イラレの生成AIがデザイン業界に与える影響 Blog - 2023/10/12 Adobe MAX 2023
AIとクリエイティブの融合は、業界を劇的に変える可能性があります。特に、Adobe Illustratorのような長く使われてきたプロフェッショナル向けのツールに生成AIが搭載されると、多くのデザイナーがその影響を直接感じることになるでしょう。
生成AIの今後の進化によって、短時間でクオリティの高いデザインを生成する能力が手に入る一方、長年の経験とスキルが持つ価値が低下する恐れがあります。一部のデザイナーはこの技術を歓迎するかもしれませんが、他の人々は自分のスキルや経験の価値が低下すると感じるかもしれません。
ただ、この技術がデザイナーの仕事を完全に置き換えるわけではありません。むしろ、繁雑なタスクの省力化やデザインの仮説検証が容易になり、デザイナーがもっとクリエイティブな側面や、クライアントとのコミュニケーション、コンセプトの策定などに時間を割くことができるようになります。
生成AIを敵として捉えるのではなく、ツールとしての側面を理解し、自らのスキルや視点を更に磨き上げることが大切です。同時に、AIの進化に適応し、それを活用する能力も身につけることが求められます。
生成AIを適切に利用することで、デザイナーは自らのクリエイティブな視点や独自性を更に強化していくことができます。技術がどれほど進化しても、人間の感性や文化的背景、情熱や視点はAIには真似できません。
生成AIの技術進化のスピード:
以下は、画像生成AI「Midjourney」の1年間の技術進化を示した画像です。
左側の画像は昨年の8月に生成されたものです。当時はこの品質でも感動していたわけですが、1年後の今年の8月に生成した画像をご覧ください。同じプロンプトを使用していますが、信じられないくらい表現力が向上していることがわかると思います。
現在はさらに高品質になっており、写真と区別できないレベルになっています。たった1年の出来事です。
Adobe Fireflyもベータ版が生成する画像は、Midjourney等より明らかに劣っており、満足のいくレベルではなかったのですが、正式版ではかなり改善されていました。今回のAdobe MAXに合わせて、Fireflyの新しいモデルも追加され、さらに高品質になりました。
現在、イラレの生成AIはベータ機能であり、まだ不完全な仕様であることを理解しておくべきです。生成されるベクターデータの品質にも改善の余地があります。ただ、今回のFireflyの新モデルのようにバージョンアップによって劇的に改善されていきますので、期待してよいかと思います。
イラレ生成AIに関する記事:
報告会・勉強会に関する記事:
デザイン業界向け意見交換会
専門家の意見
感性や人間の経験はAIには再現できない:
これは部分的に正しいですが、AIの進化の速さやその潜在能力を考えると、多くの感性や人間の経験をモデル化し、再現することが将来的には可能になるかもしれません。
AIが文章を生成したり、音楽を作ったりすることができる現在、デザインの領域でも同様の進展が予想されます。デザインは単なる形や色の配置ではない:
確かにそうです。しかし、AIの能力が進化するにつれて、ブランドのビジョンや感情を理解し、それを具体的なデザインに変換する能力も向上してくる可能性があります。デザイナーの真の価値:
ここには完全に同意します。技術的なスキルやツールの使い方だけではなく、人間としての経験や感性、コミュニケーション能力はデザイナーの真の価値です。しかし、これはデザイナーが過去の成功に安住することなく、常に自己を更新し続ける必要があることを意味しています。
生成AIを低価格デザインのビジネスにしている人の意見
市場の現実:
私が提供するサービスには、明確な需要が存在します。現代の急速に変化するビジネス環境では、高速で低コストなデザインが求められるケースが増えています。私はそのニーズに応えるためのサービスを提供しているに過ぎません。品質の定義:
「低品質」というレッテルは、一概には受け入れがたいです。私が提供するデザインが、あるクライアントのニーズやビジョンにぴったりと合致する場合、それは「低品質」ではなく、「適切な品質」と言えるのではないでしょうか。技術の適正な利用:
生成AIを使用しているからといって、私のデザインが全て機械的で無魂であるとは思いません。私も自分のセンスや経験を活かし、生成AIをツールとして利用しています。業界の多様性:
デザイン業界には多様なニーズや価値観が存在すると思います。私のようなアプローチが市場に存在することで、業界全体がさらに豊かになるのではないでしょうか。
私はデザイナーの価値観やデザインに対する情熱を尊重しています。しかし、時代や市場の変化に柔軟に対応することも、デザイナーとしての役割だと考えています。私のアプローチは、その一つの方法であり、業界全体の多様性を保つ要素としての存在価値があると信じています。
イラレを30年使っているデザイナーの意見
各時代に合わせてデザインの手法やアプローチは変わってきましたが、技術の進化がこれほど業界に影響を与えるとは、正直驚いています。
技術との関わり:
