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アサダワタルプロジェクト「また明日も歌ったような」ミュージックビデオ公開記念イベント[レポート]

2024年2月11日、文化活動家のアサダワタルさんによるプロジェクト「また明日も 歌ったような」ミュージックビデオ公開記念イベントが開催されました。

文化活動家のアサダワタルさんは、2022年から断続的にデイサービス楽らく(以下、楽らく)に滞在し、音楽や記憶を軸に、利用者や職員、時には地域の小学生たちと、多様な接点を作ってきました。その関わりから、アサダさんは2つの楽曲を書き下ろし、その歌は楽らくで毎日歌われています。

この機会に制作された『また明日も楽らくで』(ディレクション・編集:アサダワタル)のミュージックビデオの完成披露と共に、本プロジェクトのプロセスの紹介、クロスプレイ東松山の活動報告とクロストークが行われました。福祉の現場で、いかなる交流が生まれ、そしてケアとどのようにつながっているかを、多様なゲストと共に語り合いました。

イベントには40名もの方がお越しになり、アサダさんのプロジェクトや全国的にも珍しい高齢者福祉施設でのアーティスト・イン・レジデンス「クロスプレイ東松山」の取り組みに関心の声を寄せてくださいました。

簡単ではありますが、イベントの様子をお届けします!



第1部 アサダワタル作詞・作曲『また明日も楽らくで』(ミュージックビデオ)完成披露上映+トーク

出演:アサダワタル

アサダさんは断続的に楽らくに滞在しながら、楽らく限定のラジオ放送をしたり、まちの音を録音したり、時には送迎車に添乗し利用者さんのご自宅までお伺いしたり、さまざま模索されたリサーチ期間を、利用者さんが日々入れ替わることや、また次にお会いする際には関係がリセットされていたり、積み重ねていくことの難しさがあったりなど、苦しい時間を多く過ごしたと振り返りました。誰もいなくなった楽らくに一人残り滞在し、コンビニに向かって街灯のない夜道を自転車の灯りを頼りに走っていると、このプロジェクトの行く末と重なったとも話されました。

そんな中、職員から「テーマソングを作ってほしい」と投げかけられた一言がきっかけで、アサダさんのこれまでの経歴や滞在で思いを巡らせていたことがつながり、すっとプロジェクトの方向性が決まったのだそう。滞在の中で集めていた言葉や見てきた風景をもとにスラスラと2つの曲が誕生。完成した曲は、不在のアサダさんの代わりに、楽らくの日常に居る役割を果たしてくれたのだとか。

楽曲制作までのプロセスを聞いた後、アサダさんが編曲した「また明日も楽らくで」が流れました。来場者の皆さんは、利用者さんと子どもたちの歌声、ドラムなどの楽器や効果音、利用者さんの語りなど、音の奥行きに耳を傾けていました。

そしていよいよミュージックビデオの公開。穏やかに流れる楽らくの日常をただ切り取っただけではなく、完成に至るまでのプロセスを知ることにより、それぞれの視点からミュージックビデオを鑑賞されている様子でした。

ミュージックビデオの字幕に使用された利用者さんによる習字も配られ、一つひとつ異なる風合いの文字に触れることができました。


第2部 クロスプレイ東松山 活動報告会+クロストーク

①クロスプレイ東松山の活動紹介

スピーカー:藤原顕太(クロスプレイ東松山企画チーム)

2022年からはじまった「クロスプレイ東松山」の概要や、これまでの滞在アーティストの活動の様子などについて紹介されました。

②クロスプレイ東松山の活動評価から見えてきたもの

スピーカー:長津結一郎(九州大学大学院芸術工学研究院 准教授)

クロスプレイ東松山の取り組みについて、アーティスト、施設職員、ケアマネージャーなどの関係者にアンケート調査を実施し、その結果をもとに長津さんが活動を評価。かたい話になってしまいそうな「評価」の話も、一体何を評価するのかを明確にしながら、噛み砕いた解説でお話いただきました。


③クロストーク「介護の現場で生まれる、文化的な出来事たち」

出演:アサダワタル、岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員)、中田一会(ウェブマガジン〈こここ〉編集長)、クロスプレイ東松山企画チーム(武田奈都子、藤原顕太、武田知也)
司会:長津結一郎

最後にはゲストを交えて、福祉施設にアーティストが滞在することによってどのような交流が生まれ、何が起きているのか、それぞれの視点からお話いただきました。

福祉現場にアーティストが入っていくことによって生じる「ヒリヒリ」や「揺らぎ」。プロジェクトがはじまり2年目となる「クロスプレイ東松山」の葛藤や本音が交わされました。

最後には会場の全員で「また明日も楽らくで」を合唱。毎日でも歌いやすいようにと音域の幅を狭くしたというテーマソングは、一度耳にするとなんとなく口ずさんでしまう耳馴染みの良さがあります。日常の活動が営まれているこの場所(最寄駅から徒歩30分!)に足を運んで歌うことで、このプロジェクトをより感じられる時間でした。

毎日使用されている手書きの歌詞と指差し棒(元は園芸支柱…!)


番外編 レセプション

イベント終了後には来場者の皆さんと交流会も開催されました。イベントの中でふつふつと浮かんできた思いや考えを伝えたり、それぞれが活発に交流する場となりました。

デイサービス楽らくを運営する保順会の辻守史理事長による乾杯の挨拶


「また明日も 歌ったような」のこれから

現在、施設前の小さな時計台から流れるように音源の設置を進めています。施設にとってのテーマソングともいえるこの曲を、子どもたちの登下校に合わせて流す仕掛けにすることで、地域の時報のような役割を果たすと共に、地域と施設の接点をつくることを試みます。


ミュージックビデオ公開!

アサダワタル作詞・作曲・編曲『また明日も楽らくで』ミュージックビデオはYouTubeでも公開されています。完成までのプロセスにも想いを馳せながら、ぜひお楽しみください。


記事写真:吉田尚平
文章:富樫知美(インターン)


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