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短期留学へ向けて動いていた25年前

短期留学というと、一般的には主に観光ビザで滞在できる期間 (最短1週間から3ヶ月ほど) での留学を指すようなので、ワタシが行った4ヶ月間というのは普通の「留学」の部類になるようですが、感覚的にはものすごく短い期間で英語力も十分身につかないまま帰国することになったため、ワタシ自身は「短期留学」と記録しています。

1998年5月〜9月の間 (16週間)、ワタシはロサンゼルスの語学学校に留学をしました。
そもそもは「映画に携わる仕事がしたい」というぼんやりとした目標があり、「それなら映画の国に行こう」と安易に考え、「まずは英語がわからないと」と語学留学することを決めていたんです、20代前半に、なんとなく。
その時はアルバイトをしていて、留学するための資金を稼ぐ感じでのんびりお金を貯めはじめていたんですけど、「絶対に留学するぞ!」みたいな熱意はさほどなかったためか全然貯まる気配がなく、留学は夢で終わる感じだったんですね。
それが、自分でも驚くくらいのスピードで人生に動きがありまして、24歳で結婚が決まったんです。
あれよあれよと状況が変化していく中で「留学したかったんだ」という話をポロッとこぼした際に、「だったら行ってこい」と相手に背中を押されまして、結婚する前に滑り込み留学が決まったわけですよ。

当時はインターネットなんかはないので、パンフレットで留学プランを探すのが普通で、旅行会社や書店に置いてあるパンフを片っ端から取って来ては、情報を調べまくりました。
行く国は決まっていたので、期間、費用、内容なんかを吟味して目星をつけたんですけど、用意すべき書類等申し込み時に準備するものが多くて、早くも挫折しそうだったんです。
めんどくさいことは嫌いなはずが、この時は珍しくやる気がありまして、尻に火が付いたように「留学への準備」に時間を費やし、留学の申し込み自体は完了しました。

が、この後がものすご〜く面倒でしてね。

パンフレットで見つけた留学斡旋の会社が、学校 (留学先) への入学申請はしてくれたと思います。それに必要な書類を用意するよう言われた記憶があるので。
当時の記録が残っていないので記憶を思い起こすと、4ヶ月以上の滞在にはビザが必要なので、ビザ申請手続きをしないといけません。
学校に入学するのでビザは学生ビザ。その申請には入学証明書がいるんですが、その証明書を入手するためには銀行の残高証明を用意しないといけないとか、順序立てて準備を進めないといけませんでした。

で、入学許可証が自宅に届いた後の手続きは、全て自分で行いました。
「手続き代行」なんてのもあったんですけど、手数料が安くはなかった(当時で数万円だった)ので、全て自分でやることにしたんですね。
たしか、航空券 (往復) の手配と、ビザの申請。

この「ビザ申請」が、思いの外大変だったんですよ。
申請は、「アメリカ大使館に行って書類をポストに入れるだけ」なんですけど、その前にビザ申請料金を銀行から振り込まないといけないんです。それも、アメリカ大使館前にある銀行から振り込め、っていう指定つき。
振り込んだ証明書を提出書類に入れないといけないので、港区虎ノ門まで事務用品(ハサミ、ノリ、テープなど)を持参し、銀行の記帳台 (机) の端っこで必要書類をまとめる、ってのをやったわけです。
周りにも同じようなことをしてる方が数人いたんですけど、一人でいくつもの封筒を持っていたので、おそらく代行の人だったんじゃないかと思います。

実はワタシ、書類の記入に少し不安がありまして、封を閉じるか迷っていたんですね。
不備があると書類が戻ってきてしまうので、また虎ノ門まで出しに来ないといけない。
そんなのは絶対に避けたかったんです。
で、すぐ近くにいる、薄いグレーのかっちりめのスーツを着たお姉さんを捕まえて
「すみません。この部分なんですけど、この書き方で合ってますか?」と尋ねてみました。
すると、「は??」っていう冷たい反応と共に「たぶん、大丈夫じゃないですか?」っていう超ドライな返事が。

え〜〜〜〜。
すごく不安。
でも仕方がないので「ありがとうございま〜す」と、アゴをちょいと前に出しながらお礼を言いましたけど。

こんなこと聞いてくるヤツ、いないんでしょう。
なんか、ごめんね。
封筒いっぱいあるのに、話しかけちゃって悪かったよ。
でもさ、
もうちょっとさ。

聞かなきゃよかったと思いつつ、戻ってきませんようにと念を込めながら封を閉じました。
ノリだのを片付けてふと顔を上げると、銀行のおじさんが優しく微笑んでくれていて、少しホッとしたのを覚えています。

そして、書類を胸に、いざアメリカ大使館へ。
とっととポストへ入れて帰ろうと思ったんですけど、大使館の正面の門前に金網がついている青いバスが数台と結構な数の警察官がいて超ビビる、っていうね。
その間を、封筒を持ったちんちくりんがコソコソと通るので、ものすごくジロジロ見られるわけですよ。

違います。
怪しいものじゃありません。
ビザの申請です。
これ、書類です。

と、A4の茶封筒を真正面に掲げ、ポスト目掛けてチョコチョコと歩みを進めました。
いくつもの厳しい視線が突き刺さる中、無事にポストへの投函が終わると、振り向くことなくいそいそとその場を立ち去りました。

ビザの発行までは3〜4週間かかると言われていましたが、ワタシの場合は10日くらいで手元に届きました。
留学の申し込みをしてビザが届くまでは、2ヶ月程度だったでしょうか。
当時でもワタシのケースは早い方だったと思いますが、今はもっと時間がかかるかもしれません。

こうして留学の準備が整ったのは、たしか出発の3週間くらい前。
ビザの発行が遅くなっていたらと思うと今更ながら冷や汗が出ますけど、この時のワタシは「行く日が決まってるんだから間に合わせるだろ」くらいの上から目線で、心配なんか1ミリもしていなかったに違いありません。

こうしてめでたく、念願の語学留学に行くことになったわけですが、実際に出発してからの出来事はこれから少しずつ記事にしていくことにします。


#創作大賞2023 #エッセイ部門


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