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キンモクセイ

夕暮れ時、沈む夕日で明るく色付いた西の空

それは学校の帰り道、習い事の帰宅途中、
恋人と並んで歩いたいつかの日

無数の記憶の中で付箋を付けるように決まった思い出に漂う香りは
いつまでも変わることなく染み付いたまま

雨上がり、夕飯の匂いを運ぶ乾いた風、窓から溢れるオレンジの灯り

景色に馴染んだ季節の匂いが優しい時間を蘇らせた
胸一杯に吸い込んだ果実のような甘い香りは
新たにこの瞬間を特別な1ページに染め上げていく

街に漂う香りは行き交う車に巻き上げられて
風に誘われた懐かしさと共に人々に記憶の断片を覗かせる

あの頃の戸惑いに揺れた心は生まれたての感情を携えて
初めて触れる喜びには柑橘の酸味が溶けていた
その時の味わいが小さな花と共にいつかの記憶に滲んでいる

わずかに埃っぽい空気とまったりとした爽やかさは
秋の夜の匂いと混ざり合って魅惑の長い夜を彩っていく



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