言葉の力を信じる
翻訳を仕事にしていると、ときどきその地味さに劣等感を覚えることがある。
「伝える」仕事なのに、華やかなデザイン、ダイナミックな映像などに比べるとどうしても見劣りするし、「この翻訳すごい」と思っても拡散しづらい。
そんな時アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観ていて気づいたことがあった。
映像美やストーリーにももちろん心動かされ号泣させられるのだけど、一番ぐっとくるのが実はエンディングの言葉達。
毎回エピソードの最後にまとめみたいな感じで一文が表示されるのだけど、そこに並ぶ一行にも満たない文字群に最も心を打たれる。エンドロールが流れる直前のタイミングで改めて作品の世界観に引き込まれ、不思議な余韻が残る。
そして通常だとスキップするオープニング映像も、このアニメに限っては歌詞が気に入っているので何度も再生してしまう。
さよならは 苦くて
アイシテルは 遠いにおいがした
例えようのない この想いは
とても怖くて だけど とても愛おしくて
わたし なんで 泣いているんだろう
心になんて 答えたらいい?
言葉はいつでも 語るでもなくて
そこにあるばかり 募るばかり
私が感じている言葉の本質のようなものが、ここに書かれている。
まるで共感覚のように、言葉から「苦味」や「遠いにおい」を感じることが私にもある。
そしてペンは剣よりも強しという諺にもあるように、言葉は刃にもその逆にもなる。
寝たきりの祖母のお見舞いに行った時のこと。
祖母は私のことも分からないくらい意識が混濁していたのに、優しい言葉をかけるとポロポロと涙を流した。
普通の声かけでは無反応なのに、優しい言葉の時だけ反応した。
その時私は、言葉には「波動」のようなものがあると確信した。
そして一人の時でも絶えず心には言葉が浮かんだり、心に向かって言葉をかけたりしている。
言葉とは形なきものなのに、言葉にした途端想いや考えが形になり、人の心を動かすから不思議だ。
逆にヴァイオレットは「アイシテル」という音の響きから入って、徐々にその意味を見出していく。
「アイシテル」に突き動かされた彼女は、この言葉の波動からとてつもない何かを感じ取ったのではないだろうか。
やはり、言葉はすごい力を持っていると改めて思った。
これからも私は言葉の力を信じ、無限の可能性を目撃していきたい。
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