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ドイツ転職のすゝめ

Moin、ハンブルクはまだまだ寒い日が続きますが皆さまいかがお過ごしでしょうか。今日はドイツで転職した体験と、客観的事実をもとになぜ今ドイツ転職をおすすめしたいのか書いていきたいと思います。

理由1:労働者の権利が守られているから

労働者の権利といっても色々あるので並べてみます。

有給休暇:フルタイムワーカーの場合(週5日勤務)、法律で最低20日と決まっています。が、実際は28日がスタンダードです。金融、教育、エネルギー分野では30日が平均的で(私も実際30日あります。)、林業やホテル・レストランなどのサービス業では24~25日が平均のようです。これは、本当に¨取得できる¨休暇であることも重要です。日本では、令和4年時点で付与された休暇は17.8日前後、取得した日数は 10.9 日とのことで、取得率は62%弱にとどまっています。(厚生労働省

育児休暇:子供が8歳になるまでの間、最長3年まで取得する権利があります。両方の親が取得できるので、夫婦で合わせて6年間取得することが可能です。3年間のうち14か月間は国から給料の65%が支払われます(最高金額のキャップはあります=1,800ユーロ/29万円強)。この制度は何回かに分けて利用することも可能で、例えば産後12か月、その後仕事に復帰し、子供が3歳から4歳の間に1年、その後もう1年といった形で分割することもできます。また、3年間一括でとった場合でも、職場に戻った際に以前働いていたのと同じポジションに戻れることが法によって約束されています。ですから、両親はキャリアの後戻りを恐れることがなく休暇を取ることができます。

最低賃金:欧州も国によっては定義されていない最低賃金ですが、ドイツでは定義されています(2024年1月時点、12.41ユーロ/2,025円)。そして、この金額は毎年値上げされることが決まっています(来年25年には12.82ユーロに。)。

他にも、勤務時間を100%から80%に減らしたい場合、雇用者はNOと言えないとか、傷病休暇は年間6週間(平均取得は2022年時点で15.1日だったようです。)あるとか、細かいこともあげれば結構きりがないですが本当に労働環境については充実していると思います。(でも30日+15日傷病休暇って、年間の祝日も入れたら2か月ぐらいまるまる仕事してないやん。なんやこれ。)

理由2:EU内でも「特に」労働ビザが取りやすいから


ドイツも日本と同じで少子高齢化による労働者不足は深刻です。2024年時点、MINT分野(数学、コンピュータサイエンス、自然科学、テクノロジー、いわゆるSTEM)では49万人の不足が報告されています。(出典)また、看護・介護系では2030年までに30万人の増員が必要になるといわれています。(出典)こうした状況を踏まえ、海外からの労働移民は積極的に受け入れが進んでいます。

結果、ドイツでは圧倒的にEUブルーカードが取りやすくなっています。EUブルーカードは、EU圏内での労働ビザと滞在許可が4年間一括で取れる制度で、33か月後には永住権に切り替えが可能です。(ドイツ語ができる場合※B1は21か月後。)EU圏内の国であればどこでも申請が可能ですが、積極的に許可を出しているのがドイツです。

2019年の統計を見ると、ブルーカードの発行ではドイツが圧倒的です。

出典:Lokalyze

また、ブルーカード保持者の83%が5年後もドイツに定住しているという結果を見ると、政策的には成功していると評価できるかもしれません。ブルーカードの応募条件も2023年の11月から大幅に簡易化され、これまでは年収58,400ユーロ(約950万円)以上最低稼ぐ必要があったのが、45,300ユーロ(約740万円)まで引き下げとなりました。STEM分野と医療系の場合はさらにハードルが4000ユーロほど下がります(約670万円)。また、新しい制度でEU圏での学位修了後3年以内の就職の場合にもSTEM分野と同じ要件が当てはまります。年収740万円と聞くとハードルが高いように思われるかもしれませんが、大卒の新卒平均が45,400ユーロなのでほぼ同程度と考えて問題ありません。修士卒の平均は47,370ユーロ(約770万円)です。(出典

また、ブルーカードの要件に満たなかった場合でも、労働ビザ(Arbeitsvisum)は比較的に取得しやすいようです。こちらは担当者によって毎年更新手続きが必要になるのか変わってきますが、私の友人は終身雇用の契約で4年分ビザが出ていました。普通の労働ビザの難点は、会社に所属している限り滞在許可が下りるという仕組みなので、転職をする際に足かせとなる場合がある点です。特に不満なく継続して働く場合はビザの更新が面倒なぐらいで実生活では大きな相違点はないでしょう。こちらも5年間働くことで永住権に変更が可能になります。ちなみにドイツで学位を収めた場合は3年へ引き下げされる予定です。

