株式会社と同様にはとらえられないと指摘しています)。


§ 3810. Certificate of trust; amendment; restatement; cancellation.
(a)(2) A statutory trust is formed at the time of the filing of the initial certificate of trust in the Office of the Secretary of State or at any later date or time specified in the certificate of trust if, in either case, there has been substantial compliance with the requirements of this section. A statutory trust formed under this chapter, unless otherwise provided in its certificate of trust and in its governing instrument, shall be a separate legal entity. A statutory trust as to which a certificate of trust has been filed and a governing instrument has been adopted, regardless of the sequence of such acts, shall be duly formed, and the existence of the statutory trust shall continue until cancellation of the statutory trust’s certificate of trust.

また、3804条(a)では、法定信託が訴訟当事者になることを定めています。

株式会社と信託の類似性に着目して、エージェンシーコストの観点から、信託に対して規範的検討を加えることもありうるでしょう。Robert Sitkoff, An Agency Costs Theory of Trust Law, 89 Cornell L. Rev. 621 (2004). 同教授の見解について、山中利晃「信託法の経済分析―Sitkoff教授とその示唆―」金融商事ワーキングペーパーシリーズ2015-2も参照。もちろん、信託の特性を十分に考慮する必要はありますが。Lee-ford Tritt, The Limitations of an Economic Agency Cost Theory of Trust Law, 32
Cardozo L. Rev. 2579, 2594 (2011).
事業体としての信託が法人に類似すること及びデラウェア州のビジネストラストに係る信託法が事実上、一般的な会社法となっていることについて、Henry Hansmann & Ugo Mattei, The Functions of Trust Law: A Comparative Legal and
Economic Analysis, 73 N.Y.U. L. REV. 434, 472, 475 (1998).

ただ、両者のアナロジーから出発した場合に、信託を租税法上の「法人」に寄せて捉えられるべきかは、更に検討が必要でしょう。

いずれにしても、このような議論は、組織形態や事業形態と信託の議論とも関わるものです。日本銀行金融研究所「『組織形態と法に関する研究会』報告書」金融研究22巻4号(2014)参照。同報告書28頁は、次のとおり指摘しています。

デラウェア州等において立法化された制定法上のビジネス・トラスト(statutory business trust)については、受託者および受益者の有限責任が明文で認められていることから、会社法の規制を免れつつ、コーポレーションに認められる利益を確実に享受できるといえる。

そういえば、今後、特定資産に暗号資産が追加され、国内暗号資産ETFが分離課税になったとしても、米国ビットコインETFは投信法上の外国投資信託=集団投資信託になり、ETFの組成地によって合理的理由なしに取扱いが異なるというバランスが悪い結果になる可能性もありますね。

なお、信託から居住者に分配があった場合に(信託がビットコインを譲渡した場合や、信託が終了した場合など)、みなし配当に係る按分計算も含めて配当所得該当性やその際の日米租税条約の適用関係(日米租税条約4⑥(e)の適用があっても、居住者の課税関係には影響なしであり、もし、グランタートラストとして信託自体には米国で課税されないので信託は「課税を受けるべきものとされる者」に該当しないと整理されても同じ?)も問題となります。外国投資信託には該当しない以上、居住者の外国関係会社に係る所得等の課税の特例(措法40の4~40の9、68条の3の3➀)の適用はないと考えています。

★実際の税金の申告や個別の税務相談等は、税理士に依頼しましょう。★

※ 引用される場合は、この記事を引用元としてお示しください。


[1] 米国では、ビットコインの先物を運用対象とするETFについては以前から承認され、取引されていました。また、例えば、後述するカナダなど、米国以外の国ではビットコインの現物を運用対象とするETFは既に存在していました。参考として、各国のビットコインETFを比較する次のリンク先を参照。https://www.statista.com/statistics/1448509/biggest-bitcoin-etfs-worldwide/; https://www.justetf.com/en/how-to/invest-in-bitcoin.html

[2] 斎藤創=水嶋優「米国の暗号資産ETFの日本での取り扱いについて(第1.2稿)」(2024.2.28)参照。なお、筆者は、ビットコインETFの課税関係を検討するに当たり、両弁護士及び柳谷憲司税理士から貴重なご意見を賜る機会を得ており、この場を借りて御礼申し上げます。

おまけ:第198回国会 参議院 財政金融委員会 第12号 令和元年5月30日

5年以上前に国会で藤巻先生は、暗号資産ETFと分離課税の問題を取り上げておりました。

  • 102 藤巻健史発言URLを表示

    1. ○藤巻健史君 ・・・  そこで、今、アメリカの方では、暗号資産ETF、これが何となく、これははっきりはしていませんけれども、許可されそうな雰囲気もあるわけです。SECのコミッショナーのピアースさんですか、これが、進取の精神に満ちあふれた国々に後れを取ることを心配すると書いていらっしゃるわけですね。アメリカでもそう考えているわけで、ほかの国に後れを取っちゃいけないと思いますけれども、金融庁はどう考えているのか、ちょっとお聞きしたいんですけどね。  この法案でも、ハッキングの被害を心配されているわけですよ。ですから、取引業者というのは、最低限のもの、ビジネスに最低限必要なものを除いてコールドウォレット、ハードウォレットで保管しろと言っているわけですけれども、ETFができれば当然のことながら信託されて、債券型のETFだったらば信託銀行に信託されて、信託銀行はまずカストディアンを、例えば非常に堅固なカストディーを持つカストディアンを選択していくということでハッキングの問題というのは極めてリスクが減少すると思いますし、ETFができると暗号資産のマーケットも非常に大きくなって機関投資家も入りやすくなりますし、価格も安定してくると、こういうことになると思うんですが、ETFに関してどうお考えかをお聞かせ願いたいと思います。

