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音楽を主役とする場で、クラフトコーラはどう佇んだか。結いのおと2021 出店後記

10/9 [土] - 10 [日]、茨城県・結城市の市街地で開催された、まちなか音楽祭『結いのおと』に、クラフトコーラアワーが出店しました。

クラフトコーラのみを取り揃えたドリンクブース。そんなお店が、錚々たるアーティストやフードが揃うメジャーな音楽フェスに並ぶ。クラフトコーラの歴史の、ちいさな一歩になれたじゃんないかとさえ思うこの機会に、クラフトコーラはどう佇めたのか。

余韻に浸るように、そのときみた光景を振り返ります。

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1.『結いのおと』とは

茨城県結城市の地域資源をフル活用した唯一無二の街なか音楽祭。

それが、結いのおとです。

結城市は、いわば城下町。結城を代表する寺院や酒蔵、着物問屋の建物と空間、昭和初期に別荘として建てられた日本料理店に、フランスの片田舎に迷い込んだかのようなカフェ...。それらが、日本家屋や石畳が続く街路に点在する、独特の空間を持つ町なのです。

地域資源をライブ会場として活用し、情緒あふれる雰囲気の中で素敵なミュージシャン達が音を鳴らし、声を響かせる。

そんなシチュエーションだけでも、唯一無二で、至福なイベントであることが伝わるでしょうか。

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2.コンセプトは、”地域資源をフル活用する”クラフトコーラ

そのような文脈を持つ音楽フェスですから。「クラフト」という表現性を持ち、それぞれに個性の切り口を持つクラフトコーラ。その中でも、この場に並ぶにあたって、”然るべき”銘柄があるはず。

出店のお誘いをもらったとき、そんなことをすぐ思いました。そして、やはりというべきか、瞬間的にラインナップが浮かびました。

コンセプトは、”地域資源をフル活用する” クラフトコーラ。

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この、”フル活用する” というのが肝でした。

ただ地域に由来する素材を使っているだけではない。クラフト(民藝/工藝)にも通ずるような、背景 / ルーツといったバックボーンがあるか、伝えたい・表現したいことがあり、それがモノに宿っているか。

そこまでして初めて、”フル活用している” といえる。

そういった想いで選んだのは、こちらの4銘柄です。

① みちコーラ
「唐津」の固有種であり、幻の柑橘といわれる「ゲンコウ」をはじめ、「嬉野」のお茶や「武雄」のレモングラス、そして「玄界灘」の塩など。佐賀の魅力を詰め込んだクラフトコーラ。

名前の由来は、佐賀を通るシュガーロード。古くは長崎の出島で荷揚げされた砂糖を江戸へと運ぶ道として重用された道であり、大手製菓企業の創業者を幾人も輩出しているなんて歴史もある。そんな”みち”から新たに登場する、現代の「甘いもの」として。また、あらゆる人にしあわせが”みち”るように。そんな想いから名付けられています。地域に密した地元の飲料メーカー「小松飲料」に製造をお願いしているなど、佐賀に多くのルーツを持つ。
ぎふコーラ
1991年岐阜県生まれの3人が手掛ける。岐阜県・揖斐川町で採れる薬草4種(よもぎ、どくだみ、かきどおし、ヤブニッケイ)を、スパイス・柑橘類・きび砂糖で煮詰めたクラフトコーラ。

岐阜と滋賀をまたぐ「伊吹山」には、かつて織田信長氏が薬草園を開墾した歴史があり、それゆえに伊吹山麓の旧春日村を中心に、薬草文化が日常に根付いたという。今や縮小傾向になっている薬草文化、そんな伝統を未来に受け継ぐためにつくられたのが、このぎふコーラです。
高知クラフトコーラ "sawachina"
高知県産の柑橘や和ハーブをはじめ8つの食材を贅沢に取り入れた、高知色たっぷりの味わい・香りが楽しめるクラフトコーラ。"土佐の酢みかん"と称される香酸柑橘が季節で変わる、”一期一会さ”も魅力の1つ。

