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ギターリペア初心者が一年間ジャンクギター再生に取り組んだ記録と振り返り

二年前にギターを再開してから、フリマアプリやオークションで中古ギターを安く購入する楽しさを学び、沢山ギターを購入してしまった。個人間取引でギターを購入することの難点は、そこそこの割合で状態の悪い楽器が届いてしまうことだ。今までに20本ほど個人間取引でギターを購入してみたが、ポットのガリなど細かいものも含めると80%ぐらいの割合でなんらか問題が起きていた。(それはそれでいつかリストにまとめてみたい)

毎回工房に修理をお願いするわけにはいかないので、ある程度自分でメンテナンス・修理をできるようになっておきたいと思い、安いジャンクギターを入手して練習することにした。最初のジャンクギターを購入/修理したのが2021年の3月で、ちょうど一年が経過した。その間8本のジャンクギターを修理し、色々と学びと変化があった。

学習の方法

否定的な意見もあるかもしれないが、自分の場合はYouTubeにアップロードされているリペア動画を見て作業方法を学んだ。一年経って多少知識と経験が増えた今になって思うと、YouTube上にアップロードされているリペア動画は珠玉混淆で問題のある作業方法を紹介している動画もあったりするが、やはり実際の作業のやり方はテキストで読むよりも動画で見た方がわかりやすい。

YouTubeの動画である程度学び実際にリペアをやってみた後で、もう少し詳しく理解したいと思いいくつか書籍を読んだ。

特にこの二つの本は、動画で得られなかった知識を補うのに良い内容だった。本来であれば、本で体系的に知識を学んだ後で動画で作業方法を学ぶ、という進め方の方が適切なのかもしれないが、自分にとってはとっつきやすい動画で学んだ後で本で知識を補完していくという進め方の方がストレスが少なく楽しめたのでよかったと思う。

一年間のリペアの記録

初めてのリペアは苦戦したが楽しかった

最初のジャンクギター修理は、97年製のEpiphone Les Paulだった。「ピックアップセレクターの故障」「そこそこ汚いボディとネック」「ネックに大きな反りはなし」という好条件(?)のジャンクギターだった。

当時は電気回路に関する基礎的な理解不足や久しぶりのハンダづけなどで、スイッチ一つを交換するだけでも大分苦戦をした。配線で一部どうしてもうまくいかず、いつもお世話になっている工房さんにヘルプを求めたりもした。改めて動画を見ても、横着で雑な作業をしているなと思う部分はあるが、それでもこの最初のリペアの作業はとても楽しかったことを覚えている。

初めてのフレットすり合わせでPLEKの凄さを理解する

その後いくつか「状態が良さそうな」ジャンクギターを購入し、修理の練習を続けた。最初の数本は、運よくネックの状態が比較的まともなギターばかりだったのだが、ある時購入したEpiphone '56 Gold Topのネックは明らかな問題を抱えていた。

いわゆるハイ起きというものが起きてしまい、ハイフレットでかなりひどい音の詰まりが発生していた。どうしようもないので初めてのフレットすり合わせに挑戦することになった。YouTubeで動画を沢山見てやり方を学んだのち、慎重に作業して無事に詰まりを解消させることができた。この作業を通じて、改めてPLEKの素晴らしさを痛感することになった。人の手作業ではどれだけ慎重に削ってもどうしても前後のフレットを無駄に削ってしまう。

今回は運良くすり合わせに成功したが、「次も大丈夫だ」と思えるような自信は得られなかった。

最初のフルレストアである程度自信がついた

ある日、会社の友人から古いギターを買ったので見てみて欲しいと相談を受けた。

76年製のGrecoのストラトタイプのギターで、動画の通り状態はかなりひどいものだった。あまりに全体的に状態が悪かったので、初めてギターを一度全部分解して組み直す、という作業をすることになった。(ペグの内部までは分解していない)

元に戻せるのかという不安があったので、スマートフォンで大量に写真を撮りながら分解した。古いギターで部品のサイズに互換性が無かったりと、かなり大変なレストアになったが、なんとか無事に一人で作業を完了させることができた。一度分解して組み立て直すという作業を経験することで、ギターの構造についてかなり理解が深まり自信を持つことができるようになった。フレットが低いネックについてはできることがあまりないこと、逆にギターの電気系の問題は、いくらでも直す方法はあるということなど、色々と改めて理解・認識することがあった。

今になって見直してみると、色々と作業のやり方(と動画の撮り方)には色々と改善点があると感じるが、この修理の動画は海外からコメントをくれる人も多く、YouTubeチャンネルの成長に大きく寄与してくれた。

よりディープな方向へ

リペアをこなしていくうちに、段々と簡単なリペアでは物足りなさを感じるようになり、なるべく状態の悪いジャンクギターを求めるようになっていった。

おそらく今後もより状態の悪いジャンクギターを求めていくことになるのだろう。

過程を動画で撮るのは何かと良かった

その後も一ヶ月に一本ぐらいのペースでギターのリペアを行った。まだまだ、毎回毎回新しい学びだったり作業の効率や仕上げの品質向上を感じることができる初心者のフェーズを楽しむことができている。

