スクリーンショット_2020-01-13_18

〜タピオカ屋さんで地域の若者をつなぐ〜ウェブマガジンNo.1 埼玉県本庄市 田邊愛恵さんインタビュー

「タピオカ屋さんを開いたことで、高校の枠を超えた地域とのつながりができました」
そう話すのは、埼玉県本庄市在住の高校生、田邊愛恵(たなべまなえ)さんです。地域の活性化を目的に本庄市で期間限定のタピオカ屋「パールジュリアン」を開いたり、インスタグラム等のSNSを通して地元の情報を発信していくなど、地元本庄を盛り上げるために様々な活動をされています。
今回、地域を盛り上げていくために必要なことや、地域の課題について、愛恵さんに語っていただきました。

蓑田:タピオカ屋さん「パールジュリアン」を開きたいと思ったきっかけはどのようなものでしたか?

愛恵さん:私が地域に関わる活動を始めたいと思ったのは高校1年生の時です。本庄市が主催する学生を対象としたイベント(※1)に参加したことをきっかけに、学生が住みやすい街を作りたいなと思うようになったんです。その流れでタピオカ屋さんを開くことになりました。

蓑田:なぜ「タピオカ屋さん」を開きたいと思ったのですか?

愛恵さん:タピオカ屋さんを開きたいと思ったのは、普通に流行っていたからです。(笑)
インスタのフォロワーに聞いたら、本庄にもタピオカ屋さんを作って欲しい!!という意見が多数ありました。本庄には ゴンチャ(※2)などのタピオカ屋さんがないので…

蓑田:でもいきなりタピオカ屋さんを開きたい、と思ってもなかなか1人では開けないと思います。どのようにして開いたのですか??

愛恵さん:以前、本庄市に3日間限定という形でタピオカ屋さんを開いた方がいて、その方にフェイスブックでメッセージを出して、協力していただけることになりました。

蓑田: メンバーはどのようにして集めたのですか?

愛恵さん:メンバーはインスタで集めました。私と同じ学校の人だけではなく、本庄市内のいろんな高校からメンバーが集まり、驚きました!!全く知らない子も来てくれて、高校の枠を超えたつながりができたことはとても良かったです。

蓑田:実際にタピオカ屋さんを開いてみて、どのような反響や発見がありましたか?

愛恵さん:「タピオカ屋さん」ということもあり、特に学生など若いお客さんに多くきていただきました。中には「私も地域のことに興味があるので、よかったらメンバーに入れて欲しい」など声をかけていただいたこともあります。反響も大きく、市のイベントなどに参加した時には、「タピオカ屋さんの人だ」と言われたこともあります。(笑)
本庄では、学生がこうした活動をすることがあまりないので、活動を通して新たな繋がりが生まれたことは本当に良かったと思っています。

画像2

2019年8月に本庄で開いたタピオカ屋さん「パールジュリアン」

地域で活動をする中で感じた課題

蓑田:タピオカ屋さんを開くなど、積極的に活動していく中で、何か課題などはありましたか??

愛恵さん:活動をしていて、大人との関わりが一番難しいな、と思いました。自分自身は地域を盛り上げていきたいと思い活動をしているのに、「文化祭気分でやっている」などと思われてしまうこともあったように思います。

蓑田:今の行政がやっている「地域」の取り組みは、市民の目線、もしくは若者の感覚と、少しかけ離れてしまっているところもあると思います。行政だけに限ることではないと思いますが、やっぱり地域に若者が関わりにくい雰囲気がありますよね…

愛恵さん:タピオカ屋さんを開いた時にも、学生が「これをやってみたい」というアイディアを出しても、大人に「現実的じゃないよ」と否定されることが結構あって、もう少し学生や若者を応援してほしいなと、思ったことがあります。
でもそこで活動を終わりにしてしまうと、一緒にやりたいと言ってくれた人や学校の人など、活動を応援してくれている人も沢山いるので、丁寧に説明しながら、負けずにやっていくしかないと思っています。

