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実現不可能といわれた波佐見焼「eni」が生まれるまで

末広がりの八角形に円満のメッセージをこめた、円を配した縁起のよい波佐見焼「eni」。
うつわ好きな方やお祝いのギフトに選ばれている「eni」は長崎県川棚町にある「菊祥陶器」でつくられています。
CRAFT STORE編集部はeniの制作背景について伺うべく長崎の菊祥陶器へ訪問し、職人・木下さんにお話を伺ってきました。


穏やかな海を眺めて長崎県川棚町へ

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eniをつくるのは長崎県川棚町にある「菊祥陶器」です。50年以上前の骨組みが残る工場を整備して、再利用された建物で日々焼き物をつくられています。

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積み上げられた「サンテナ」(焼き物を入れたり、持ち運んだり緑色の箱)が壮観です。

100個を超える試作と数%単位の試行錯誤

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マットな白いうつわ「eni」の完成には、一筋縄ではいかない難しさがありました。eniをつくる菊祥陶器の木下さんは、とても研究熱心な方。

木下さんはeniを完成させるために土、釉薬、焼成(加熱の仕方)の選択やバランスを何度も考えて試したそうです。

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波佐見焼は同じ土を使っていても、焼き方が異なれば色合いが違ってきます。
木下さんは、eniを完成するまでに100を超えるほどのサンプルをつくり、1年もの製作期間を費やしました。

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色合いの表現や強度に関わる釉薬(ゆうやく)の調合は、eniを作る上で特に大変だったそうです。
「小数点一桁までデータをとった」
重量に対して何%の釉薬にするかデータを出しながら何度も試したそう。
数%でも変われば強度や色合いが変わってしまうので、緻密な計算をしなければならなかったと木下さんは話します。

実現不可と言われた色あい

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焼き物に火を入れるやり方に還元焼成(かんげんしょうせい)と、酸化焼成(さんかしょうせい)というものがあります。
酸素がない窒息状態で焼かれる、磁器の真っ白なものは還元焼成。十分な酸素がある状態で焼かれる、陶器などの温かみのあるやわらかい雰囲気があるものは酸化焼成です。

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お皿を酸化焼成で焼いた場合は基本的にアイボリー色になるので、磁気のような「白」は出せないそうです。
「eni(エニ)」は酸化焼成で温かみを持たせつつ、磁器のような「白」を出さないといけませんでした。

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「酸化焼成では白くならない」
行政機関や釉薬屋さんに相談しても答えは同じ。「白くはならない」という返事でした。
そのため木下さんも諦めかけたこともあったそうです。

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「できないと言われると燃えるタイプなんです。」
木下さんは焼き物の無限の可能性を信じ、持ち前のチャレンジ精神で無理だと言われていた酸化焼成で「白」のお皿を実現しました。

木下さんの努力から生まれた、白マットの「eni」

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「eniの製作は楽しかった」
そう笑顔で語ってくれる木下さんの姿。世に生み出すまでにかかった約1年の大変さやこだわり、熱意など全てが、木下さんのこの言葉から伝わってきたように感じます。

eniをご購入いただく方のなかには「引出物に使いたい」という方や、「軽くて丈夫で使いやすい。」と色違いで購入される方も。

たくさんの方に愛用いただき、eniシリーズはCRAFT STOREの人気No.1アイテムとなりました。

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わたしたちは社員全員で感謝の気持ちを伝えるべく、工房にお伺いしお掃除をお手伝い。そして感謝状を手渡しみんなで一緒に川棚名物「レモンステーキ」をいただきました。

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いつもあたたかく見守ってくれている木下さんと、私たちのものづくりはこれからも続いていきます。


▼木下さんがつくるeniはこちら


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