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ティーンエイジャー向けのお仕事本『ニッポンの刑事たち』(小川泰平著)を読んで

今回は行きつけの図書館の司書さんのオススメで手に取ってみました。

本の情報


著者: 小川泰平
タイトル: ニッポンの刑事
発刊年: 2016年
著者について: 元神奈川県警刑事、犯罪ジャーナリスト。1961年愛媛県生まれ。1980年に神奈川県警警察官を拝命。所轄の窃盗係の刑事を振り出しに、主に被疑者の取り調べを担当。警察庁刑事局刑事企画課時代には、韓国警察庁との合同捜査に参加した。2009年に職を退いた後は、執筆活動やワイドショーでの事件解説を行う。

概要


元神奈川県警の捜査第三課に身を置いた著者が、小説やドラマやアニメなどのメディアで植え付けられる刑事へのイメージを正した上で、「ひとりでも多くに刑事という仕事に興味を持ってもらうため」にリアルな仕事模様を解説。

本書の魅力


表現の難易度を「小学校高学年から」読める平易なレベルにとどめ、本書を読んだ上で再びメディアに触れた場合に新たな視点で面白く観れるように配慮されている。

尾行、張り込み、取り調べの実用テクニックにはじまり、殺人、薬物、窃盗、サイバー犯罪での捜査アプローチなど、各セクションでの仕事の描写が鮮やか。

例えば、粘り強さと協調性がかなり重要な仕事であること、現場の刑事がポケットに手を突っ込んでいるのは指紋をつけないためであること、現在は尾行ひとつするにもお金がかかる時代であること、マジックミラー越しに隣の部屋の声は聞こえないなど、フィクションが招く誤解を解いた上で、求められる素質を説明している。

個人的な感想


フィクションと現実の現場の相違の例に持ち出されるキャラクターや薬物中毒の有名人は、平成人が読めば容易にわかる反面で、令和人が読んでもピンとこないかもしれないネタもある。その点は著者がフィクションを楽しんで観ているのもよく伝わってくる。

神奈川県警といえば不祥事のイメージが強いが、本書の趣旨と付合しないためか記載がかなりマイルド。裏表紙に「汚職」の叩き文句があっても、扱われるのは薬物乱用事件くらい。  

ネットの普及により犯罪が国際化してきた現状から、今後警察は警察官に求める素質が変化し、組織外のテクノロジー系のスペシャリストに頼る機会が益々増えることが予想される。こうした専門性スキルは今後どの業界でも多かれ少なかれニーズが高まるだろう。

刑事の仕事がどれだけ「地道」で「足で稼ぐ」仕事なのかをイメージしやすいように200ページほどで書かれているので、刑事を志すティーンエイジャーにオススメできる本である。

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