蓑田:新しいことをやろうとすると否定されてしまう雰囲気って地域で活動すると必ず感じることだと思います。

愛恵さん:そうですね。このようにズレが生じてしまうのは、大人と、若者の間で仕入れる情報が異なっているという点もありますよね。

蓑田:確かに SNSが普及したことにより、ここ10年間で、世代間での情報格差や分断はますます激しくなってきているようにも感じます。

愛恵さん:SNSに関しても、私たちは、インスタやツイッターなどをメインに発信することが多いと思いますが、年配の方は、フェイスブックをメインで使っていることが多い。なので、年配の方は若者の情報をSNSで見ることは少ないし、逆に学生も大人の情報を得る機会は少ないんですよね。

蓑田:そういう点でも、地域で活動したいと思っていても、なかなか若者が入りにくい雰囲気がありますよね。

愛恵さん:そうなんですよ!!意見を言っても、違う風に捉えられたりとか… 多分、流行りのものとかも、ちょっと違う風に変えられちゃうことがあって、そこが一番難しいなと…

蓑田: 他にはどのような課題がありましたか?

愛恵さん:タピオカ屋を開いたことで、いきなり地域が活性化する、ということはないと思います。持続可能な形にしていくことは課題だと思いました。

蓑田:「地域活性」に取り組む上での課題としては、イベント開いたその時は活性化するのですが、結局一過性のものになってしまうという問題点は確かにあると思います。持続可能な形にしていくためには、同じ思いを持った人を増やしていくことが大切ですね。

本庄市の地域コミュニティー

蓑田:今の本庄市が抱えている課題は?

愛恵さん:本庄の課題としては、他の地域と同様に少子高齢化が進んでいるということだと思います。若者より年配の方の方が多いので、行政の政策も年配の方優先になってしまっていて、学生など若い世代の声がなかなか届いていないと感じています。

蓑田:やはり、学生など若い人たちの人口は減ってるのですか?

愛恵さん:そうですね。若者の人口は減ってると思います。地元の小学校も、私が小学生の時は4クラスあったのですが、今では2クラスしかないと聞いています。でも本庄には高校が3つくらいあって、本庄市に来る学生の数自体は多いので、学生に未来はあるのではないかと思います。

蓑田:買い物などに行く時はどこへ行くのですか?

愛恵さん: 本庄には大きなショッピングモールとかがなくて、1日潰せる場所がないので、友達と買い物したり、遊んだりする時は高崎や熊谷に行ってしまいます。
だから逆に本庄の人と本庄市で遊ぼうっていうのがあんまりない…

蓑田:東京とか大宮に出ていってしまう人も多い?

愛恵さん:そうですね。東京や大宮などの都会に比べたら住みにくいし、出て行ってしまう人も多いと思います。でも、本庄の若者は地元愛が強い人が多いと聞いたことがあります。本庄市のアンケート(※3)によると、本庄にずっと住んでいたいと答えた市民は65%に達するとのことです。そう考えると、他の地域と比べて出て行ってしまう人は少ないのかな??…

蓑田:本庄は町内会や近所の人との交流など、地域のつながりは盛んなのですか?

愛恵さん:町内会はあるのですが、年配の方が多いです。なので正直、学生は参加しにくいという感じですね…
ただ、本庄まつり(※4)という、結構大きなお祭りがあるので、そこで若い人も、町内ごとにお神輿を担いだり、山車を出したりしています。祭りを通して、同じ町内の学生と大人が、コミュニケーションを取る機会になっていると思います。あと、隣の家に住んでいる人などとは小学校が同じで親同士も仲が良いので、結構話すこともあります。

蓑田:それはすごい!!都会のマンションだと隣に住んでいる人すら知らない、ということもありますからね…
僕の住んでいる地域の町内会は、一応祭りはあるのですが、新しく地域に引っ越してくる人がほとんど参加してないので、どんどん高齢化が進んでしまっています。

愛恵さん:本庄は、昔から住んでいる人が多いので、新しく人が入れ替わるということはあまり聞かないですね。同じ小学校だった人が、高齢になっても同じ地域に住んでいるという話もよく聞きます。だからこそ、新しく地域に入ってきた人は、町内会など既存の地域コミュニティーに参加しにくいだろうな、とも感じています。

