働く人の健康、どうはかりますか
私は自治体職員として、学校や会社での健康とウエルビーイングを支援する部署で働いています。今回は私の職場をはじめ、デンマークの様々な企業や組織での活動の基本となる、健康の評価の仕方について少し書いてみたいと思います。
仕事のパフォーマンス評価
デンマークの職場では、最低年1回、MUS(上司との1対1の評価面談)があります。この面談は、単に仕事のパフォーマンスを評価するだけでなく、従業員のウェルビーイングをチェックする機能も兼ね備えています。デンマーク人は、子供の頃から口頭試験に慣れており、マルチプルチョイス形式の試験が苦手な傾向があります。このため、職場でも個々のパフォーマンスを評価する際に、対話形式の評価が重要視されています。
健康診断と健康調査
デンマークでは、いわゆる健康診断は行われていません。その代わり、2年に1回ウェルビーイング調査が行われます。デンマークの人々は、個人の生活習慣を職場が測定し、管理することに対して強い拒否反応を示すことが多いです。このため、健康に関する評価は、基本的に無記名で個人のプライバシーを尊重しながら行われることが重要とされています。国立労働環境研究センターではモデルとなる職場での心理的環境環境とウエルビーイングの調査票を公表しています。
この職場向け調査票には、87の質問が含まれています。質問は以下の7つの領域をカバーしています。
仕事の計画、配分、調整、および管理方法
要求
協力と協働
リーダーシップ
変化
ネガティブな行動や態度
職場におけるウエルビーイング
出典:Spørgeskemaet ’Psykisk arbejdsmiljø og trivsel på arbejdspladsen’ (nfa.dk)
調査票(英語):workplace-version-of-the-danish-psychosocial-work-environment-questionnaire.pdf (nfa.dk)
調査後、結果を職場内での対話と発展の基礎として使うことがとても大切といわれています。測定することにより皆で意識を高め、結果を公表し、問題点を深掘る話し合いを重ね、解決策を皆で考えていくことが一連の流れとして奨励されています。
現場ではなかなか理想の流れにならないことも、多々あります。
定性的な尺度と定量的な尺度
健康評価には、客観的な基準に基づいて判断するいわゆる定量的な尺度と、個人の経験に重きを置くいわゆる定性的な尺度があります。デンマークでは、主観的で定性的な尺度でものをはかることに慣れている文化があります。この文化では、働く人の主観的な感覚や経験を重視し、それに基づいてウェルビーイングを評価する傾向が強いと私は考えています。
測り方の違いで取り組みもかわる
私は、デンマークと日本では、主観と客観の重きの置きかたに違いがあると考えています。そして、デンマークと日本で取り組み方にも違いが出てくるのは、この何に重きを置いて測るかの違いからくることがあるとも考えています。
私たちの職場でも、主観重視の尺度が多いとはいえ、尺度の違いを理解し、適切な方法で健康とウェルビーイングを支援することが重要だと考えています。健康の評価方法についての違いを理解し、より良い支援を提供するために、これからも様々な取り組みを続けていきたいと思います。