見出し画像

センチメンタルガール。

今日は雨が降っていないのに、なんだか湿った匂いがしていた。
オフィスでパソコンを見ている間に、いつの間にやら外は暗くなってしまって、地下鉄で家とは反対方向の電車に乗った。
改札を抜けて地上に出ると、カフェやら信号やら、居酒屋やらのネオンが煩わしく主張する。
本当は、家、帰りたかったな。
先週よりは温かいけれど、風はまだ冷たくて、鼻上までマフラーをつまみ上げて、信号が青に変わるのをじっと待つ。

1時間後、キラキラのヒールに、夜空のように深い青のドレスを着る。
暇潰しに入ったカフェで頼んだ温かいロイヤルミルクティーで、毎度胸焼けするけれど、それしか頼んだことがない。
メニューを見るのが面倒くさくて。
コーヒーは、嫌いじゃないけど、頼む程好きでもない。
なんとなく音楽を聴いて、新しく書こうとしているブログを広げて。

ロイヤルミルクティーはもうすっかり冷めてしまって、冷たかった。
あの夏も、去年の夏も、私は紛れもなく毎日死にたかったけれど、今はそうではなくなった。
週に数回、だけ。
夕日みたいなオレンジの、沈み込むような睡魔をくれるあの錠剤は、もう必要がない。

昨日の夜、眠る前、彼と横並びに寝そべっていて、ただ、なんの感情かわからない、寂しさのような、虚しさのような、やり場のない感情に襲われて泣いた。
生理だから、泣いてるのに気が付いて驚いて、どうしたのか尋ねる彼に、「ただの女性ホルモンの乱れだよ」と、うす笑って言ったけれど、彼はただ、抱き締めて私の髪を撫でていた。
暫くして、小さく、「すきだよ」
そう呟いてくれる。
それでも、週に何度か死にたくなるの、何でかしらね。

突然に泣き出すセンチメンタルガール。
もう、ガールなんて歳でもないけど。

私なら、こんな女、面倒くさくて厄介払い。
純粋な好意が、ナイフみたいに突き刺さって、傷口から涙が出てくる。
真っ直ぐな愛情は、欲しくて仕方なかったものだけれど、いざ注がれてみてみると、恐ろしくて仕方なかった。
失ってしまわないように、彼の背中のTシャツを、皺になるくらい握りしめる。
「大丈夫」
そういってこちらをみて、宥めるように呟く彼の顔は、電気の消された部屋の中では、ぼんやりとしか見えなかった。

コンタクトも、外してしまっているから、尚更。
レーシック、受けたいな。
必要なお金が…1.2.3......
また増えてく。

ないものねだり、強欲。
きっとそれを続けて、私は、生きて、
その先には何が待ってるのかしらね。

冷えきったミルクティーを流し込んで、カフェから出る。
明日は早く仕事を片付けて、直帰しよう。
そうすれば、またこの死にたいという背後の看板が、数日消えてくれるから。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?