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『俺たちバブル入行組』【読書感想文】

時は1988年のバブル絶頂期。

半沢直樹は13行ある都銀の一つである産業中央銀行に入行する。


❐半沢直樹

半沢直樹と聞けば「倍返しだ」が常套句の人気ドラマを想起する。

同時に口を真っすぐ一直線につぐんだ堺雅人の表情も目に浮かぶことだろう。

しかし僕は半沢直樹のドラマを全く見ていない。

代わりにこのドラマの原作である『俺たちバブル入行組』を読んだ。

ドラマがつまらないとか原作の方が面白いとかそういうことを暗に示しているんじゃない。

ただ決まった時間にドラマを見る癖がついていなくて見逃していただけだ。


半沢直樹ほどの反骨心と夢を持ち続ける意志があればきっとどんな環境でも生きていけるんだろうな。

半沢は夢を抱いて大手銀行に入行した。

銀行で偉くなって企業を支える、というのは半分父親の願望だが半沢にもその意志は受け継がれていたらしい。

半沢の父親が経営する中小メーカーが危機に陥った時それまで仲良くしていた大手の銀行は全く相手にしてくれなくなった。

かろうじで彼の会社は地銀に助けられたのだが、それからというもの半沢家には都銀への憎しみが少なからずあったのだろう。

その憎しみが部分的に願望へと昇華され今に至る。

もちろん憎しみも残っていて、物語の最後に半沢の父を見捨てた木村部長代理をボコボコにする。



❐浅野支店長

半沢はこの浅野支店長に作中常にいじめられている。

浅野は半沢に5億円の不良債権を出した責任を負わせる。

半沢自身にこの失態の責任は一切ないのだが浅野は強引にも半沢にその責任を押し付けた。

実際は浅野自身が個人的な株の失敗で背負った借金を返済するために生まれた不良債権だ。

5億の融資先である西大阪スチール社長の東田と共謀して銀行から盗んだ金なのである。

理不尽すぎる。


浅野支店長は半沢の直属の上司だ。

浅野は支店長なのに対して半沢は融資課長という立場。

両者の役職にはかなりの優劣があるようだった。

銀行に勤めた経験も務めている知人も周りにいないからその内部構造がよく分からないがこのブログを参考にすると半沢と浅野の差は大きなものだということがわかる。

それにも関わらず泣き寝入りせずに真実を追った半沢の負けん気の強さや正義感はすさまじい。

半沢の行動力と反骨心や自身が掲げる銀行員としての夢がなせる業なのかもしれない。

架空の人物にこんなにも熱くなるのは馬鹿馬鹿しいが、尊敬に値する。

何か一本筋の通った理念とかそういうのを持っていれば逆境にも強くなるのだろうか。


❐銀行の内情

この本を読んでいると銀行がとても窮屈で居心地の悪い職場であるかのように思えてくる。

本には出世のためなら人の道にそれたことも平気でやる性格のひん曲がった輩がちらほらでてくるが、現実でもそうなのだろうか。

もちろん半沢のような真っ当に職務をこなす銀行員もたくさん登場している。

しかし浅野支店長しかり木村部長代理しかり、やばいやつも確かにいた。

正々堂々と実力で勝負するのではなく、責任の押しつけや上司からの圧でライバルを潰そうとする銀行員がもし本当に一定数存在するのなら銀行ってやつはそれはそれは恐ろしい所なんだろうな。

小説にも銀行が引き起こしたスキャンダルがいくつか引用されていたがそれを見ていると上層部は結構汚いことをやってるんだなとがっかりする。

ノーパンしゃぶしゃぶ事件とか日本の恥でしょうに。

そういう汚いことをやらなければ生きていけないのか。

それはちょっと嫌だな。





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