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童話「盲聾の星」第七話
第一話→童話『盲聾の星』第一話|ひとり 杏 (note.com)
4.
ただ、ひとつだけ、ラムダが予想していなかったことがあります。あまりにも星が増えてしまったものですから、遥か地上のお姫様は、どれがラムダなのかたまに見分けがつかなくなってしまうのです。またラムダの方も、仲間を増やすためにとやたらめったら動き回ったものですから、とうのむかしに眼が潰れてしまっておりました。ですから、目の見えないラムダの代わりに仲間の星たちがいつもお姫様を見守っており、彼に様子を教えてあげました。たとえば、「バルコニーに出てきたよ、今日は具合がいいみたいだ」というふうに。
空気の乾いた冷たい夜に、
「わたしのお星様はどこ」
と、かすれた若い女の声が聞こえるときは、いつだって仲間の星たちが答えます。
「ここだよう、この、一番小さくなってしまった星だよう」
すると、ラムダは夜空の奥で照れくさそうに一度瞬いてみせるのでした。
「そんなんじゃだめだい、もういっぺん、もういっぺん」
「もっと強く光るんだ」
仲間が励ますと、ラムダはキラ……ッキラ……ッと震えながら光ります。セリーヌ王女の灰色の唇から咳でなく笑みが出るようになるまで、星たちは夜通し輝き続けるのです。
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