名前の由来は、高知の食文化「皿鉢(さわち)」から。甘味や魚介など、あらゆる食材をひとつの大皿に豪快に盛り付ける。そんな文化的作法を、素材選びや使い方に反映させ、名前にも宿している。クリエイティブまわりも、高知出身・在住の編集者とデザイナーのユニット「chuu」が担当。
屋久島1000年コーラ
永い刻を経て生成された屋久島の超軟水をはじめ、屋久島に自生している精油成分とミネラルが豊富な屋久島ウコン、種子島の黒糖と粗糖を使用。屋久島産まわりの恵みをたっぷりつかったクラフトコーラです。

名前の「1000年」は、屋久杉の樹齢に関係する。1000年を超えないと、厳密には「屋久杉」と呼ばれない(999年までは「小杉」)という慣習から、”永く愛され続けるように”という想いが込められている。

3.当日の様子

そんな4銘柄を携えて、いざ「結いのおとへ」。

当日は「ドリンク提供エリア」と「物販エリア」を展開。ひとつひとつ吟味した什器をフル活用し、ブースをつくりました。

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1日目は、パラパラ小雨が降ったり、寒かったり。お客さんは会場全体で落ち着き目の印象でした。2日目は天候もよく、アーティストのラインナップも影響したのか、会場全体にお客さんが溢れ、クラフトコーラもよく売れました。

今回のクラフトコーラアワーは、普段大切にしている”あますことなく、語り伝えるスタイル”を、同じ温度感で表現。来てくれたお客さん一人ひとりに、クラフトコーラとは何か、各銘柄のバックボーンや魅力などを伝え、オーダーしてもらいました。

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フェス出店向きのスタイルではないかもしれないけど、結いのおとの空間が醸す落ち着いた雰囲気の中では、ある程度よく伝わった印象です。その分、クラフトコーラの世界を面白がってもらえることが多かったり、活動自体への興味をたくさん持ってもらえたり、SNSのフォローもしてもらえたり。

規模や人の流れがさらに大きくなると、スタイルの調整は必要そうだけど。振り返ってみても、クラフトコーラといい出逢いの場になったんじゃないかなと素直に思えました。

濃淡あれど甘さを持っていて、爽快感があって。スパイスや柑橘由来の嗜好性もあって、ノンアルコールで低カフェイン。あらゆるタイミングで重用でき、かつ物珍しさやちょっとした特別感のあるクラフトコーラは、音楽フェスにとても相性のいいドリンクだなという予感を実際に肌で感じれたことも、嬉しかったです。

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ほかの出店者さんたちも素敵なところばかりで。お互いのお店に行きあったりと交流を持てたり。そうでなくても、こちらから出て行って味わってしまう、そんなお店さんばかりでした。

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お客さんのSNS投稿の中でも、クラフトコーラアワーのドリンクと、ほかの出店者さんのフードを並べて楽しんでいる様子をみれたりして。そういうのをみて、自分らがフェスに馴染めているんだなということを実感しました。それに、様々な味わいや香りの個性を持ち、あらゆるフェスフードの相棒役に名乗り上げることができるクラフトコーラの本丸たち、その活躍しろを十二分に感じました。

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4.クラフトコーラの振舞いは、音楽と共鳴させよ

さて、そんな中でみえた、音楽フェスにおけるクラフトコーラの佇まい。

実は、今回のクラフトコーラアワー、1日目と2日目で、各銘柄の訴求方法をアレンジしたのです。

その理由は、1日目で注文を受ける銘柄が偏ったこと。

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ドリンクとして正面から説明したり、「今欲しい味わいはなんですか?」「フードと一緒に食べますか?」などとお客さんと会話すると、「柑橘感やスパイス感が強い」「飲みやすい」という情報が決め手になるケースが多かった。フェスという非日常の空間でテンションも高揚しているからか、パンチのあるものを特に求めているお客さんも多かったのでしょう。

