北野唯我著『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』を読んで




本の情報


著者: 北野唯我
タイトル: このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法
発刊年: 2018年
著者のプロフィール: 兵庫県宝塚市出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。現在取締役として人事領域・戦略領域・広報クリエイティブ領域を統括。

概要


転職に関するあらゆる不安や葛藤に寄り添うたために、経営コンサルタントが転職のアドバイスをする物語形式を採用し、必要なのは『単なるうわべの「転職情報」ではなく、情報を見極める「思考の軸」』という"転職の思考法"を解説していく。

キーポイント


本書もまた、『自分』という商品を市場に売り込む、"マーケットバリュー(=市場価値)"の概念を起点としている。
そのマーケットバリューは①技術資産、②人的資産、③業界の生産性の三つで決まる。
ここで著者はスキル思考からポジション思考へのシフトを安易に提唱するではなく、年代毎や無形資産の有無でのキャリア選びのポイントを分けている。

キャリアは20代は専門性、30代は経験、40代は人脈。
技術資産も人脈もない場合は、「生産性が高い産業」か、「エスカレーターが上を向いている産業」を選ぶ

これは、代替可能性と雇用数が低い①ニッチ状態から→雇用数が増え(②スター)→代替可能性が高まり(③ルーティンワーク)→テクノロジーに置換されて④消滅するという仕事のライフサイクルを念頭に置くとわかりやすい。
即ち、伸びている業界に身を置くだけで必然的にマーケットバリューは高まる。
業界の非効率を覆すロジックはダイヤモンドだ。

会社の選び方は
1.マーケットバリュー
2.働きやすさ
3.活躍の可能性
を挙げ、活躍の可能性については、中途を活かすカルチャーはあるか?自分の職種が、会社の強みと一致しているか?が指標となる。

本書の後半のキーポイントに、
人間には、「何をするか」に重きをおくto do型の人間と、
「どんな人でありたいか、どんな状態でありたいか」を重視するbeing型の人間がいて、
99%は後者
という状態重視の観点がある。

being型は実質的に精神的な逃げ場がないので活躍の環境状態が要。
求められるパフォーマンスとマーケットバリュー、環境の緊張と緩和といったバランスが釣り合っていることが必要条件になる。
仮でもいいので苦にならないことで自分へのラベリングを行い、「そのラベルがより強固になるか」という判断軸で仕事を選んでいくことが基本方針となる。

個人的な感想


就活の極初期に読んだこともあり、効果面のパフォーマンスは頗る良かった。
私は読了時点で、安易に二つもリクルーターに登録していた。
『なぜ、企業は高いフィーを払ってまでエージェントを使うのか?
なぜ、エージェントはその会社を強く薦めるのか?』
よくよく考えれば、この部分に腹落ちしない部分が出てきたのでまず面談を二週間伸ばした。

もう一つ良かったのは、being型の話。
「心からやりたいこと」がなくても悲観する必要はまったくない 
『ある程度やりたいこと』は必ず見つかるからだ。そして、ほとんどの人が該当するbeing型の人間は、それでいいんだ。


私の就活関連本の読了1冊目は某有名な自己理解のやさしい専門書だったのだが、実用書としてあまり効果を発揮しなかった。
上記の一言で私は自己理解用の数百の質問とフローチャートを潔く放り投げることにした。
これは時間の節約にもなったし、おかげであと10冊は就活本も読めた。
そして、いまだに思う。
仮にこれだけ本を読む余裕がなかった場合でも、本書の筋立てのわかりやすさとコンテンツの網羅性だけで転職に関する結構な部分がフォローできる。
他に読んだ本も一冊一冊が別の意味でプラスにはなったけれども、本書と『科学的な適職』(鈴木祐著)はパフォーマンスの高さの面でも抜きん出ていた。
そして読書が苦手な人でも読めるくらいに表現もわかりやすいので、個人的に就活入門書としてファーストチョイスに選出したい。

関連リンク

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ダイヤモンド社

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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