今のデザイン業界が直面している「生成AI」のような技術との関わりは、私のキャリアの初め頃には想像もしていませんでした。新しい技術が登場することは、それ自体が悪いことではありません。しかし、それをどのように業界やデザインの価値に取り入れるかが問題です。デザインの品質と意味:
「低品質」と一蹴されるようなデザインが増えることには、心から懸念しています。デザインは、単なる形や色ではなく、背後にある思いやストーリー、ブランドの価値を伝えるものです。その深みや繊細さが、単なる量産的なアプローチで失われるのは痛いです。価値の希釈:
低コスト、高速でのデザイン提供が主流となると、デザインそのものの価値が希釈されてしまうのではないかと感じています。これは、デザイン業界全体の価値や存在意義に影響を与えるでしょう。新しい時代の対応:
とはいえ、技術の進化や市場のニーズは止めることはできません。私たちベテランデザイナーも、これらの変化に柔軟に対応し、新しい価値を提供していく必要があります。
私はまだデザインに対する「信念」や「情熱」が業界の中心であることを強く信じています。新しい技術やアプローチを取り入れつつ、その本質を忘れずに、次世代のデザイナーたちにも伝えていきたいと思っています。
専門家の意見
生成AIの影響は、すでに多くの分野で顕著に現れており、これは止めることができません。しかし、その中で考えるべきは、AIの適切な活用方法と、デザインの真髄に関する考え方です。
ツールとしてのAI:
まず、私はAIをツールの一つとして捉えています。鉛筆やペン、コンピュータソフトウェアと同じように、AIもデザイナーの手を助けるツールです。しかし、それがデザイナーのクリエイティブな思考やセンスを置き換えることはありません。クオリティの多様性:
確かに、生成AIによる「低品質」とされるデザインが増えていますが、それは市場の一部のニーズに応えるものです。高品質なデザインとは、単に技術的な完成度だけを指すのではなく、背後にあるストーリーや感情、コンセプトの深さを指すものと考えています。デザインの価値:
デザインの価値は、時代や技術の変化によって変わるものではありません。しかし、その価値を理解し、実践するデザイナーが市場にどれだけ存在するかは、業界全体の問題となっています。新技術の適切な採用:
技術は進化し続けますが、それをどのように採用するか、そしてそれをどのように価値に変えるかは、各デザイナーやクリエイティブエージェンシーの判断に委ねられています。
生成AIはデザイン業界に革命をもたらす可能性がありますが、その中でデザインの真髄や価値を守り続けることが、私たちの責任であると感じています。また、新しい技術を追求する一方で、伝統的なデザインの価値を失わないように、適切なバランスをとることが重要だと考えています。
デザイン学校の講師の意見
私が教育の場で常に強調しているのは、技術やツールは変わっても、デザインの核心や真髄は変わらないということです。技術は進化し続けますが、それに追従するだけの教育は、学生たちにとって真の価値を持たないと考えています。
技術の過度な信頼:
現代の学生たちは、技術やツールに非常にアクセスしやすい環境で育っています。しかし、その一方で、多くの学生が新しい技術やツールに過度に依存してしまい、デザインの基本や原理を忘れてしまう傾向にあります。デザインの基本:
デザインの基本は、形、色、構成、コンセプトなど、変わることのない要素に基づいています。これらの基本を理解し、深く学ぶことが、どんな時代でも変わらぬデザイナーとしてのスキルを身につける鍵だと信じています。技術との関係性:
生成AIやその他の新技術は、デザインのプロセスを助けるものとして非常に有用です。しかし、デザイナー自身の感性や独自の視点、そしてその背後にある深い思考や哲学が、真のデザインの価値を生み出すと考えています。未来の教育:
美大やデザイン学校での教育は、常に変化と進化の中にあります。しかし、新しい技術やツールを教えることと同時に、デザインの基本や真髄をしっかりと伝えることが、私の使命と考えています。
技術の進化や市場の変化はデザイン業界に大きな影響を与えていますが、教育の場においては、デザインの真髄や基本を忘れずに、新しい技術やアプローチをバランスよく取り入れることが、最も重要だと考えています。
デザイン学校の学生の意見
新技術への興奮:
生成AIはデザインプロセスを劇的に変える可能性があり、それを学び取り入れることは楽しみの一つです。不安の声:
一方で、生成AIが業界の中でどれだけの影響を持つのか、そしてそれが私たちの将来にどのような影響を及ぼすのかについては、正直なところ不安です。特に、生成AIがデザインの品質や価値を低下させる可能性があるとの声を聞くと、将来のキャリアに対する不安を感じます。真の価値を求めて:
学校で学んでいる中で、私はデザインの真の価値や意味を深く理解しようとしています。ツールや技術は変わっても、デザインの基本やその背後にある思考は変わらないと信じています。市場の現実:
市場の現実として、低コストで高速なデザインが求められることも確かです。この現実を無視することはできませんが、その中でどのようにして自分のデザインの価値を高めていくのか、日々考えています。
更新日:2023年10月12日(木)/公開日:2023年10月12日(木)
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