見出し画像

ドタバタ米国留学記 #3 学校に行く

念願叶って24歳でロサンゼルスの語学学校へ留学するものの、出発したその日から「ろくに準備もせず出国してしまったことを大いに後悔する」っていう、先が思いやられる衝撃のはじまりからの、英語まみれの授業、寮での生活、クセのある人々など、たった16週間に起きたおもしろエピソードをたっぷりと綴ります。

レベルごとにクラス分け

語学学校のクラスはレベルに合わせていくつかに分けられていて、ワタシはレベル1の初級クラスでした (レベルは1〜4まであります)。
1クラス10〜15名くらい、カリキュラムは writing / reading / listening / speaking が月曜から金曜の午前中に振り分けられ、午後は応用的なレッスンなので先生によって内容が異なるんですけど、初級レベルのワタシのクラスではゲームみたいなのが主で、クロスワードパズルなんかをみんなでやることが多かったですね。

定期的にクラス分けテストが行われて、成績が良ければ一つ上のクラスに上がることができるらしく、ワタシが入ったタイミングはちょうどその時期だったようです。
ワタシのクラスは日本人が結構多かったんですけど、ハンガリー、パラグアイ、ブラジルと、日本ではあまり馴染みのない国の人もいて、とても新鮮でした。
レベルが上のクラスには、中国、韓国、台湾、アルゼンチン、トルコ、イタリア、ロシア、サウジアラビアなどいろんな国の人がいて、色とりどりの多国籍な学習環境でしたよ。

ワタシが入校した5月中旬というのは、大学生がサマーバケーションに入るタイミングで、ワタシが行った初日だけ学生で溢れかえっていて、その後はほぼ留学生のみ、大学の敷地内はものすごくガランとしていて、留学生の貸し切り状態になっていました。
サマーバケーション中、大学はガッツリお休みになって、大学生は寮を出る。
だから、大学生が一人もいなくなるんですよ。

いなくなっちゃうんだ。
ネイティブがいるから大学にある語学学校を選んだのに。
いないってどういうこと?
大誤算だわ〜。

5月中旬 ~ 9月上旬までがサマーバケーション。
ワタシの帰国は9月5日。
留学期間が、そっくり、まるまる、バケーション。

現役の大学生と友達になって、
アメリカにヒョイと遊びに来られる関係性を築いて、
そのうちアメリカに移住する。

っていう、ワクワクな妄想が一気に砕け散りましたよ。

まぁ、ここは気を取り直して「いろんな国から来た留学生と仲良くなる」にシフトチェンジしましたけどね。
ワタシは寮生活なので、ここでたくさんの人との交流がありますから、それを存分に楽しもうと思ったわけです。

ルームメイト

で、最初に交流が深まったのは、ルームメイトのファティマでした。
彼女はパラグアイの人で、たしか「国内線のCAをしていて英語の勉強に来た」と言っていて、年齢はワタシの2つ上だったか?美人で優しくとても穏やかな人でしてね。
クラスも同じで、食事も基本一緒。
そのうち、それぞれ仲の良い友達が出来て別々になることも増えましたけど、部屋が一緒なので毎日会話をしていましたから、とても仲良くなりました。
(ちなみに、寮生活をしている学生は学内のカフェテリアで食事をします。入寮時にミールカードが配布されるので、それを見せればいつでも利用できるというシステムです)

寮は2つに分かれていて、自分が住んでいる寮の人以外はカフェテリアで会う感じでした。
学校ではクラスが違うと接点がほとんどないので、カフェでの交流が結構大きいんですよ。
大体の人が、入校が一緒だった子とつるんで行動しますが、そこから少しずつ交友関係が広がっていき別行動になっていきます。
ワタシはそれに加えてルームメイトの友人とも仲良くなり関係が一気に広がったので、すぐにいろんな友達と触れる機会に恵まれました。

