『死なせない屋』 感想
❐概要
死なせない屋とはクライアントの命を守り抜くボディガードのような仕事を指す。
医師国家試験に四度も落第絶望していた主人公の朝比奈良太は死なせない屋の神楽と出会いアルバイトとしてそこで働くことになる。
医師免許を獲得するために蓄えた知識を武器にクライアントを様々な危機から救っていくというストーリーだ。(そこまで役にたっているとは思えないが)
全体としてはクライアントの依頼の中で巻き起こる事件を推理し解決していくミステリー小説の様相を呈している。
❐感想
物語の本筋とは関係がないかもしれないが、四浪してしまうというのは一体全体どういう心境なのだろうか。
想像を絶するつらさだろうとかいう薄っぺらい感想しか出てこない。
四回も同じ試験に落ちてしまうというのも精神的にかなりこたえるだろうし、四年間も同じ内容を勉強し続けるなんてのは苦行に近い。
ベテラン死なせない屋の神楽は歯に衣着せぬ言動をするタイプの女性だ。
校閲ガールの石原さとみを彷彿とさせる。
いや、あそこまで汚い言動はとっていないな。もっときれいな感じだ。
心理学的な現象が物語の鍵となっている。
大きく分けて二つの依頼が死なせない屋に届くのだが、どちらのケースにおいても心理学が絡んでいる。
一つ目はノーシーボ効果だ。
ノーシーボ効果というもので人を殺す殺人犯からクライアントを守るという依頼である。
ノーシーボ効果とはプラシーボ効果と真逆の効果をもつもので、思い込みが人に悪影響を与えるという心理的効果のことだ。
この事件の場合犯人がターゲットに殺害を予告し、その予告を真に受けたターゲットがノーシーボ効果によって勝手に死に陥るという流れである。
が、実際にノーシーボ効果を発現する人は稀であるようだ。
暗示にかかりやすい人限定の効果なのかもしれない。
二つ目は解離性同一性障害を患った殺人鬼である。
解離性同一性障害とは二重人格のことであり、過度な心理的ショックへの防衛反応から無意識下で別人格を作り出してしまう病だという。
別人格だなんて信じられなーい。
心理学をかじったこともないからよく分からないのだが、とりあえず勉強になったなと思う。
物語への感想があまり思い浮かばない。
作者への冒涜に値する発言だ。
あまりキャラや事件に感情移入できなかったからだろうか。
好みの問題である。
死なせない屋に限った話ではないが、やっぱり未知の世界を堪能できるというのは小説の大きな魅力だ。
それに事実をもとにした描写もたくさんあるので存外学びになる。
今回でいえば、医師国家試験の難易度の高さだったり、心理学であったり、些細なことだがそういうものを知れた。
そういう点で小説はそこらの娯楽と一線を画している。
なんだこの締め方。
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