地域として外国人労働者をどのように受け入れていくか

蓑田:本庄には外国人労働者の方はいるのでしょうか。

愛恵さん:工場が山の方には結構あって、外国人労働者は割といる方だと思います。
小・中学校の頃もクラスに2人程はいました。ブラジル国籍の人が多かったと思います。

蓑田:これから、日本全国で外国人労働者は増えていくことでしょう。そうなった時に、外国人の方々が地域で孤立してしまったり、行政の支援が受けられないといった問題も生じてくると思います…

愛恵さん:そう!そうした問題は本庄にもあって、一緒にタピオカ屋さんをやったメンバーと、外国人が地域に溶け込めるようにしていくためのイベントを開いてみたい、とも話していました。

蓑田:そうなんですね!!近年、既に多数の移民を受け入れている国では、移民への排外主義が蔓延しています。イギリスではEU離脱の原因にもなっているし、トランプ大統領の国境に壁をつくる、という発言は世界に衝撃を与えました。日本も他人事ではなくて、どうしたら外国人の方々と共存していくことができるのか。外国人を受け入れる体制を、行政が用意するのはもちろんですが、地域・市民が自発的に行っていくべきだと思います。
そのためには、日常の場面で、国籍や職業などの属性に関係なく参加できる、多様性ある地域コミュニティーを作っていく必要がありますね。

愛恵さん:やっぱり、都会に比べて、田舎は人のつながりが強い。だからこそ、田舎であればあるほど、そうしたことを考えなければいけないのかな、と思います。

SNSをどのように活用し発信していくか

蓑田:地域の内外に新たな繋がりを作っていくためには、どのような取り組みが必要だと考えていますか。

愛恵さん:まずは、SNSを使って情報を得たり、発信していくことが大切だと思います。SNSだと、実際に行動するより気軽に発信できるし、見ている年齢層も同じ年齢層なので、それだけ仲間も増やしやすい。

蓑田:でも、SNSはどうしても、ネット上で完結してしまって、特定の地域の利用者に対してPRしていくことは難しいのでは??

愛恵さん:インスタとかだとハッシュタグや位置情報とかを付けて、特定の利用者に対して発信していくことも可能だと思います!!

蓑田:確かに。ツイッターとかだとネット上で完結してしまう、ということもあると思いますが、インスタが主流になってきてからは、その流れは変わってきたと思います。日本全国の生活者の移動行動の実態を知るためのアンケート調査「Move実態調査2019」(※5)によると、2年前の調査と比べて、20代女性の「移動回数」が1.2倍になっている。インスタなどのSNSをきっかけに、新しい場所に足を運ぶ人が増えてきているのだと思います。若者を地域に呼び込んでいくためには、注目のトレンドなど、流行を意識したSNSの運用をしていく必要もあるのではないでしょうか。

蓑田:愛恵さんはライブ配信のチャンネルもやられていると聞きました。

愛恵さん:個人的ではありますが、イチナナライブというものを使って配信をしていて、フォロワーは217人(2019年末現在)います。でも、本庄市のことや地域のことを直接PRしても、あまり伝わらないと思うので、今はただ単に話しているという感じです。私は吹奏楽部に6年間居て楽器が弾けるので、ライブ配信で楽器を弾いたりとかしています。

蓑田:え!!そんなに多くの視聴者がいるのですね。視聴者はどうやって増やしていったのですか?