とにかく、ファティマは美人さんなので、メンズが寄ってくるんです。
「パラグアイの近くの国の人」が集まってくる感じ。
アルゼンチンとかブラジルとか。
彼女が話す言語がスペイン語だったので、メンズたちが部屋に遊びに来たりするとスペイン語人口が一気に高まり、英語よりもスペイン語を聞いてる時間の方が多い、なんてこともありました。
そこにポルトガル語も混ざったりするので、ここは南米か?と錯覚するほどでしたよ。
頼んでもいないのにスペイン語とポルトガル語を教えてくれたりして、なんだかんだ楽しかったですけどね。

ファティマの滞在は短く数週間で帰国してしまうんですが、その日のことはとてもよく覚えています。
彼女がアメリカを離れる前日は、別れを惜しむメンズたちが彼女を飲みに連れ出したりして、部屋にはワタシ一人だけ。
彼女に何かプレゼントしたいと考えていたんですけど、お国も違うし何がいいのか全く思い浮かばないっていう状態で、予想外に苦戦しましてね。
モノを買うとかじゃなく「ワタシに出来ることをしよう」と思い悩んだ末、絵を描くことに決めました。
とはいえ、適当な画材が手元にない。
用意する時間もなかったですし、かしこまった感じはイヤだったので、パラパラマンガ的なものなら出来そうだと「フェナキスティスコープ」を作ることにしました。

「回転式のパラパラマンガ」っていうんですかね。
『円盤に描かれた絵を鏡に向けて回転させて、スリット (細いすき間) を通して鏡に映った絵をのぞくと、絵が動いて見える』
というもので、イメージはこんな感じ ↓ なんですけど

これ、厚紙とペンとハサミがあれば作れるんです。

作り方を簡単に説明します。
厚紙にスリットが入った円盤を2つ作成して、ひとつは (パラパラ漫画のような) 少しずつ動くような絵を描き、もうひとつは真っ黒に塗ります。

これをハサミで切り取り、外表で貼り合わせます。
持ち手になる部分を厚紙で作り、円盤の中心と持ち手に穴を開けたら伸ばしたクリップを刺して、円盤がクルクル回るように調整しながら留めれば出来上がりです。

で、鏡の前に立って、裏側(黒く塗った面)を手前にして持ち、 (1箇所の) スリットを覗きながら鏡に映った絵を見て円盤を手で回すと絵が動いて見える、ってわけですね。

あたかも作ったことがあるかのように書いてますけど、実際に作ったことはない、っていうね。
この時、作れるかものすご〜く微妙だったんですけど、とにかくやってみようと、彼女が外出している間に黙々と製作しましたよ。
絵柄を難しくすると時間が足りないので、誰でも知ってる「ミッキーマウス」をチョイス。
簡単に、顔だけがクルクル回る感じにしてね。

当時はスマホなんかないですし、写真を撮る習慣もないので記録が残っていませんから、どんなのが出来たかはイラストで描きます。
たしか、こんな仕上がり↓

結構遅い時間に部屋に戻って来たファティマに、「明日は帰国だね」と最後の挨拶を交わして「プレゼント考えたんだけど思いついたのがこれで」と回転ミッキーを渡しました。
すると、なんじゃこりゃ?という正直な反応が。

そりゃそうだ。
こんなミテクレじゃ、なんのこっちゃわかるまい。

っていうので、ファティマの手を引いて鏡の前に移動し、彼女の後ろから手を回して「円盤のスリットから鏡を見て」と伝え、ワタシが円盤を回すと
「Wow!amazing!」
これ、作ったの?
すごくかわいい〜。
ありがとう。
本当にうれしい。

と言いながら、何度も回転させてパラパラ漫画を楽しんでくれました。
目に少しだけ涙が浮かんだあの笑顔は、今でもハッキリ覚えています。

彼女と一緒に過ごした時間は本当に良い思い出で、彼女がルームメイトでワタシはラッキーだったと心底思っています。
なぜなら、この後に訪れるルームメイトのクセの強さに愕然とするからです。

つづく・・・


次のお話はこちら↓

前のお話はこちら↓




みなさまのご支援に感謝します。