おうち英語に、おうち第二外国語...?
早期英語教育が過熱している。インターナショナル・スクールが乱立し、YouTubeなどで英語の歌を聞かせたりして家庭生活に自然に英語を取り入れる、おうち英語をしている家庭も多い。かくいう我が家も、0歳からおうち英語に取り組んでいる。そして、少数ながら熱心な家庭では、おうち中国語やフランス語など、第二言語も家庭で教えようという動きもあるようだ。
あくまで私の意見であるが、将来的にその言語を使う機会(家族が海外ルーツである、駐在の予定がある等)がある場合を除き、おうち●●語は難しいとは思っている。
主な理由として、言語というのは使う機会がないと忘れてしまいがちで、特に英語以外の言語は、使う機会の少なさから中途半端になりやすいからである。この記事ではその詳しい説明と、もし取り組むのであれば、気をつけたいポイントについて述べる。
幼児期に身につけた言語は、使う機会がないと忘れる
以下は、帰国子女の知人3人の話である。
3歳〜5歳まで、父親の仕事の関係でアメリカにいて、その頃はペラペラとネイティブ並みに英語をしゃべっていた。その後、日本に帰国して、英語に触れないまま過ごした。12歳で、アメリカに旅行に行く機会があったが、その時には全く話せなくなっていた。ただし、中学に入って英語を学校の授業で受けたが、その時の再習得は人よりも早く、発音はネイティブ並みとまではいかないが、仕事で使えるレベルには難なく仕上がった。(Aさん 40代男性)
4歳からイギリスで過ごし、小学校に上がる前に帰国した。当時は英語は話せたが、帰国するとAさんのように忘れてしまった。3歳上に兄がおり、こちらは英語が残った。他の帰国子女の話を総合すると、文字を覚える前に帰国すると忘れやすいらしい。その後の再習得は、Aさん同様早かった。(Bさん 40代男性)
4歳〜6歳まで、アメリカで過ごした。2歳下に妹がおり、帰国後もしばらく英語で話していた。しかし、妹が日本語がたどたどしいことで、幼稚園でいじめられるようになり、家で英語が一切禁止になった。その後、英語を忘れ、むしろ他の日本人同様、英語に苦手意識すら感じるようになった。しかし、リーディングに比べて、リスニングのテストはあまり苦労しなかった。(Cさん 30代男性)
上記の話で、全員共通しているのが、両親が日本人で、就学前に現地で過ごして英語を習得していたが、小学校に上がる前に帰国して、中学上がる前に英語を忘れたというケースである。子どもは言葉を覚えるのがとても早いが、忘れるスピードも同様に早いのである。上記3人と外国人が同席した場にいたことがあるが、AさんとBさんは日本人にしては流暢(コミュニケーションは問題なく取れているが、日本人独特の平坦なアクセントが抜けない)、Cさんは日常会話すら危ういレベルであった。
日本でも比較的触れることの多い英語すら、現地でネイティブ並みに話せていた時期があっても、継続して触れていないと忘れてしまうという事実は、肝に銘じた方がいい。
第二言語はモチベーションが保ちづらい
英語は大学受験、高校受験で必須の科目である。理系選択をしようが、大抵の大学の試験科目にも指定されているので、英語はイヤでも触れなければならない存在である。
また、英語は事実上の世界の共通語になっている。これは、イギリスが世界各地(アメリカ、インド、南アフリカ等)に植民地をもったことや、比較的文法がシンプルな言語だから話しやすいというのもある。
残念ながら、英語は科学技術の世界でも共通言語になってもいる。日本の大学院に進学すると、英語で論文を読んで海外の研究者に英語で発表しなさい、となるのはもはや当たり前のことである。
南アメリカではスペイン語が、アフリカではフランス語が、かつての植民地支配の関係で話されているが、やはり英語の世界共通言語性というのは、群を抜いていると言える。世界の貿易や流通でも使われるのは基本的に英語である。
つまり、英語は何かしらの用事で使う機会がある一方、他の言語は、その言語が話されている国と関わる用事がなければ、使う機会がほぼない。語学の習得と維持はそれなりに大変なことである分、モチベーションが必要だが、そのモチベーションが保ちづらいのである。私が、おうち第二外国語をおすすめしない最大の理由がこれである。
それでも、おうち第二外国語に取り組みたいのであれば
冒頭で書いた通り、我が家では第二言語の教育を行わない。それでも様々な理由から、子どもをトリリンガル、クアトロリンガルにしたい親御さんに送るアドバイスは以下の2つだ。
①モチベーションの維持
なぜ、その言語を使えるようになりたいのか、というモチベーションを保つ努力を優先する。
オペラが好きでイタリア語を習う、K-popが好きで韓国語を習う、逆に日本のアニメが好きで日本語を習う外国人など、音楽や芸能関係が好きで第二外国語を習うケースは多い。好きなものが先にあって、好きなものがある国のことを知りたいから、その国の言葉を習得するのである。
例えば、おうち中国語をするのであれば、中国語の歌に触れたり、漫画の「三国志」を手に取れるようにするなどの工夫をする。フランス語なら、「ベルサイユの薔薇」などでもいいだろう(古いけど)。
スペイン語なら、スペイン料理やメキシコ料理を味わうのもよい。つまりは、親のあなた自身もその国の文化を、理解し、好きになる努力が必要だ。
②耳が残ればいい、と開き直る
冒頭で3人の英語を忘れた帰国子女の話をおさらいする。彼らは全員英語を忘れてしまったが、英語に苦手意識のあるCさんですら、「英語を聞き取る耳」だけは残ったらしい。子どもの頃に英語を習っていたけど、忘れてしまった人の話でも、「リスニングだけはいい」という話はよくあるのである。
ちなみに、我が家でも1日1時間以上は英語を流している。かれこれ1年以上やっており、英単語の発語も見られるようになってきた。
しかし、もしかしたら、いつか「英語の歌やアニメは嫌だ」と言う日がくることもあるかもしれない、とは思っている。そうなれば、英語は覚えていても、あっという間に忘れるだろう。しかし、学年が上がり、英語に向き合わなければならない時がきて、「あぁ、なんか英語のリスニングはそんな苦労しないなぁ」そう思ってくれれば十分という心持ちでやっているのである。
家庭で第二外国語に取り組む場合も、あまりコストをかけず、「耳だけが残ればいい」という気持ちで取り組んではいかがだろうか?たまに、気晴らしのつもりで第二外国語の音楽をかける。あるいは、トイレなど、家の一定の場所を絶えずエンドレス・リピートで第二外国語の音声をかけ流しておくのである。
人間が音声から自然に言語を習得する仕組みは、まだわかっていないことが多い(おそらく個人差があり、同じ方法をとってもできない人もいる。)が、家の中に様々な言語をかけ流していただけで9ヶ国語を習得したという人もいるようだ。
以下の動画に、その体験談があるので、興味を持った人は、かけ流しをマネしてみるのもいいかもしれない。
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