愛恵さん:やっぱり配信時間などには気を使っています。ほぼ毎日配信しているのですが、長くやれば視聴者も増えるし、SNSと同じで配信する時間帯も考えています。あと、インスタでいいねを増やすために工夫をするのと同じように、ライブ配信にもサムネ(※6)があるので、その画像を工夫して撮ってみたりとか、そんな感じでライブ配信を行っています。

地域で活動をする若者を増やしていくために

蓑田:愛恵さんは、市が主催したイベントに参加したことをきっかけに、地域の問題や、社会問題に関心を持つようになったとおっしゃっていましたね。しかし、地域のことや社会問題について関心があっても、実際に行動に移すことができていない若者は沢山いると思います。

愛恵さん: そうですね。現状として、高校生がいきなり一人で活動するというのは、意外と難しいし、恥ずかしいと思います。私の場合、市が主催するイベントの告知を学校の掲示板で見つけたのですが、そのイベントのテーマが「駅北口側の活性化」というものでした。私の家が駅の北側にあるので参加してみたいと思ったのです。

蓑田:自分の住んでいる地域の話など、生活に関わる身近なことであれば活動に参加したいと思う若者も増えるのではないでしょうか。
最近、過疎化が進んでいる農村の村などに行き、地方を盛り上げようと活動している若者は多くなってきています。しかし一方で、自分の生まれ育った地域のことって、あまり関心のない人が多くて、知っているようで知らないこともたくさんあると思います。
「地域活性」と言うと、「観光PR」など外の発信に重点が置かれがちですが、まずその地域に住んでいる人たちが繋がり、魅力を再発見していくことが大切だということですね!!

愛恵さん:地域の魅力などを、まずは市内の人に知ってもらいたいなと思っています。
実は地元でこんな面白いことをしている人がいるんだよとか。実はこういう魅力があるんだよ。とか、そういうことを活動していく中で伝えていきたいですね。

蓑田:今日はありがとうございました!!

※ 1 本庄市が主催したイベント「こんな街が欲しい!住民投票~ほしければ作ってしまえまちの未来」
※ 2 ゴンチャ(貢茶) 2015年に日本に上陸した台湾の台湾茶専門チェーン店。日本ではタピオカ専門店として10代、20代の女性を中心に人気を集めている。
※ 3 本庄市 次期総合振興計画まちづくり市民アンケート調査報告書(1)2p “定住意向について”
※ 4 本庄のお祭り。町内ごとに分かれ、明治時代に作られた10基の山車が一斉に出てくる光景から、北関東随一の山車とも言われている。
※ 5 Move Design Labが調査した日本全国の生活者の移動行動の実態を知るためのアンケート調査「Move実態調査2019」
※ 6 サムネイル画像の略。加工・縮小した画像のこと。Youtubeなどでは、視聴者を増やすためにサムネイル画像を加工している投稿者も多くいる。

この記事を書いた人・取材した人

蓑田道(みのだたお)東京都港区出身・在住の高校3年生。学生団体クリネクション共同代表。名古屋の情報サイト「NAGOYAPRESS」編集者。趣味は旅行、地図を読むこと。地域の再生を通して地域から社会を変えていくことを目標として活動をしている。

画像2

\まちづくり・地域情報共有グループの加入者募集/

最後まで読んで頂きありがとうございます。クリネクションでは、全国の地域で活動をしている学生同士のFacebook情報共有プラットフォーム「地域活性・まちづくり情報共有グループ」を運営しています。「地域で活動しているけどなかなか仲間が集まらない」「まちづくりに関心がある」など、地域・まちづくりに関心・興味のある方は、是非ご参加ください🙋‍♀️

⬇︎申請はこちらから⬇︎

https://www.facebook.com/groups/2189170158062764/

SNSのフォローもお願いします😀

Twitter

https://twitter.com/crennection

Instagram

https://www.instagram.com/crennection/?hl=ja

Facebook

https://www.facebook.com/crennection/?modal=admin_todo_tour

ホームページ

https://vmfc5971.wixsite.com/crennection

取材していただける方を募集中!!

クリネクションではウェブマガジンに掲載する取材対象者を募集中です。地域で活躍している方々で、取材を希望される方は以下のメールアドレスまで、お名前、活動内容等を記入の上、お送りください。

crennection@gmail.com

クリネクションの取材やミーティングなどにかかる費用は、メンバーの自費で賄っています。継続的に活動を続けていくためにも、支援をして下さると助かります😀 支援していただいたお金はウェブマガジンの取材活動に使用させていただきます。