また、ぱっと見の印象が決め手になる傾向も少なくありませんでした。

そのワケを察するに、やはりクラフトコーラは味が想像しにくいドリンクであること。これがひとつ大きく関係しているでしょう。

経験値として積んでもらえていることが珍しい、まだ新参者のジャンル。素材もたくさん入っていて、味わいや香りに関する説明があっても、どうしても想像がつきにくい。その歴史の浅さや浸透度、多様な素材で構成されている成り立ちからして、”想像しにくく、選びにくいドリンクである”。これは、クラフトコーラを表すひとつの実態であり、課題ともいえます。

こちらの説明を聞いて面白がってもらえている一方で、選ぶのは難しい。そんな様子がちらほら見受けられた1日目でした。

そこで、2日目は、ステージに登場するアーティストそれぞれの特性と、各クラフトコーラの特性を掛け合わせて、お勧めをしたのです。

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例えば。2日目のトップバッターを飾った「鎮座DOPENESS」さん。”変幻自在” ”天才ラッパー”と称されることが多い、その独特のスタイルや空気感。中毒性のあるパフォーマンス。そんなライブの後には、すっきり落ち着くようなドリンクで、心を整えるのはどうでしょう?

そんな意図で、甜菜糖の優しい甘さと、お茶やレモングラスによる品のある渋み、塩の爽快感を持つ「みちコーラ」をお勧めとし、POPにも書いて伝えてました。

あるいは、chelmicoの鈴木真海子さんも登場予定で。彼女の滲み出る華やかさに加え、ラジオをずっと聴いていたこともありクラフトコーラをどうか飲んでほしいと思ってしまったので(笑)。高知の酢みかん3種をがっつり使った柑橘感や苦みに加え、強いスパイス感、山椒や唐辛子の辛みまであり、その刺激と複雑性で心を奪う「Sawachina」をピックアップし、「まみこに飲んでほしい」という、こちらの願望を書いてみたり。

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そんな感じで、アーティストやステージと絡めたクラフトコーラのオーダー提案をしたのです。

ドリンクとしての正体を説明する情報ではなくとも、選ぶ理由になってくれるのではないか。フェスの文脈も感じながら選べるから、楽しんでもらえるのではないか。そんな予感とともに、1日を通して実験してみました。

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結果、選ばれる銘柄のバランスがよくなりました。

もちろん、4種類ともまったく同じ杯数になったわけではないですが、選ぶ理由に多様性が出た上で結果としても現れたので、”あらゆる素敵な銘柄とのいい出逢いをつくりたい”クラフトコーラアワーにとっては、ひとついい変化を生むことができたかなと思います。

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ほかのジャンルでは見かける手法ですし、それ自体が新しいわけでは全くない。けれど、作り方や素材の自由さが起因して味わいや香りの違いが出やすい、キャラクター立ちがしやすいクラフトコーラというジャンルだからこそ、歴史が浅く味わいの経験値がまだ積まれていないクラフトコーラだからこそ、行うべき振る舞いなんだなと。

これは、今後ほかの音楽フェスでも活かせるスタイルですし、音楽じゃなくてほかのカテゴリでも、もちろんできる。改めて、”場の文脈に絡めてクラフトコーラを提案する”という、数年前からクラフトコーラに感じて、大切にし続けてきたスタンスの意義と必然性を感じました。

もっともっと、このスタンスを突き詰めようと思います。

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さまざまなクラフトコーラの可能性をみれた、結いのおとでのクラフトコーラアワー。

後日改めて本格的に告知しますが、このあと控えているアウトドアギアの大型展示販売フェス、音楽×クラフト市×アウトドアサウナの大型フェスへの出店でも、引き続きクラフトコーラの在り方を表現し、また新たなる可能性を見つけてきます。

クラフトコーラとのいい出逢いの場づくりを求めて。

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SPECIAL THANKS:
・結いのおと 運営事務局のみなさま
・Purveyorsのみなさま
・結城市のみなさま
・当日足を運んでくれたお客さま
・出店者やアーティストさんたち
・快く仕入れさせていただいた銘柄さん
・クラフトコーラアワーメイト


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