理由3:職場付き合いが楽だから

私はこれまでドイツの会社3社で働いた経験がありますが、人付き合いは圧倒的にドイツの職場が楽です。上司が居るから居残るという文化は一切ありませんし、仕事後の飲み会も超絶稀です。もちろんクリスマスの時期や夏の天気が良い時期はさくっと飲みに行ったりBBQをしたりとイベントが発生したりしますが、これも義務ではなく、来なくても全く仕事に影響しません。いちいちお土産やバレンタインデーを気にする必要もないし、(もちろん何か持っていけば喜ばれますが)無言の圧力はありません。また、基本的にコミュニケーションがドストレートなので、「あの人はこう言ってるけど本当のところは・・」などと悩む必要もありません。良い仕事をしたら「ありがとう、よくやってくれたね!」と声をかけられますし、いまいちだったらどこがいまいちだったのかはっきり教えてもらえます。

理由4:普通に年収が高いから

失われた20年、かわらぬ年収、日本。もう常識となりつつありますが、一応ここでドイツと日本の年収を比較しておこうと思います。

出典:countryeconomy.com

グラフを見てわかるように、この20年で見事にドイツが日本が逆転しています。2023年の平均年収は、ドイツが57,598USD(約860万円)、日本が39,319USD(約590万円)でした。ちなみにOECD加盟国(2024年現在は38か国)で比較すると日本は下から数えた方が早いですし、40Kぎりぎりというのは他のEU各国と比べても低水準となっています。

出典:OECDデータ

理由5:残業が圧倒的に少なく、効率的に働くから

2022年の統計によると、「ドイツでの残業時間の平均(週)は、約3分の1(33%)が5時間未満、59%が10時間未満と回答した。4分の1以上(29%)は週15時間以上残業していた。」(出典)ということで、大半は10時間未満であるようです。

一方、日本における残業時間の確報(令和5年)は以下の通りです。

出典:厚生労働省

産業別にみても10時間を超えているところが圧倒的に多いのがわかります。

理由6:学歴や経験が正当に評価されるから

日本の会社に戻らなかった理由の大きな一つに、圧倒的な年功序列制度があります。ドイツで修了した修士も、加味されるのかを聞くと「新卒時の学歴で基本給は決まるという規定ですので」の一点張りでした。というかそもそも特に文系で修士が優遇される場面はないでしょう。ドイツの場合は逆に清々しいほどの学歴主義で、正当に評価されるのも良いポイントです。ちなみにどこの大学を出たとかそういうのは関係なく、学位があるか、成績が真っ当かというのが重要なポイントになります。なので田舎の、人口3万人ぐらいで半分が学生のような街の大学を出たとしても、東大卒と同じように評価されるわけです。ドイツでは学卒が一般的ではないため、専門職もとても重宝されます。のでなんでも良いですが資格を持っている人はこちらで資格をトランスファーし、就職につなげることも比較的容易です。

おまけ1 年金:ドイツと日本は年金制度の協定国

となっていますので、将来的に日本で年金を受け取るか、ドイツで受け取るか選択することができます。

おまけ2 試用期間:違ったら辞めればいい

ドイツにはフルタイムで働く場合、基本的に試用期間があります。契約によって期間は若干変わることがありますが、一般的には6か月です。この半年間、雇用者側も、労働者側も、自分たちにフィットするかお互いに見極めます。就労態度や仕事の精度、コミュニケーションなどなど360度から見られているといっても過言ではありません。この期間中は双方どちら側からでも、いつでも契約の終了を申し出ることができます。職階とか全く関係ありません。実際に、私の前の職場でもマネージャーレベルの方が6か月が終わる1日前に退職を申し出ていました。これは法的に全く問題ありません。就職先に迷っても、「だめだったら試用期間中にやめればいいや」と寛容にかまえることができますね。残りたい場合はもちろんその期間に全力を注ぐことになります。この期間中はいつでも職場を去ることが可能なので、家の契約などする場合は保証人を立てたりすることもあります。

おまけ3 社会保障制度:無職になってもそんなに心配ない

私も次の就職まで結果的に3.5か月ほどブランクができましたが、その間の社会保障はいわゆる労働センターが面倒を見てくれます。保険に関しては国から出ますし、次の就職につなげるための学びをしたい人にはお金が出ますし(月150ユーロ/25000円)、生活についても生活保護の場合は月563ユーロ(91000円)、失業保険の場合は前年手取りの60%が支給になります。子供がいる場合は67%です。失業保険や生活保護をもらっていることに対して税金泥棒とかとやかく言う人はいません。特に失業保険は自分が収めたものですから。なので万が一無職になっても数か月はどうにかなると気長に構えることができるのも良い点かもしれません。(もちろんお役所仕事はそれなりに大変ですが。)

ということでつらつらと書いてきましたが、誰かの参考になれば幸いです。何か思いついたらまた追記します。


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