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はかない弐ツ星 〜再編集〜

※この記事は、過去記事のリミックスです※

電助どんは、
なんぞ、隠しちょる。

ワシらぁ、親友じゃあ!!

隠すことなんざぁ、
なん〜にも、ねぇ!!

仏様に、誓って、じゃ!!

電助どんは、いつも、
そう、いっちょった。

ワシが九十五、六歳。
電助どんがアラクの頃、じゃろうか。
(注:アラク=90歳前後のこと)

それが、三年前のことじゃ。

たしかに、言っちょった。

じゃがの、、

隠しちょるんじゃぁ、、
なんかを、隠しちょる。

まちがいなく、隠しちょる。

はじめはぁ、ワシやぁ、
そのぉ、隠しごとなんざぁ、
されるのが、嫌じゃった。

隠すの、やめぇや!!

言わにゃ、わからんから。

はじまらんから、
言ってやったんじゃ。

隠すの、やめぇや!!

野手note老人会の会合で、おもいきって、
皆の前で、言ったんじゃ。

もう一年くらい、前のことじゃ。

なんにも、隠しとらんよ。
なして、そげなこと、言うんじゃ?

電助どんは、そう、いいよる。
にこにこしながら。

でっへっへっへっ

いつも、そうじゃ。
呆けやがりおって。

トボケとるんか、
ほんまにボケてきたんか、
わからんじゃないか。。。

ワシの目はごまかせんぞ!
ワシも、もうろく、してはおるが。

いうて、やっぱり、
隠しちょるじゃないか!!

ワシやぁ、心の中でいうた。

さすがに、これ以上いうたら、
大人げないからのぅ。。。
いや、老人げないからのう。。。
お互い、そういう歳じゃし。。。

しかし、、腹がたつんじゃ。。。
これは、どうもならん。
気が短くなるのう。。。
先が短くなると。。。

ホンマに、大事にしちょる。
その、隠し事を。
巧妙に、隠しちょるんじゃ。

そんなに、隠したい何か。
絶対に、おてんとさんのもとに、
さらしちゃる。

嘘つきは、どろぼうの始まり、
じゃしのぅ。。。

ワシャ、電助どんにだけは、
日陰モノになって欲しくないんじゃ。

親友、じゃしのぅ。

ふぉふぉふぉふぉ、、、

ふぉ、、、ゴホっ ごフォっ

それから、、
どのくらい経ったかのぉ。

もう、忘れてしもうたが。

まぁ、その、しばらくあとじゃ。

隠しとる場所、モノを、
ついに見つけたんじゃ!

履いちょった。

実は、履いちょったんじゃ。
黒い、四角いモンじゃった。

まぁ、いうたら、ふんどしじゃ。
ワシからみたら。
ふんどし、じゃ。

ワシでも、さすがにわかる。
(ちなみに、わしは、赤じゃがの。)

しかし、じゃ。。。

隠し事は、よくなかろう。

まずもって、ただの黒い四角じゃ、
なんだかわからんしのぅ。

とにかく、隠しとる。

その黒い四角が、
ワシと、電助どんの間に、
溝をつくっとったんじゃ。 

絶対そうじゃ。間違いない。

ワシの目はごまかせんぞ!
ワシも、もうろく、してはおるが。

とにかく、隠しごとなんざぁ、
されるのが、嫌じゃった。

とにかく、嫌じゃった。
しかし、、、
そのうちに、じゃ。

いまさらじゃが。

ワシも。
人の子じゃのう。

その、黒い四角が、
欲しくなってきたんじゃ。

ワシも、この歳になって、
そんな感情が湧き出るなんざ、
おもいもせなんだ。

じゃが。。。

欲しい。

欲しいもんは、ほしいんじゃ。
その、黒い四角が欲しいんじゃ。

そうしたある日。
ついに、ワシは。その、
黒い四角を奪うことに、
成功したんじゃ。

おどろいたことに、
電助どんは、きがついちゃ、おらん。

電助どんは、そういう人じゃ。
ええやつ、なんじゃ。
だから、ワシも、大好きなんじゃ。

ワシも、、、年甲斐もなく、
有頂天になってしまってのぉ。。。。

そりゃ、そうじゃろ。
久方ぶりの、コーフンじゃぁ!!

さらに、得意になってのぉ。。。

電助どん!!
黒い四角は、こっちじゃぞ!!!
ふぉふぉふぉ、、、、ゴホげほ。。

まぁ、宣戦布告じゃわな。

しかしじゃ。。。

さすがは、こちらも。
百戦錬磨の、電助どん。

まだ、履いておったんじゃ。
黒い、四角のを、のぅ。

安心してくだせぇ。
あっし、もう一枚、履いてやす!!

