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童話「盲聾の星」第四話

3.
さて、ラムダはときたま、脳天を殴りつけるような孤独に襲われるのでした。すると身を投げ出して、むやみやたらに動き回り、あちこちの星たちぶつかりました。それが星の増殖方法だとは、まだこれっぽちも知らずにおりました。ええ、彼には大切な守るべきお姫様がおります。けれど、わたしたちのうちの誰が、大切な人が遠くに一人いるとしても、自分は離れた空にたったひとりでは、気が触れずにいられるでしょうか。

しかし、あのセリーヌ王女だけが、遥か遠くの地上でかなしそうな表情を空に向けています。涙は地べたに落ちるだけで、空に昇りはしませんから、いくら泣いたってラムダが気づくことはありませんでした。肺が破れてもかまわない思いで、お姫様は空に訴えました。

「こんなに満天の星空でなくたって、3人家族の星しかなかった頃の方が、わたしは空が好きだった」

それでも胸が痛むばかりで、ラムダの行いが変わらないものですから、お姫様は夜ごと涙するほかありませんでした。ぽたりぽたりと地に落ちたお姫様の涙は、三晩もすれば世界で一番小さな池になりました。ちょうどお姫様が座りこんだくらいの広さの池です。すると、その池に空が映りこみました。

星空を映した池は、疲れ果ててうなだれるラムダの目に留まりました。
――はて、こんなにちっぽけな池がこの国にあったかな――
ラムダは、久方ぶりに動きを止めると、ぢっと池に見入りました。池中の夜空を見ているうちに、そのすぐそばで泣いているお姫様に気がつきました。

その様子を見つめているうちに、ラムダは、はっとあることに気がつきました。

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