基本的には、作業の様子は毎回細かく写真と動画で記録をしている。目的は問題が起きたりわからなくなった時に後で参照できるようにすることと、作業工程を後で振り返って改善点を探せるようにすることだった。いくつかのリペアは動画にしてYouTubeにアップロードした。YouTubeにアップロードすると色々な人からフィードバックをもらえることに加えて、「人に見せられる品質・工程にしなければならない」というプレッシャーで色々なところに気をつかう(誤魔化さない)ようになる。一年たって成長のスピードを実感することもできるなど、良いことがいろいろあった。

道具への課金の効果が大きい

最初のうちは、手持ちの日曜大工の道具だけでリペアをしていたが、リペアを進めるうちに色々道具が欲しくなり買い足していった。初めのうちは安い道具ばかり買っていたが、少しずつちゃんとした道具を買うようになったのは、やはり良い道具を使うと作業効率が上がり仕上がりも良くなるということが分かりやすく認識できてきたからだ。

特にこの小型電動ドライバーとミニルータ、そしてまだ紹介していないがちょっと良いワイヤーストリッパーについては、導入したことでかなり効率が良くなった。

目的はどの程度達成できたのか

リペアを始めた目的は「買ったギターに不具合があったらある程度自分で直せるようにする」ことだった。一年経ってどの程度その目的を達成できたか、でいうと「当初予想していた以上」に自分自身で修理できそうだという自信が身についた。

電気系統は(ある程度)なんとかできそう

一年前リペアを始めた頃、電気系統の修理にはかなり苦手意識を持っていた。ハンダづけも苦手だったし回路の知識もかなり乏しかったので、音が出なかったりノイズがあった時に、どうやれば直せるのかイメージができなかった。

一年修理をやってみて、ここは明らかに進歩した。YouTubeと本で回路について学び、実際に多く不具合を直してきたことで、「最低限の知識があれば、思っていたよりもギターの回路というのはシンプルなものなのだ」という感覚を得ることができた。アクティブPUやサステイナーなど、特殊な回路、いじったことがないシステムについてはまだ直せる自信がないが、一般的なストラトやレスポールの電気系統については、回路の不具合であれば原因を特定して直すこともできるし、パーツの不具合だったらそこだけ交換すれば良い、ということがわかったので、中古ギターを買うときに電気系統のトラブルやコンディションについては心配することがなくなった。(高価なパーツが使われていてそれ目的の場合はもちろん例外だが)

ネックの調整は自信が持てない

一方でネックの不具合については、未だに自分でなんとかできる自信がない。トラスロッドの効き方はギターによって異なるし、波打ちや捻れ、ハイ起きなどトラスロッドの調整だけでは直せない症状のネックはお手上げだ。ある程度すり合わせや弦高調整で誤魔化せることもあるが、「もっと良い状態にできるのか、それとも今の状態が限界なのか」判断できないことが未だに多く、全然自信を持つことができない。むしろ、やればやるほど細かいビビり、音の詰まりなど色々なことが気になるようになってきてしまって、余計自信を持てなくなってきている感じすらある。そのせいで、ギターを買う時にネックの状態に関してはそれまで以上に神経質になるようになった

想定外に変化したこと

リペアを一年間やってみたことで、当初の目的以外にもいくつか変化があった。

ギターの作りの良し悪しを感じられるようになった

まず、ギターの作りの良し悪しを昔以上に意識するようになった。フレットの仕上げであったり、ネック上のポジションごとの弾き心地や音の変化だったり、ネックとボディの密着具合であったり、ブリッジのスムーズさであったり、そういった部分は昔はそこまで意識してみていなかったが、リペアをするようになってからそこを意識するようになった。高いギターが高い理由を、今まで以上に理解できるようになった。

良いギターを弾く喜びが増えた

そして同時に、しっかり作られてしっかり調整された良いギターを弾く喜びというのも、それまで以上に実感できるようになった。

YouTubeチャンネルの登録者数が伸びて、交流が生まれた

リペアの様子をYouTubeに上げていたところ、想定外にチャンネル登録者が増え、色々コメントをいただけるようになった。コメント欄から新たな情報や知見を得ることもあり、非常にありがたいと思っている。

まとめ

一年間ジャンクギターの修理を続けてみて、ある程度リペア・メンテナンスのスキル向上と知識が増えたなという実感がある。結果的に、より(割安な訳あり)ギターの購入や、ギターの演奏自体を楽しめるようになったと思う。未だにギターの症状によっては、苦戦を強いられることも多いが、それでもできることが増えていく楽しみと終わった後の達成感があり、楽しい。ハンダだったり、木工の作業など多少身体的なリスクを伴う作業もないわけではないので、誰にでも無責任に勧められるものではないが、自分の場合は一年間やってみて大分ギターの楽しみ方が増えた。まだネックの修理・調整など課題はたくさんあるが、今後もギター再生を続けていきたいと思う。

追記: 2023.03.18 二年目の振り返り


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