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晴れの日。


晴れの日。
どうしてもダメな日があって、そんな日は外で日光を浴びて、ぼーっとする時間が必要だと思う。

オフィスでパソコンを閉じて、外に飛び出して、外回りをしたら足が疲れた。
夏を控えたその空から、刺すようになった日差しが文字通り少し刺さって痛いけれど、日焼け止めを塗ったから大丈夫だと自分に言い聞かせて、落ち着かせる。
公園のベンチに腰掛けて、足に馴染まないシルバーのパンプスから踵を外す。
よく冷えたミルクティーの缶を開けた。

自動販売機の中で缶の落ちる、ガコンという音が好き。
世の中、何処に居たって不意に落ちることがあるらしい。
元いた居場所の補充はどうせ直ぐにされる。
テレビで芸能人が言っていた、「スティーブ・ジョブズ亡き今も、Appleの業績は上がり続ける。」
誰でも代えは効かないというのは、社会の中には存在しない。
だから、ある程度好き勝手に生きていいんだと最近思って生きようと心掛けている。

プライベートの付き合いだとか、人間関係の話になってしまえば、話は別なんだろうけどね。

ガコン。
私の中でも何かが落ちるけど、落ちた何かは補充されない。
自販機とは違って、それを補充する仕事はここには存在しないらしい。
自分で補充しろって?
ごもっともなご意見ありがとう。
でも、何が落ちたのかわからないんです。

さも当たり前のように毎年茂る青い葉が、チラチラと足元の影を悪戯に揺らして、その悪戯が今日も心地よく、どこか遠くのものに感じる。
その影を蹴っても、それは頭上の木枝の仕業だから、すかぶった足だけが残る。
そのお陰で、シルバーのパンプスがすっ飛んだけど、暫く放っておいたら、観光客であろう、肌の白いブロンドのカップルが、拾い上げて私の足元に置き、笑顔で「here you go」とかなんとか言うから、少し申し訳ない気持ちが湧いて、お礼を伝えると、気にしないで。と、去っていった。

なんだか、日本人に比べて、海外勢は心にゆとりがあるというか、よく人を見ていると、関心しつつ、置かれたパンプスを履いて、ベンチを立った。

もう少しだけ、外回りをして帰ろう。
日中に外でパンプスを吹き飛ばしている人に、そのパンプスを拾って差し出す勇気は私には無いけれど、そんなことが当たり前にできるような、そんな大人になりたかったはずだった。

まだ、間に合うか。と、公園を見渡して、ビルの群れに戻る。

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