でっへっへっへっ

いつもこの笑い方じゃぁ。。。
腹が立つのう。。。

しかしじゃ。

正直、ワシも安心した。

ここだけの話、
ワシも、ちょっと、
不安じゃった。

電助どんの秘密が、
野手note老人会の、
みなの衆にさらされる。

それが、この歳になって、
やっとできた、親友である、
ワシの手によってなされる。。。

それが、親友のすることかっ

ワシの心の中。
おてんとさん、ほとけさんが、
とくとくと、問いかける。。。

それが、親友かっ

正直、ちょっと、後悔しちょった。

この歳でも、失敗、するんじゃ。
まだまだ、修行が足りんのぅ。。
ワシ自身への、戒めイマシメじゃ。

だから、もう一枚、
履いててくれたことに、
感謝したんじゃ。

それは、ほんとうじゃ。

ワシは、せっかく奪った、
黒い四角を、もうどこかにやって。

きれいさっぱりに、忘れたんじゃ。

忘れるのは、とくいじゃからの。
ふぉふぉふぉふぉ、、、
        ゴッ!!ゲボっ

ところが、、じゃ。

その、数日後。

千載一遇センザイイチグウのきっかけが、
訪れたんじゃ。

まさに、思し召しじゃ。

なんと、まさかの、
おしずさんが。

黒い四角を、電助どんから、
奪ってきたんじゃ。

おしずさんは、まだまだ若い人じゃ。
おそらく、70前後じゃろう。

いやいや。。。
女性の年齢を確かめるほど、
ワシも野暮じゃないわい。

(しかし、ぴちぴちじゃ。)
ふぉふぉ、、ゲホッ!!ゲホッ!!

まぁ、、とにかく、じゃ。
さすが、若いのぉ。

おしずさんは、ワシが、
その黒い四角を欲しがってたのを、
覚えてくれてたんじゃ。

さすがは70代じゃ。
記憶力が違うのぅ。。。
さらに、身のこなしが、
違うわけじゃ。

さっと、奪うんじゃから。
さすがじゃ。。。

とにかく、じゃ。

ワシの手元に、最後の一枚。

その、黒い四角が手に入った。
そういう、わけじゃ。

ワシはこうみえて、悪い翁じゃ。

善人ぶるのは得意じゃが、
とにかく自分の好き勝手しかしない。

ワシは、ずっと、そうしてきたんじゃ。

だから、もう老い先短いこのあとも、
そうするつもりじゃ。

いまさら、どこのだれでも、
どうのこうの、
いわれとう、ないわい。

ワシは、
ワシの好きなようにする。

しかしじゃ。。。。

ワシは、電助どんとは、
仲良くなりたいんじゃ。

その気持ちは、本当じゃ。

こんな感情は、
90年以上、生きてきて、
初めてなんじゃ。

ほぼ、見ず知らず、なんじゃ。

野手note老人会で、仲良くなったんじゃ。
野手note老人会は、不思議な場所じゃ。
ワシも、最初は、恐る恐る、
じゃったがの。

まぁ、慣れじゃ。これも。
とはいえ、じゃ。。。

そんな、どこの、馬の骨とも、
しらない人と、気が合うなんざ。 
知らんかったがの。

しかし、
気が合う人も、居るんじゃ。
ワシも、初めて、なんじゃ。

じゃから、の!!

