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ヒップホップにおける公共

私は美学校のライター講座を受講していました。

講座そのものはもちろん、ほかの受講生の皆さんが書いた記事も刺激になりました。

音楽ZINE「MISTRUST」も同期だった津田結衣さんが手掛けたものです。

こちらはアーティストへのインタビューを中心に、先日Bandcamp Dailyの記事「Inside Tokyo’s Genreless Rave Underground」で紹介されたことも話題となったイベント「PURE2000」のレポート、Y2Kカルチャーについてのコラムなどを収録した刺激的な一冊です(現在はdisk unionで購入できます)。

哲学カルチャーマガジン「ニューQ」を手掛ける瀬尾浩二郎さんも同期の方です。

最新号の「ISSUE03 名付けようのない戦い号」は、これまで哲学とは無縁だった私も購入しました。何かを考え、誰かに話したくなるような意欲が掻き立てられる一冊です。「公共」が一つのテーマになっており、巻頭インタビュー「問いを立てるための公共入門講座」では「一見すると公共と関係なそうなものから公共を考える」というゲームを行っています。

ヒップホップにも公共の要素は多くあります。シカゴのラッパーのG Herboによるフリースタイルを機に2018年頃に流行した「Who Run It Challenge」のように、ヒップホップでは特定の曲がフリースタイルの定番ビートになることがあります。こういったラッパーたちが一つの次々とビートに乗っていく現象はビートの公共化と言えるでしょう。反対にラップの公共化の例としては、アトランタのラッパーのWaka Flocka Flameが2016年に発表したアカペラのラップ、「Wakapella」などが挙げられます。「Wakapella」は多くのビートメイカーを刺激し、インターネット上には膨大な「Wakapella」リミックスが溢れ返りました(MeLo-Xのリミックスが特に印象的でした)。また、こういった音楽制作の話題のほかにも、音楽で稼いだ収益を公共のために使う例も珍しくありません。先日亡くなったYoung Dolphも母校の高校への寄付などを行っていました。

そして、近年のヒップホップに欠かせなくなってきているサンプルパックも、プロデューサーやミュージシャンが自身のスキルをシェアして不特定多数の人に使ってもらう公共的なものです。音楽クリエイター支援サービスのSoundmainで始まった私の連載「ヒップホップとサンプルパック」では、そんなサンプルパックにまつわる話を書いていきます。第一回の「『サンプルパック』が生み出すクリエイティブとは?」ではサンプルパックを使用することの魅力や、その浸透までの経緯などについて書いています。ビートメイカーの方だけではなく、リスナーの方も是非。

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