  • 103 三井秀範発言URLを表示

    1. ○政府参考人(三井秀範君) まず、米国において、暗号資産ETFについてSECに対しまして複数の申請がなされているというふうに承知してございます。ただ、これ、海外当局の検討状況とか判断に関わることでございますので、これについての論評は差し控えさせていただきたいと存じます。  その上で、でございますけれども、日本でこの暗号資産ETFをどのように考えるかということでございますが、この暗号資産についての法制を検討する場で有識者の方々とも議論させていただいたんですが、そこで出てきた議論の中に、通常のここで言う暗号資産というのは、いわゆるビットコインなどで言われているようなパブリック型のブロックチェーンで、株式などと違ってキャッシュフローであるとかフェアバリューであるとかその裏付けとなる資産といったものが必ずしも観念されなくて、需給によってだけ価格が変動すると。極端な言い方をすればフェアバリューはゼロであることがあり得るということで、こういったことから見ると、価格が大きく変動するというふうなリスクを抱えているというふうな指摘を頂戴しております。  実際、この法案の検討に当たった契機となりました様々な出来事におきましても、これが過度な投機の対象となっているということから相談等々の問題もあったということがございます。  こういった状況に鑑みますと、現時点におきまして、この暗号資産のETFというのを組成して暗号資産に対する投資をより一層一般国民に対して容易にしていくということについては、慎重に、あるいはいろんな面から考えていく必要があるかと存じます。

  • 104 藤巻健史発言URLを表示

    1. ○藤巻健史君 いつも暗号資産の議論になると、安全性とそれから技術の進歩、世界に出遅れるんじゃないかという、その兼ね合いだと思うんですけれども、今、三井局長のお話聞いていますと、価格が大きくぶれるから、ボラティリティーが高いからというお話ありましたけれども、ETFをつくれば、その価格が、変動幅が小さくなるんではないか、どちらが卵でどちらが鶏か分かりませんけれども、暗号資産の価格ボラティリティーを減らすためにもETFというのは非常に重要な商品かなというふうに思います。  あともう一つ、聞いていますと、やっぱり財産としての価値を認めていないんじゃないというような会合でのコメント、SECの会合のコメントを聞いていますと財産価値があるかというような感覚もあるんですけれども、私が聞いていますと、やっぱりETFが、なかなか金融庁で渋っているのは一種の法律上の問題、要するに財産として認めるかどうかという疑問が出てくるということで、その問題であるならば、信託法の第二条、それから投信法施行規則第十九条三項一号に暗号資産を明記すれば、その問題というのはクリアできるようなことになると思うんですが、いかがでしょうか。

  • 105 三井秀範発言URLを表示

    1. ○政府参考人(三井秀範君) 法律上の論点で申し上げさせていただきますと、このETFを組成するということについて、この入口の議論は、まず投資信託法上の投資信託になるということがまず入口としてございまして、今度、投資信託法上の投資信託はどういうふうになっているかと申し上げますと、これ特定資産というものがまず法律に定義されていまして、主として特定資産に投資して運用することを目的とする信託とされておりまして、また、特定資産とは何かということで、投資を容易にすることが必要な資産として政令などで定めるものとなっておりまして、この政令に現在暗号資産、仮想通貨というのは含まれておらないという状況でございます。  ここに指定するかどうかということになりますと、先ほど申しましたようなフェアバリューというものは観念し難い等々の問題がありまして、これを一般大衆投資家に向けて投資を容易にすることが望ましい、必要な、こういった資産であるかどうかということがその判断の要素になってくるかと存じますが、現時点ではなかなかこうしたものに指定することについて広く理解を得ることは難しいのではないかというふうに考えております。  こうしたことから、現時点では特定資産に追加するということを考えている状況にはないところでございます。

  • 106 藤巻健史発言URLを表示

    1. ○藤巻健史君 いずれは特定資産に暗号資産を書き込むと、可能性もあるという、特定資産に書き込む可能性があるというふうに理解しました。 先ほど、最初にあれだけ褒めてさしあげたんですけれども、非常に先駆的な金融庁というふうに褒めたんですけれども、今の答弁聞いていると、駄目だこりゃと思いますですね。  次、国税にお聞きしたいんですけれども、国税。今のところ可能性はないという話がありましたけれども、もし暗号通貨ETFができましたら、これは二〇%の分離課税ということでよろしいんでしょうか。  というのは、ETFであるならば外形で判断すべきであって、何が入っているかということでは判断する仕組みにはなっていないと思いますので、当然に普通にロジカルに考えれば、ETFで暗号資産ETFができれば二〇%の分離課税と、こういう理解でいいか、お教えください。

  • 107 並木稔発言URLを表示

    1. ○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。  現行法令上、ETF、いわゆる上場投資信託の譲渡による所得につきましては、上場株式と同様、上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象となっているところでございます。そして、ただいま申し上げましたETFは、投資信託法に規定する投資信託又は外国投資信託に該当するものを指しているところでございます。  お尋ねの暗号資産ETFの場合はということでございますけれども、先ほど金融庁から御答弁があったとおり、現時点で暗号資産を投資信託法上の特定資産に追加することは考えていないということでありますことから、現段階において国税当局からその税法上の取扱いについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。



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