仲良くなりたいんじゃ!!
これは、悪いことじゃないんじゃ。

自分で、自分に、
言い聞かせるんじゃ。

ちかごろじゃぁ、、、
なんだか、、朝だか夜だか。

わからないような。
そんな日も、
多くなってきたんじゃ。

歳の、せいじゃの。

もう、そろそろ、
お迎えがちかいのかのぅ。。。

自分でも、わかるんじゃ。

それでも、いいんじゃ。
もう、十分じゃし、のぅ。

それで、その、あれじゃ。
おっとぅ、、、はぁ。

あやうく、
忘れるとこじゃった。。。

おしずさんが、とってきた、
その黒い四角によって、じゃ。

これで、ワシと、電助どんの、
間に合った、わだかまりが、
ついに、無くなったんじゃ。

ワシも、もうじき、じゃが。

心残りのひとつは、これで、
無くなったんじゃ。。。

そういうことを。
ずっと、ずっと、
考えとったんじゃ。

だから、
これで、良かったんじゃ。

自分を、言い聞かせ続けたんじゃ。

しかしじゃ。。。

驚いたことに、じゃ。。。

電助どんは、まったく、
気が付いてないんじゃ。

気にもしてないんじゃ。
安心、しきってるんじゃ。

そりゃぁ、まぁ、そう、
じゃろう。

いまさら、この歳になって。
なんぞ、何か、おこるなんて。
考えてもみん、じゃろう。

しかしじゃ。。。

ワシも、かすれた視力じゃが。
もう、みえてしもうたんじゃ。。。

もろに、じゃ。。。
もろに、みえたんじゃ。。。。

その、シワシワがのう。。。
シワシワの、しょぼしょぼ、
がのう。。。。

そりゃぁ、そうじゃ。

わしも、もう、いよいよ、
百が見えちょるが。

電助どんも、そりゃぁ、
アラク、まっさかりじゃしの。

そりゃぁ、そうじゃ。
歳、相応、じゃぁ。

ワシが、、、この歳になって。。。
どうにかしたかったのが。

この、あられもない、姿、
じゃったなんて。。。

もう、なんとも、おもわんの。
ワシも、それなりに、いろんな、
経験をしたからの。

さすがに。
なんとも、思わん。

ただただ、何とも、思わん。

しかし、のぅ。。

電助どんも、ふつうにすごしとる。
まぁ、そうじゃろうの。

あたりまえじゃ。
シワシワの、しょぼしょぼでも、
のぅ。

あたりまえじゃ。
こんこんちき、じゃ。

ワシは、改めて、電助どんが、
好きになった。

清々しい翁じゃ。

あっぱれ、じゃぁ!!!

間違ってたのは、ワシじゃ。。。

ワシは、悪い、じいさんじゃ。

いじわるで、どうしようもない。
いじわるな、性悪じいさんじゃ。

電助どんは。

最初から、隠す気なんか、
なかったんじゃ。

むしろ、ワシのほうが、
隠してたんじゃ。

人のふり見て我がふり直せ。

自分がされて嫌なことは人にするな。

何度、偉そげに、
口を酸っぱくして、
周りに言ってきたことか。。。
孫にも、ひ孫にも、のう。

なんのことはない。。。

ワシが。この、ワシが、じゃ。

それは、まさに。
ワシがしとることじゃ。

無駄遣い、しちゃだめじゃよ!!
でっへっへっへっ

電助どんは、そういって、
いつものように、笑ったんじゃ。

笑って、そう、言ったんじゃ。

電助どんは。。。
わかっちょったんじゃ。
さいしょから、じゃ。

わかっちょった。。。

優しすぎるんじゃ。。。

その優しさは、、、
ワシには、、つらいんじゃ。

そうじゃ。
そう、なんじゃ。

電助どんは。
さいしょから、分かっていたんじゃ。

知ってて、そうしてくれたんじゃ。

ワシが、ひねくれてること。
ワシが、めんどくさいこと。
ワシが、電助どんすら、
うたぐってるこっと。

そのうえで、じゃ。
ワシが、電助どんから。

ふんどしを奪おうとしてること。
分かっていて、させた。

わざとに、そう、させたんじゃ。

なぜなら。

電助どんにとって、
ワシが、親友だからじゃ。

親友には、隠し事はしない。
だから、わざと、くれたんじゃ。

ワシが、ばかじゃった。

ワシが、おろかじゃった。

いまさら、いまさら、じゃが。。
取り戻せるもんじゃない。

それくらいは、さすがにわかる。
ワシも、はっきりとわかる。

ワシも、もう、隠さない。

もう、何も、履かない。

赤いふんどしなんぞ、
もう、いらない。

・・・・・・・・・・・・・・・・

そうして、二人は星になりました。
ひっそりと、仲良く輝く、
二つ並んだ星。

二人の老人は、どこか遠くへ
連れていかれたのでした。

そりゃ、そうです。
何も履いてないのですから。
もとより、履く気も無い。
絶対、履かない。

遠くへ連れていかれようが、
どうしようが。
どっちみち、すぐでした。

まぁ、そうですよね。
すぐです。
二人は、星になったのです。

人は。その二つの星を。

はかないふたつぼし

そう、呼ぶようになりました。

誰かと、仲良くなりたい!
その、二つの星に。
強く願うと、願いが叶う。

いつしか、そのように
言われるようになりました。

その二つの星を見る時、人は皆、
生まれたままの姿になります。

隠すことなんて何も無いし、
隠す必要が無いからです。

さぁ。

あなたも、
夜空を見上げて御覧なさい。

全てを。
さらけ出したなら。

生まれたままの姿。
生まれたままの心。
さらけ出したなら。

はかない二つの星が
あなたにも見えるかも
しれません



おしまい




☆追記☆
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