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解く最中に鉛筆が止まる【生徒観察:伸びない生徒のクセ】

生徒の観察

仕事柄、生徒の観察を意識しています。
以前、観察の意義については書きました。

演習時間を確保して、生徒を観察して、その度に注意しています。注意の内容も様々で、よくもまあ、いろいろ言いたいことが出てくるなあと、自分で思います。
ということは、「伸びない生徒のクセ」、ネタはまだまだ出てきそうです。めざせシリーズ化、です。

それでは参ります。伸びない生徒の記録です。

鉛筆が止まる生徒

国語の知識系問題や、社会の一問一答、英語文法など、知識系の問題演習のときです。いざ問題演習を始めてみると、動きが早々に止まってしまう生徒がいます。
国語や数学の読解なら、思考のために鉛筆が止まるのはまだしも、知識系の問題で動きが止まるのは具合が悪いです。
知識ですから、考えている場合ではないのです。数学の問題を解くのに九九で考えていては、いつまで経っても正解にはたどり着けません。

ノートには正解を書くべきである、という常識

動きが止まった生徒の観察を、しばらく続けます。
止まってしまう原因は、おそらく、解けない問題が多すぎてどうすればいいのか分からない、だと思われます。どうやら、ノートには正解を書くものと思っているようです。したがって、分からないから書かないし、結果できなかった問題は赤ペンで正解を書き写します。

私は、このような子に対して以下のような言葉をかけます。

1問も分からなくて全然構わん。
分からんなら空欄で良いし、漢字が分からんならひらがなで良い。
だから、止まるな。
一刻も早く、その1回目を終わらせろ。

このようなことは、問題演習のときほぼ毎回言っています。
それほどまでに、不正解を書くべきでないという常識は浸透しているようにも思います。「ノートには正解を書くものである」というのは、今までの学習から来る思い込みだと思われます。「間違いは赤で書く」という常識が彼らを支配しています。

1回解いただけで定着するワケがない

そもそもノートに問題を解く理由は、参考書に書き込んでしまったら2回目以降解くのが難しくなるからでしょう。あとで2回目以降にとりかかる想定をしているわけです。
なぜ、はじめから複数回解く想定なのでしょうか。
それは、1回問題を解いただけでは絶対に定着しないからです。
(先生の指示だから、ではないですよ。先生の意図を汲み取るのです)

ここを読んでいるあなたが学生なら、絶対にムリです(1回で身につく人もいるんでしょうが、そのような人はここにたどり着かないんじゃないかな。困っていないのだから、検索する必要もないですし)。あなたが悪いわけではないのです。
あなたの脳の出来不出来ではなく、1回勉強しただけで頭に入って、その知識を自由に使いこなせて、半永久的に覚えていられるなど、まず有り得ません。自分がその分野を元々相当好きとか(この状態は、その分野について既知なので1回勉強、というのとは矛盾します)、今すぐ覚えないと死ぬとか(相当極端ですが)、余程特殊なことでない限りは、1回で覚えるのはムリだというのが私は考えです。

したがって、1回だけで定着するはずがないのだから、1回目で完璧を目指す必要は全くありません。というか、目指してはダメです。手段が目的化してしまいます。

1回目で完璧を目指すと、手段が目的化します

覚えるために問題演習をしています。
覚えること=到達したい目的、問題演習=目的に到達するための手段、です。

仮に、1回目で完璧を目指そうとすると…
手段である問題演習において、全ての問題の正解が書かれてあるノートを作ることが目的になります。

繰り返しになりますが、今この問題演習の目的は何か?
それは、目の前の問題を理解することであり、頭の中に知識を入れることであり、いつでも頭の中から知識を引き出せることであり、テストで高得点を取ることです。
手段の目的化は、私自身も、相当気をつけておかないといつのまにかやってしまいます。

目的達成のためのチェックを

これらの目的が達成されているかどうかを判断するためには、自分で何回もテストをしなければなりません。

理解できているか?を確かめるためには、もう一度答えを見ずに最初から最後まで解けるかをやってみることです。
頭の中に入っているか?その知識を引き出せるか?を確かめるためには、全問を解き直してみるしかありません。

これを繰り返せば、結果、いつか必ず、テストで高得点は取れます。
だから、私は生徒に対して、手段の目的化を指摘し続けます。
残念ながら、いつ高得点を取れるようになるのかを断言できないのが私のまだまだ未熟なところです。

手を止めないための考え方

さて。
最初にお話しした、手が止まっている生徒です。

今できるできないは本当にどうでも良いので、さっさと1回目を終わらせることです。答えを見ながら一旦確認して、さっさと2回目にいくことです。これを10回くらいやれば、そのページはほぼ大丈夫になるでしょう。

10回もする時間がない?
それならば、諦めましょう。

最初は時間がかかります。
10回くらい解かないと本当にダメなこともあります。
ただ、騙されたと思って、一度、本当に10回でも20回でもやってみろ、と生徒には言います。
本当にやってきた子は、自信を持って小テストに臨みます。
結果合格点が取れるので、じゃあ次の単元でも10回やってみよう、とか、その都度その都度、努力をしていると、いつのまにか10回解く必要などなくなってきます。
そういうもんです。
前の単元を覚えたことで今回のところにもとっつきやすくなっていたりとか、頭に入れる過程が無意識に効率化されているとか、そんな感じだと思います。

結局、難しい分野だろうが苦手な分野だろうが初めてとりかかる分野だろうが、まずやらないと話にならないですよね、というお話でした。そのときの心づもりとして、最初から完璧を目指してはならない、という意識を持ってもらえるだけで、ある意味効率化していくのかもしれません。

おわりに余談

シリーズ化できそうだ、と思って書いてみましたが、結局、結論が似たようなところに行き着く気がしてきました。
要はやるかやらないか。
勉強への良い向き合い方というのは、そんなに多様なものでもなさそうです。

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